#インタビュー

みんなのまちづくり|高齢者や移住者が地域に住みやすい環境づくりを提案

みんなのまちづくり 伊藤さん インタビュー

伊藤 洋平

市民主体のまちづくりを志し、多摩市役所入庁。 中国留学をきっかけに退職し、帰国後、高齢者を核としたコミュニティづくりとして、桜美林ガーデンヒルズの取り組みを企画。 その後、地方創生の取り組みとして、長野県佐久市、山梨県都留市を拠点とした生涯活躍のまち事業を推進。佐久市のホシノマチ団地は国土交通省の平成30年度スマートウェルネス住宅等推進モデル事業として採択されている。中国関係では、内閣府日本・中国青年親善交流事業で通訳を担当。そのほか、大学生訪中事業など、日中友好事業における実績多数。 公益社団法人日中友好協会理事。認定NPO法人東京都日中友好協会理事長。

introduction

「生涯活躍のまち」をキーワードに、高齢者を核としたまちづくりに取り組む株式会社みんなのまちづくり。地方への移住推進、地方活性化、多世代が交わるコミュニティづくりなど、さまざまな事業を展開しています。今回は株式会社みんなのまちづくり代表の伊藤さんに、地方創生の取り組みや事業の特徴についてお話を伺いました。

市民と一緒に事業を進めていく

今日はよろしくお願いします!はじめに、みんなのまちづくりについて教えてください。

伊藤さん:

2016年に始まった、地方創生の取り組みをしている会社です。誰もが自分の望む地域に移住でき、健康でアクティブに住み続けられるような「生涯活躍のまち」を目指して、事業を展開しています。そのほか、都市計画やまちづくりを通して、移住、人と人とのつながり、ビジネス創出などの手助けも行っております。

まちづくりに特化した会社を立ち上げようと考えたきっかけはありますか?

伊藤さん:

以前、私は多摩市役所で地方公務員として勤務していました。そのとき、「市民は主体的にまちづくりに関わっていくべきでは?」と思っていました。多摩市は、当時、市民参画度日本一といわれている地域でした。ただ、実際に働いてみると、行政側に志の高い人が多い一方、市民側がプレーヤーとなることは少ないと感じたんです。そのギャップを埋め、行政と市民が一緒に事業を進めていける機会を作りたいと思い、今の会社を立ち上げました。

移住先に必要な住まいと仕事に着目

具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか?

伊藤さん:

主に、山梨県の都留市と長野県の佐久市で事業を展開しています。2つの地域は、政府が推進する「生涯活躍のまち」構想※の実現を進める自治体として選ばれていることが共通点として挙げられます。現在は行政と一緒に、移住促進や仕事創出の事業を中心に取り組んでいます。

「生涯活躍のまち」構想とは

「生涯活躍のまち」構想は、「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、希望に応じ地方や「まちなか」に移り住み、地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくり」を目指すものです。

引用:地方創生「生涯活躍のまち」構想の具体化プロセスに関する手引き(第1版)

各地域の移住促進の取り組みについてお聞かせください。

伊藤さん:

都留市の事業では、生涯活躍のまちを推進する取り組みを行っています。移住するには、その地域に住まいや仕事が必要です。

住まいは空き家を活用してつくれるのですが、仕事はなかなかつくれないことが懸念点として挙げられます。そこで、都留市の人口減少に対する課題解決につながるビジネスを官民連携で創出することを目的としたビジネスプランコンテストを実施したり、リモートワークで仕事ができる環境を提供するなど、移住者の仕事づくりに貢献しています。

移住しやすい環境をつくることで、地域の活性化に繋がるのは一石二鳥ですね。地方ならではの高齢化の側面も重視されているのですか?

伊藤さん:

そうですね。特に都心に住む男性高齢者が定年後、孤立してしまうことを問題視しています。働いているときは会社と家の行き来で忙しくても、退職後に会社のコミュニティがなくなることで、孤独を感じてしまう人たちをたくさん目にしました。何十年も働いてスキルをもった人が活躍できないのはもったいないと感じ、※アクティブシニアの地方移住に向けた取り組みも計画中です。

アクティブシニアとは

年齢に関係なく、仕事や趣味などに意欲的でアクティブに活動する高齢者のことを指す。

具体的にどのような取り組みを検討しているのですか?

伊藤さん:

都留市はアクティブシニアの移住の取り組みで成功している自治体で、「高齢者がどのように充実した生活を送れるか」が常日頃のテーマとなっています。このテーマを考えたとき、多世代交流が鍵だと思ったんですね。

具体的には、移住してきた高齢者と若者が交流する場を検討しています。高齢者の方々の経験を伝えたり、ネットワークの強みを活かして、人脈形成の方法を教えるなど。

さまざまな世代のコラボレーションは、意義のあることだと感じてます。

社長ばかりが住む団地をつくる

では、長野県の佐久市ではどのような事業を行っているのでしょうか?

伊藤さん:

「ホシノマチ団地」という、6年以上新規の入居者がおらず、空室だった団地をリノベーションして移住者を集め、地域の活性化に貢献する事業を立ち上げました。「社長ばかりが住む団地」をコンセプトとしています。市の補助金を受けず、民間の力で運営していることが特徴です。

面白いコンセプトですね。ということは、移住者は起業家が多いのでしょうか?

伊藤さん:

起業家だけでなく、個人事業主、会社員でも新規事業の立ち上げに興味のある人なども移住されています。本来であれば、移住すると知り合いづくりから始めることが多いと思うのですが、ホシノマチ団地は移住者専用なので、自然とその輪に入りやすいんです。メンバー同士の交流が盛り上がり、地域で活動が生まれたりすることもあります。

その地域で事業を生むこともあるのですね!どのくらいの移住者がいますか?

伊藤さん:

空室だった16室のうち10室以上は埋まりました。ここ半年間で3組ほどが退去しましたが、みなさん、佐久市内で転居しています。つまり、「ホシノマチ団地」に住み、佐久市を一度体験するような、佐久市の移住入門住宅的な位置づけで入居していただいていたのかと思います。これも地方創生にとって意味があることだと思っています。

多世代の交流の場をつくる

ホシノマチ団地がきっかけで、佐久市を気に入ってもらえるのは嬉しいですね。では他に行われている事業について、過去に取り組んだ事例があれば教えてください。

伊藤さん:

東京の町田で桜美林大学と連携した「桜美林ガーデンヒルズ」を企画しました。このプロジェクトでは、既存の学生だけのコミュニティを見直し、これから必要とされるシニアの生涯学習や※リカレント教育に着目しています。

学校教育から離れた後も学び直すことができることを指す。

既存のコミュニティをどのように変えたのですか?

伊藤さん:

大学の敷地内にある空き地を活用し、高齢者向け住宅、一般向け住居、学生寮の3つを設置しました。シニアや学生、教職員が住めるような環境をつくることで、多世代の交流が期待できます。

ここまで取り組みを伺いましたが、どれも長期間の計画で、かなり忍耐がいる印象を受けました。

伊藤さん:

そうですね。時間はかかるのですが、個人としっかり向き合うことが大事だと思います。頭の中でアイデアが浮かんでも、一人だと踏み出す勇気がなかったり、人の力を借りる必要があったりと、なかなか実現することが難しい場合もありますよね。そこを一緒に踏み出し、継続できる状況をつくることが私たちの役目です。

地方創生を通して世の中を活発に

話は変わりますが、SDGsの観点で意識されていることはありますか?

伊藤さん:

SDGsの11つ目のゴールでもある「住み続けられるまちづくりを」は、全事業を行う上で意識していることです。東京一極集中ではなく、地方でもその人が望んで住み続けられることが前提にあるべきだと考えています。

2016年の立ち上げ当時と比べて、今は地方創生やSDGsへの関心は大きくなったと感じていますか?

伊藤さん:

首相が変われば国の政策も変わると思っていたので、そのうち地方創生への関心は薄れていくだろうと覚悟していました。しかし、今でもさまざまなシーンで「地方創生」や「SDGs」という言葉を聞くので驚いているのが正直なところですし、着実に認知は広がっていると思います。

いつ流れが変化するかわからない状況のなか事業を展開していますが、不安に感じることはありませんか?

伊藤さん:

やろうとしていることが、たまたま時代の流れに乗っているという点はありがたいと思います。今は関心が強くなってきていますが、今後「地方創生」という言葉を聞かなくなったとしても、起業ニーズやアクティブシニア世代を重要視する流れはなくならないかと。そういう意味では、リスクは高くないのかなと思います。

今後の展望

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

伊藤さん:

佐久市、都留市での事業を全国に普及させ、海外にも進出していきたいですね。以前は中国事業も展開し、輸入販売や現地の大学生との交流、訪日した中国人に向けた研修や視察も行っていたのですが、コロナ禍で難しくなってしまい……。将来的には中国での事業の再開と、その他アジアの国々で事業を活用できたらと考えております。

ありがとうございました。

みんなのまちづくり 関連リンク

株式会社みんなのまちづくり 公式HP:https://minmachi.co.jp/