カレールウといえば最初に思い浮かぶのがハウス食品「バーモントカレー」という方も多いのでは?
それもそのはず、1963年の発売から約60年もの間愛され続けているロングセラー。
テレビのCMでもおなじみですよね。
「バーモンドカレー」をはじめ数々のヒット商品を手掛けるハウス食品ですが、本業を通じてどのようなSDGs達成に向けた取り組みを行っているのか、詳しくご紹介します。
目次
ハウス食品のビジョンと事業内容
企業名 | ハウス食品グループ本社株式会社 |
SDGs | 1,2,3,4,5,7,8,9,10,12,13,15,17 |
サステナビリティレポート |
ビジョン
食を通じて人とつながり、
笑顔ある暮らしを共につくる
グッドパートナーを目指します。
日本中の過程が幸福であり、そこにはいつも温かい家庭の味ハウスがある。
誠意・創意・熱意を持とう。
ハウス食品の社是・社訓であり、グループで働く全ての「ひと」共通の価値観、DNAとなります。
事業内容
ハウス食品の主な事業は下記の5つに分けられます。
香辛・調味加工食品事業健康食品事業海外食品事業外食事業その他食品関連事業 |
ハウス食品のSDGsの取り組み〜食でつなぐ、人と笑顔を〜
バリューチェーンごとにハウス食品グループのSDGsの取り組みをご紹介します。
資材調達
グローバルな調達ネットワークを構築し、「安全」は当然のこと、お客様に「安心」していただける原材料を調達しています。
品質・お取引先との信頼関係を重視した調達を推進し、持続可能な社会に貢献できるよう、責任ある調達に取り組んでいます。
ハウス食品は、インドネシアにある自社グループの農場で生産した、一時加工から輸入を含めてグループ一貫で管理しているわさびを原材料の一部に使用しています。
インドネシアの農場は、長年の農場経営によって地元住民の雇用を維持し続けています。
また、多くの紙を使用している製品パッケージ※FSCなど認証紙の使用を推進し、森林に関する課題に配慮したバリューチェーンの構築にも取り組んでいます。
※FSC:Forest Stewardship Council(森林管理協議会)とは:森林の適切な利用と保全のために活動する国際的な非営利団体。
ハウス食品グループは、2021年12月に※Sedexにバイヤー・サプライヤー会員として加入し、「責任ある調達」と「理論的で持続可能なサプライチェーンの構築」に取り組んでいます。
Sedexのツールやサービスの利用を通じて、サプライヤーと共に安全で理論的、かつ持続可能な事業慣行を維持し、サプライチェーン上で働く人々の労働条件を守ることを目指しています。
2022年度取引先説明会において、ハウス食品グループの社会への責任に対する取り組みを共有し、Sedexへの対応を依頼しました。
※Sedex:Sedex(本部:イギリス)は、エシカル取引サービスを提供している世界有数の会員制組織であり、グローバルサプライチェーンにおける労働条件の改善に取り組んでいます。Sedexは、企業が責任ある持続可能な事業活動を改善し、「責任ある調達」を行うために必要な実勢的なツールやサービス・コミュニティネットワークを提供しています。
生産・物流
「安全・安心」「高品質」「コスト競争力」を備えた製品を生産し、お客様へお届けできるように日々の生産活動を行っています。
近年は、環境負荷低減につながる生産・物流方式の実現と共に、グループ最適視点での体制構築に取り組んでいます。
ハウス食品は、循環型モデルの構築に向け、ガスコージェネレーションシステムおよび太陽光発電システムを導入しています。
ガスコージェネレーションシステムは、施設内に設置したガス発電機による発電と、発電時に生じる排熱を利用することでCO2排出量を削減する仕組みです。
2020年に福岡工場、2021奈良工場に導入しています。
また静岡工場は、2021年4月より、年間使用電力量10%相当を発電する太陽光発電システムを導入しています。
▶︎関連記事:「コージェネレーションシステム(コジェネ)とは|システム、メリット・デメリット、事例まで」
将来的な製造人員不足や物流コストの継続的な上昇が想定されるなか、ハウス食品は、2021年4月より新しい需給・生産管理一括システムを導入しました。
AIやビックデータも活用した需要予測の精度向上や迅速な変化対応を実現することで、生産効率化によるコスト競争力の強化に加え、資材や製品の廃棄削減をめざしています。
グループの特例子会社で、スパイス製品を製造しているハウスあいファクトリーでは、障がい者と健常者が一体となって”安全・健康で働きやすい職場づくり”を進めています。
安全活動と健康経営への取り組みが評価され、2017年以来5年連続で健康経営有料法人の認定を受けています(2021年は上位法人に与えられる”ブライト500”に認定)。
これからも、障がい者と健常者がともに助け合いながら、さらに”安全・健康で働きやすい職場”を実現し、安全・安心で高品質な製品をお届けします。
輸送距離の短縮、環境負荷の少ない船舶や鉄道での輸送の切り替え(モーダルシフト)、輸送効率の向上などの取り組みを積極的に実施することで、物流におけるCO2排出量削減に努めています。
販売
消費環境がますます多様化するなか、より多くのお客様に食の喜びを提供し、笑顔あるくらしに貢献することを目指しています。
家庭で召し上がる食事はもとより、外食や中食などいろいろな食のシーンでお客様のニーズにお応えできるよう、バリューチェーン上の展開領域を広げています。
持続可能な食料供給の課題に対して、食料自給率の低い日本は国を挙げて農林水産業の進行に力を注いでいます。
ハウス食品は、2009年よりカレーメニューを通じた地産地消の推進に取り組んできました。各地の食材を生かした、家庭で楽しめるオリジナルレシピを考案し、旬の農産物をたっぷりと取れるメニューを提案しています。
今後も地域の生産者や自治体・流通関係の皆様と協力し、地元食材の消費拡大による地域活性化を進めます。
コロナ渦で世界中の飲食店が大きな影響を受けています。
その中でハウス食品は、ウィズコロナの時代に向けて成長路線に舵を切っていくために、各エリアで施策に取り組んでいます。
経済回復が加速しているアメリカでは、2021年3月にサンディエゴに「ココイチ」をオープンさせました。
そして、ウィズコロナに適したテイクアウト専門店をオープンさせるほか、フランチャイズ店舗の開発を進めるなど、より多くのお客様に「ココイチ」のカレーライスを召し上がっていただけるよう努めています。
コロナ渦で外食市場は厳しい環境が続くなか、少量で料理に新たな価値を生み出すことができるスパイス調味料への期待は高まっています。
こうした中、ハウス食品は、ギャバンのスパイス調達とハウス食品の加工技術を掛け合わせ、「香ばし唐辛子ペースト」を共同開発しました。
ペースト状のため調理現場で使いやすく、油中加熱によって唐辛子の持つ香ばしさやコクを付与しています。
今後も両者の強みを融合し、相互に保管し合うことでソリューションの質やスピードを高めていきます。
お客様
ハウス食品グループは、「お客様に学ぶ」「お客様とともに」を大切なキーワードとして、グループならではの回創出に取り組んでいます。
2021年度にお客様からいただいたお声は約2万3千件でした。
こうしたお客様の声は、その日のうちに経営層と全社の関連部門に伝達されます。
各部門での改善活動と併せて、企画・開発・調達・生産管理・品質保証・お客様相談等のメンバーによる『※QUIC』で協力して全社テーマの製品・サービス等の改善活動を推進しています。
※QUIC:お客様主動の品質向上活動
日本では年間600万トンの食品ロスが発生し、その46%が家庭から発生しています。
ハウス食品は家庭の食品ロス削減の解決策の一つとして、2020年より”もっとカレーだからできること”プロジェクトを始めました。
プロジェクトの内容は、アンケート調査で判明した、食品ロスになりがちな食材を使ったレシピをホームページで紹介するという内容です。
カレーであれば、期限が近いづいた食材や、いつもなら捨ててしまう食材も美味しくまとめることができます。
孤食を解消し、共食機会を創出するため、2020年より全国のこども食堂に「えがお便」をお届けする活動を行っています。
「えがお便」とは、共食機会の創出だけでなく、社員に社会課題に触れてもらうことを目的として、グループの製品と季節のレシピ、こども食堂に宛てた直筆の手紙を一緒に梱包して送る取り組みです。
コロナ渦で食堂形式での開催が難しいなか、製品やお弁当をお配りする食堂が多く、2020年度は120食堂に製品をお届けしています。
食堂に来られる方々と直接会うことはできませんが、感謝の手紙や写真を通じて交流しています。
研究開発
グループ各社のBtoCの商品開発はもちろんのこと、社会課題やグループ各社の戦略具現化に向けた課題に対して、独自の視点・保護された独自の技術・製品・サービスで解決を主導する存在となることを目指しています。
弘前大学COIでの取り組み
ハウス食品は、文部科学省の革新的イノベーション創出プログラムの一つである、弘前大学を中心とした官民学のプロジェクトへ参画しています。
弘前市で1,000名規模、2,000項目以上の健康診断に加え、ハウス食品が独自に味覚検査や食事調査を実施。そして、味覚や食事が健康指標とどのような関連があるのかを解析しています。
これらのビッグデータをもとに新たな価値の創出を目指しています。
彩るスパイス時間 CRAYONS
製造過程でどうしても出てしまう製品に使えないスパイスたち。
「もったいないをなくしたい」との研究員の想いからクレヨンに仕立てました。
レンジ調理可能なレトルト製品の開発
ハウス食品は、レンジ調理ができるパウチ入りレトルト製品の開発に取り組んでいます。
湯せん調理に変えることによって、より簡単に作れるのはもちろん、調理時間が短くなり調理時のCO2排出量を約80%削減することができます。
品質保証
安全・安心な商品とサービスをお客様へ提供し続けるために、原材料の調達、商品の企画・設計・栽培・製造・物流・販売までのバリューチェーン全てにおいて、ハウス食品グループ全社員が一丸となり、品質の維持向上に取り組んでいます。
グループ本社の品質保証統括部と事業会社の品質保証部門長による「品質保証責任者会議」では、「品質情報リスクマネジメント会議」や「グループ表示会議」など専門会議を通じて、法改正情報の収集を行っています。
そして、事業会社と連携し、法規制の遵守に向けた対応やグループ共通の課題や事業会社の課題について、俯瞰的な視点と各社の「現場の実情」の両面から討議し、品質保証力の向上に取り組んでいます。
これらの取り組みと連動して、各事業者でISO9001や食品安全企画であるFSSC22000および同等の認証取得に取り組んでいます。
人材開発
ハウス食品グループは、人材戦略の要であるダイバーシティの実現において、多様な人材が揃い成長し、最適な持ち場でそれぞれの持ち味を活かしながら活躍していくことが大切だと考えます。
社員の主体性を尊重したチャレンジの場・機会として、各種公募制度を設け、グループのさまざまな社員に提供しています。
- 早期に海外経験を積める海外トレーニー制度
- コーポレート・ベンチャー・キャピタルによるスタートアップ企業での就労経験
- 社会課題の解決に向けた外部団体への出向
海外・他社といった多様な仕事経験を積むことを支援しています。
Off-JTによる学びの場である学習会(研修)では、グループ各社合同での開催を進めており、会社の垣根を超えた相互啓発や学習を多角的に行えるよう、機会提供をしています。
新規事業開発では、社内外の事業開発経験者を招いた”ミートアップ”の開催が行われています。
これらの動きは、社内各所に伝播しており、新たな企画が”自発的”に生まれるという目的です。
環境への取り組み
ハウス食品グループは、2021年5月から気候関連財務情報開示タスクフォースの提言に賛同を表明し、気候変動をはじめとするさまざまな環境課題の解決に取り組んでいます。
生産活動におけるCO2削減に加え、ハウス食品が持つバリューチェーン全体を意識した活動へ展開していくため、2021年度から「Scope3」の考え方を導入しました。
「Scope3」の削減につながるテーマを実践し、社会への責任を果たしていくことを目的としています。
まとめ
私たちが知っている「ハウス食品」は、食品の販売・製造・開発だけではなく、事業を通じてあらゆる角度からSDGsの取り組みに貢献しています。
これからもハウス食品グループは、バリューチェーンの構築や強化を通じて、さまざまな社会課題の解決とグループの持続的な成長の実現をめざします。