最近耳にするようになったエシカルという言葉。
エシカルってなんだろう?そんなふうに感じている方も多いはず。
エシカルは「私によくて地球環境にもいい」と人と地球をつなげるパイプ役のような存在です。
本記事では、エシカルってそもそも何?という方から、エシカルな生活を実践したい方まですべての方に読んでいただける内容となっています。
読み進めるためのポイントは3つ
- エシカルとは何か
- エシカルとSDGsの関係性
- エシカルを日常生活に簡単に取り入れる方法
ではさっそくエシカルとは何かを解説してみましょう!

目次
エシカルの意味

エシカルは「倫理的な」「道徳的上の」という意味の形容詞です。
倫理的、こう聞くとちょっと堅苦しいイメージがありますが、物理的ではなく心理的な部分が大きいということです。
わかりやすく説明すると「人間の良心に従って」という意味合いを持ち、法律上でこうしなければならないというものではありません。
ではエシカルという言葉は具体的に人間の良心に従って何に配慮するときに使われるのでしょうか。
すべてに配慮した考え方
「私にとっていいこと、地球の未来にとっていいこと」
その両方をつなげるパイプのような存在がエシカルなのです。
言い換えれば、無償の愛の循環です。
エシカルの心は、人、動物、環境、食べ物などすべてに配慮した考えに基づいています。
日本でもエシカルに沿った考え方が昔から根付いています。
- 次使う人のために先回りして行動する「おもてなし」
- 数値化できない事柄に対して感謝の意を述べる「おかげさま」
- かけがえのない資源に対する尊敬の気持ちを言葉にする「もったいない」
はまさにエシカルの心そのものを表しているのです。
つまり、エシカルは人、環境、未来にやさしい生活を送れるようにどうすればいいのかを検討し、実践していく考え方と言えるでしょう。
エコとエシカルはどう違う?
エシカルがどのような考え方かなんとなくわかったものの、「エコとどう違うの?」という疑問を持つ方もいると思います。
確かにエシカルとエコは混同されやすい言葉ではありますが、似ているように見えて根本的な部分が少し違います。
エコ:環境にやさしい
エシカル:人、環境、未来にやさしい
エコは省エネ家電やハイブリッドカーは自然環境を保護しながら無理のない生活をもとめる生活スタイルです。
環境にやさしい製品が広まるにつれ、やがて社会は消費者がどのような価値観で物事を選ぶかに焦点が当てられるようになりました。
人間の持つやさしさで世界を包み込む。
それがエシカルです。
エシカルのはじまりはイギリス
エシカルの概念が誕生したのはイギリス、1989年に創刊された「ethical consumer」がきっかけとされています。
日本では2009年ごろにエシカルという言葉が徐々に広まりはじめ、今や世界中でエシカルに沿った行動が多種多様な社会問題解決の糸口になると言われています。
ではエシカルがなぜ必要なのかを紐解いていきましょう。
なぜエシカルが求められているの?
エシカルが求められる理由は、「経済」「社会」「環境」など直接的に私たちをとりまく世界に深くかかわってくるからです。
ファッション業界に焦点を当ててエシカルの重要性を考えてみましょう。
「安い・流行・おしゃれ」三大要素のファストファッション到来

エシカルを考えるうえでキーワードとなるのが「ファストファッション」です。
日本では2008年ごろからファストファッションが流行りだし、
- 安い
- 流行最先端
- おしゃれ
の三大要素が若者から歓迎されていました。
その一方、
- ほつれやすい
- 品質が安定していない
- 生地に丈夫さがない
などの理由からワンシーズンで廃棄される服も少なくなく、資源の無駄遣いに対する批判の声もありました。
ファストファッションの闇を浮き彫りにした「ラナ・プラザの悲劇」

そんな最中、2013年4月にバングラデシュ首都ダッカ近郊の縫製工場が入った複合ビル・ラナ・プラザが突如崩落し、1,138名の命が奪われ負傷者2,500名というファッション業界前代未聞の悲惨な事故が起きました。
実は事故当時、亀裂の入った老朽化したビルで崩落の危険性があると警察から操業中止の警告を受けていたにもかかわらず、利益を優先したオーナーによって労働者は強制的に出勤させられていました。(※1)
さらには労働者たちが、到底人間らしい生活を送れないような低賃金で雇われていたことも発覚。
劣悪な環境と労働条件いうファッション業界の闇の部分がこうして浮き彫りとなったのです。
エシカルの先駆をきる「ファッションレボリューション」
ラナ・プラザの悲劇をきっかけにファッション業界は一新、世界中でファッションレボリューションという運動が始まりました。
ファッションレボリューションは、世界90カ国以上が参加する大ムーブメントとなり、その主な内容は、
- ファッション業界のお金の動き
- 誰がどのように作っているか
- 消費者はどんな服を選ぶべきか
いわゆるトレーサビリティを明確にしようという運動です。
製品の生産(原材料の調達から)から廃棄にいたるまですべてを記録・管理することで追跡できるようにすること。安全性や品質を向上させるために食品や電化製品、医薬品までさまざまな業界で導入が進んでいる。
トレーサビリティという言葉はエシカルに基づいた生活を実践するうえで知っておきたいキーワードなのでぜひ覚えておきましょう。
どこで生まれてどこからやってきたのか。ストーリーを愛することがエシカル
物事のストーリーを知り、愛でることがエシカルです。
私たちの生活に欠かせない製品はすべてにおいてストーリーが存在します。
紙切れ一枚だってそう。どこの国の木からできたのか、からストーリーは始まります。
ラナプラザの悲劇をきっかけにしたファッションレボリューションはこうしたエシカルな感情にはたらきかける動きなのです。
目の前にあるひとつの製品がどこの国で生まれて、誰がどのように作って私たちのもとにやってきたのかを知り、それが特別だと感じる感情そのものがエシカルです。
こうして目の前にあるものを通して生産者を想像するエシカルの考え方は、近年よく耳にするSDGsとも深いかかわりを持っているのです。
では次に、エシカルとSDGsの関係についてお話しましょう。
SDGsとも関係がある
エシカルとSDGsはとても深い関係にあります。
今、私たちがくらす世界はさまざまな社会問題をかかえており、エシカルは解決する力を持っています。
SDGsとは?
SDGsは大きく環境問題、社会問題、経済問題の3つのカテゴリーにわけられ、17の目標と169のターゲットを「いつまでに、何を、だれが、どう取り組むか」を明確にあらわしたものです。
SDGsすべての目標の根底にあるのは「だれひとり取り残さない」という力強い決意です。
SDGsの特徴として、法律や規則のように「こうでなければならない!絶対に守らなければならない!」という強制的なものはなく、国、行政、地域、個人が主体的に取り組むことが目標達成へのポイントです。
この点から、個人の良心に従った行動が求められるエシカルの考え方は、目標達成に大きな影響力をもたらします。
SDGs17の目標の中でもエシカルの価値観が特に顕著に現れるのが目標12「つくる責任つかう責任」です。
特に目標12「つくる責任つかう責任」と関係

生産者も消費者も、すべての人が地球環境と健康を守れるように責任ある行動をとろう、というのが目標12「つくる責任つかう責任」です。
エシカルの考え方は、持続可能な生産と消費に大きくかかわってきます。
たとえば、大量生産や大量消費によって引き起こされる大量の廃棄物問題。
必要以上にものを生み出すということは、地球の限られた資源を枯渇させ、その資源を本当に必要としている人に行き渡らないことが問題となっています。
また、大量廃棄による環境問題や気候変動の課題もあります。
上記の現状を解決するためには私たちひとりひとりの消費意識を根底から変える必要があります。
それが、私にとっても地球の未来にとってもいい、というエシカルに基づいた消費行動「エシカル消費」です。
私たちができるのは”エシカル消費”
人間は豊かで便利な生活を追い求め経済を発展させてきました。
その結果、地球資源を使い、安い賃金で長時間労働を強いられる人が増え、過剰な化学物質や農薬が使われ、健康被害や環境問題を引き起こしたのです。
くらしを豊かにし、経済も発展させ、資源の無駄遣いをなくすには、人々の生活の革新が基盤となってきます。
つまり、エシカルに基づく消費行動によって、地球や人々のくらしを改善できるということです。
そこでここからはエシカル消費について詳しく見ていきましょう。
エシカル消費とは?
エシカルに法や規則がないように、エシカル消費もまた「これを買ってはいけない」「これを買わなければならない」という個人の選択の自由を奪うものではなく、心地よいペースに重きを置いています。
エシカル消費が目指すものは、
- 人、環境、地球の未来に良いと感じたものを選ぶ
- 持続可能な社会のためにできることからはじめてみる
- 自分が選択した消費で世界が変わる
- 生産者と消費者のつながりを楽しんでみる
このようにエシカル消費は、消費の自由を失うことなく、良心に従って選ぶこと、買うこと、使うこと、その一連の流れを楽しむところがポイントなのです。
生活の中のエシカル消費
エシカル消費が目指す姿が理解できたところで、実際の生活に落とし込むにはどうすればいいのでしょうか。
ここでエシカル消費を楽しむための4つのステップをご紹介しましょう。
エシカル消費を楽しむための4つのステップ
すべての製品には誕生秘話があります。どの国の原料が使われ、誰がどのように作って、どうやって私たちの手元に届いたのか。製品の生い立ちを知ることで「つながり」を意識してみましょう。
製品の生い立ちの背後に、児童労働や低賃金労働、雇用の不平等、環境負荷など問題が起きていないかを考えてみましょう。
え!そんな安いお給料で働いていたの?!と信じられないような事実が隠されているかもしれません。
もし私たちが買ったものが社会問題や環境問題を悪化させている可能性があると知った場合、逆に解決する製品はどういうものがあるのかを学んでみましょう。
ステップ3で知った「解決する製品」を選んでみましょう。
再度お伝えすると、「これを買わなければならない」という窮屈なものではなく、選択肢のひとつに入れてみるという意識こそエシカルなのです。
以上が誰でもできるエシカル消費を楽しむための簡単な4つのステップです。
では具体的にどのような製品がエシカル消費につながるのかを4種類ご紹介します。どれも身近で手に入りやすいものなので気楽に構えて見てみてくださいね。
フェアトレード製品を選択

フェアトレード製品を選ぶことはエシカル消費に直結します。
フェアトレードは「公正な貿易、取引」という意味を持ちます。
生産者に正当な賃金が届くシステムのもと作られたものをフェアトレード製品と呼び、エシカル消費を心がけるうえで重要なキーワードです。
フェアトレード製品の目的は、
- 途上国などの生産者の生活改善
- 生産者の自立実現
- 無理のない生産
つまり、持続可能な生産活動を実現することです。
カカオやコーヒー豆の生産地は開発途上国に集中しており、低賃金、児童労働、森林を切り開いて栽培するなど貧困とも関わる問題があります。
お金の寄付や設備提供をする方法もありますが、フェアトレードの目指す姿は生産者が自立するためのサポートです。
フェアトレード製品には次のような「国際フェアトレード認証ラベル」がつけられています。

主な対象製品は、
- コーヒー
- 紅茶
- チョコレート
- バナナ
- フルーツ加工食品
- コットン
- ファッション
などさまざまです。
フェアトレード製品の特徴としてエシカルな観点から生産されているのでオーガニックがほとんどです。
食品の場合、味の美味しさもお墨付き、実際にオーガニック食品は栄養価が高いことが立証されています。
「フェアトレード製品気になってきた!」
「明日早速探してみようかな」
そんな気持ちになった方に、身近で購入できるフェアトレード製品を次にご紹介します。
こんなところにある!身近なフェアトレード商品たち
エシカル消費を意識してフェアトレード商品を選択しよう!と決めても、なかなか売っていないのでは?と感じる方も多いでしょう。
しかし、周りを見渡してみるとフェアトレード商品はじわじわと増え始めています。
全国に展開する大手イオンではエシカル消費が叶うフェアトレード商品が充実しています。
<イオン・イオングループで見つかるフェアトレードなものたち>
イオンがフェアトレードを取り扱い始めたきっかけは2002年、意見箱に投函されたひとつのメッセージでした。
「日常生活を国際貢献と結びつけるパイプ役になってほしい」
そこからイオンとグループ会社はフェアトレード商品を取り入れ始めました。
ほかにも、東京でオーガニック食品を取り扱う「ビオセボン」、愛知県内で展開する「旬楽膳」など食品スーパーにもフェアトレード製品は多数取り扱われており、自然食品のお店やオーガニックのセレクトショップでも見かけます。
このように、フェアトレード商品は普段のお買い物の中でみつけることができます。
これまでフェアトレード商品=ハードルが高い、という印象があった方もぜひチェックしてみてくださいね。
地産地消を心がける
地産地消はエシカル消費につながります。
地産地消とは、その地域で生産された農作物や水産物をその地域で消費することを指します。
エシカル消費の視点からみた場合、地産地消は次のメリットがあります。
- 作った人の顔やストーリーがわかるので安心して食べられる
- 地元農家が活気づく、応援につながる
- 輸送費用が減るのでエネルギー節約、二酸化炭素排出削減になる
- 新鮮なものが手に入る
- 郷土料理や特産物を知ることで地域への愛着が増す
このように地産地消を意識することで、地域活性、環境配慮、ものを大切にする心が生まれ、エシカルに基づいたアクションが叶います。
環境に配慮した製品を選ぶ
海の生態系保護、森林保護など環境に配慮した製品を選ぶこともエシカル消費です。
環境に配慮した製品の例をあげると、
- プラスチックフリー(ストロー、スプーン、マイボトル、容器等)
- 無農薬、化学肥料不使用の農産物
などです。
環境に配慮した認証マーク「MSC 海のエコラベル」、森を守る「FSC認証」などを基準にしてみるといいですね。
エシカルファッションを意識する

エシカルファッションを意識することでエシカル消費に貢献できます。
例えば、
- 農薬を使わないオーガニックコットンで作られた服
- 手仕事で作られた一点ものアイテム
- 寄付付き製品
などがエシカルファッションの一部です。
また買う以外にも、服を大切に着続けたり、おさがりを譲り受けたり、リメイクを楽しんだりすることが目標12「つくる責任つかう責任」に貢献します。
エシカル消費にありがちな素朴なギモン
法や規則で決まっていないエシカル消費ですが、「なかなか実行できない」「人に聞きづらい」とギモンを持つこともあるでしょう。そこでここでは、エシカル消費を意識する際によくあるギモンにお答えします。
ギモン1「フェアトレード製品は少し価格が高いのですべてを揃えるのは難しい。無視して買うべき?」
無理をして購入することがエシカル消費ではなく、自分の心地よいペースで「今だ!」と決めたときに選ぶことをおすすめします。
フェアトレード製品が高いという理由のひとつに、フェアトレード製品が主流ではないからというものがあります。
私たちが少しずつでもフェアトレード製品を購入することで、そうでない製品にかかる費用が減り、結果フェアトレードの販売価格が安くなる可能性があります。
特別な日のプレゼント、自分へのご褒美、今だ!と感じたときに選んでみることから始めてみましょう。
ギモン2「食品ロスをなくすために、値下げされた期限間近のものを買うべき?健康のために新鮮なものを選びたいんだけどな」
新鮮なものが欲しい!というのは自然な考えなので値下げされたものを絶対に買わなければならない、ということはありません。
がしかしエシカル消費の視点に立った場合、廃棄を避けるためにお店側は試行錯誤しているので、私たちもできる限り協力してみましょう。
食品ロス対策はお店の努力と消費者が一緒になって取り組む課題なのです。
新鮮なものを手にいれる有効な手段として「地産地消」をおすすめします。
朝採れ野菜など、その日の朝に収穫された野菜が並ぶ道の駅やファーマーズマーケットは新鮮なものばかりです。
エシカル消費の手段は無限です。自分に合った消費方法を楽しむのも、エシカル消費の魅力ですね。
生活の中にエシカルを取り入れよう!
エシカルとは、人、自然、未来に配慮した考え方で、それぞれをつなげることです。
人間の愛情の部分がエシカルに直結します。
このような考え方を生活に反映させるために私たちにできることは、エシカル消費です。
エシカル消費の方法は、
- フェアトレード製品を選ぶ
- 地産地消を心がける
- エシカルファッションを意識する
などがあります。
エシカル消費をすることは、エシカルに基づいた生産、加工、販売をするお店や企業に一票を投じることと同じことです。
SDGsが実現したとき、そこに私たちが実践するエシカル消費がかかわっているとしたら嬉しくなりますね。
エシカルを取り入れて、持続可能な社会作りに参加してみましょう。