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【乳製品が与える環境負荷】サスティナブルな未来と共存するために乳製品メーカー・Norcoが実践するエコ活動を徹底解明!

乳製品=環境負荷が大きいというデメリットがありますが、乳製品から代用ミルクに完全移行するのはまだまだ非現実的な面も多くなっています。

そこで、オーストラリアを代表する乳製品メーカーのNorcoは、乳製品と共にサスティナブルな未来を歩めるようにさまざまなエコ活動を行っています。

この記事では、Norcoが二酸化炭素の排出量、水の消費量、電力消費量、汚染、廃棄物などの問題にどのように向き合っているのかを見ていきましょう。

Norcoの概要

ニューサウスウェールズ州北部に拠点を置くNorco(Norco Co-operative Limited)は、乳製品の製造・販売を行う企業として1895年に生まれました。

特に牛乳はNorcoの定番商品のひとつとして知られており、ほかにもアイスクリーム、ミルクコーヒー、チーズ、クリームといった幅広い乳製品を取り扱っています。

国内のイベントなどでブースを設けていることも多く、地元密着型の企業として認知されています。

乳製品と環境問題

酪農業は、環境への負荷が大きな産業です。

乳牛のゲップやふん尿は温室効果ガスを排出することで知られており、オーストラリアでは温室効果ガス総排出量の約19%を酪農業が占めています。

国内の総排出量の約3%に匹敵することから、酪農業による気候変動への悪影響が懸念されています。

また、ふん尿などの処理や取り扱いを誤ると、水質汚染や土壌汚染などの原因にもなりかねません。

酪農地の開拓による草原、湿地、森林などの消失やエコシステム崩壊についても指摘されており、さまざまな観点において環境問題と密接な繋がりがある産業です。

さらに、日本では紙パックで売られていることが多い牛乳ですが、オーストラリアではプラスチック製の容器が主流となっています。

プラスチックごみの問題を加速させる可能性も高く、乳製品や酪農業は持続可能性の高い未来を実現するために対策を取ることが求められています。

Norcoが目指すサスティナブルな乳製品業界

牛乳=環境への影響が大きいことから、近年ではアーモンドミルク、オーツミルク、豆乳などのサスティナブルな代用ミルクを使用する人々や飲食店が増加中です。

確かに、牛乳を世界から完全に除去すれば、持続可能性のある未来を実現できる可能性は高くなります。

しかし、さまざまな食材や料理にも使われている乳製品を完全に排除することは難しいため、Norcoではバランスの取れた環境に優しい乳製品の製造と販売が必要だと考えています。

Norcoは二酸化炭素の排出量を2030年度までに30%削減、2050年度までにネットゼロにすることを目標としており、さまざまな環境対策を実施してきました。

また、オーストラリアの乳製品をあらゆる角度から審査するDIAA Australia Competitionにて、Norcoは2019年、2020年、2021年、2023年に賞を受賞しています。

環境に対する取り組みも評価されており、主に以下のようなエコ活動が含まれています。

①パッケージにリサイクル由来の素材を採用

Norcoの牛乳パックのパッケージには、2023年以降リサイクル由来のボトルが採用されています。

リサイクルで回収されたペットボトルが再生プラスチック樹脂として作り替えられており、Norcoの牛乳パックとして再利用されているのです。

ボトル本体だけでなく、キャップやラベルなどもリサイクル由来で、従来のペットボトルのパッケージと比較すると二酸化炭素の排出量、水の使用量、固形廃棄物の量に関して以下のような効果を実現しています。

  • 二酸化炭素の排出量を年間215.21トン削減(年間323本の木を植えるのに匹敵する量)
  • 10,951.7リットルの水の節約(オリンピックのプール約4つ半に匹敵する量)
  • 固形廃棄物を年間12.26トン削減(アフリカゾウ約3頭の体重量に匹敵)

リサイクル由来の素材をパッケージに使うことで、廃棄物の量はもちろん、二酸化炭素の排出量や水の節約にも貢献している点が特徴です。

②コンポスト化可能なパッケージ

乳製品を幅広く取り扱っているNorcoでは、牛乳などの飲料製品以外にもアイスクリームやサワークリームなどを販売しています。

アイスクリームやサワークリームのパッケージには元々ポリ塩化ビニルやポリスチレンなどのプラスチックが使われていましたが、それらを廃止して再利用可能かつコンポスト化可能なパッケージへの切り替えを行いました。

コンポスト化可能なパッケージの導入により、合計で1,492kgのポリ塩化ビニルと3,991kgのポリスチレンを削減しています。

③保護シールの除去

紙パックではなくボトルタイプの牛乳が主流のオーストラリアでは、牛乳のキャップの内部に保護シールが付けられているのが一般的です。

保護シールは購入前の牛乳の真空性を高めるために付けられており、雑菌などの繁殖を防ぐ役割があります。

しかし、保護シールの内側には軟質プラスチックが採用されているため、Norcoは家庭で発生するプラスチックごみを削減すべく保護シールの除去を実施しました。

代わりにキャップを取り付ける段階で密封性を高めるシステムを開発・導入し、年間5,375kgの軟質プラスチックの発生を抑えながら品質維持も実現しています。

また、保護シールの接着は工場で行われていたため、保護シールを完全除去したことで7,562 kWhの工場の消費電力削減にも繋がりました。

④砂糖の使用削減

Norcoは砂糖が環境に与える負荷を懸念して、自社製品の砂糖の使用量を削減しています。

砂糖は環境への影響が大きな製品のひとつであり、世界中で年間約 2 億 7,900 万トンのサトウキビ廃棄物が発生しています。

また、サトウキビ1kgを生産するのに約210リットルの水が必要で、処理時に同量の廃水を伴う点もデメリットです。

WWFは工場から洗い流された植物物質と汚泥が淡水域で酸素をすべて吸収するとしており、魚の大量死などの原因にもなるとも指摘しています。

さらに、サトウキビ畑を作るために森林が伐採されているという問題もあり、砂糖生産量1位のブラジルではサトウキビ農業が原因ですでに国内の7%の森林しか残っていません。

こういった砂糖による環境負荷を受けて、Norcoでは「Mighty Cool」と「Real」の2製品における砂糖使用率を大幅に削減しました。

「Mighty Cool」は子ども向けの乳飲料であり、子どもが美味しく飲める味を維持しつつも2,000kgの砂糖削減に成功しています。

さらに、ミルクコーヒーなどを主なラインナップとしている「Real」では、質の高いコーヒーの採用によって風味を落とすことなく5,000kgもの砂糖を減らしています。

⑤製造施設の見直し

クイーンズランド州ラブラドールにあるNorcoの工場では、元々は石炭火力ボイラーを使用していました。

しかし、2020年に液化石油ガスで稼働する新しいガスボイラーを導入し、二酸化炭素の排出量を年間2,937トン(約28万本のスギの木の1年間の吸収量)も削減しています。

また、2022年にはラブラドールの冷凍工場の電力消費量を削減するプロジェクトを開始させ、冷凍プラントの設備の一部をアップグレードしました。

これによって総合的なコンプレッサーの稼働量が減ったと同時に、日中に稼働するコンプレッサーをスタンバイモードで休ませることに繋がったため、2023年度の電力消費量はプロジェクト実行前と比較して7.3%削減されています。

さらに、水の消費に関する監視システムも導入し、2023年度には前年度よりも4.6%の水の節約に成功しました。

⑥認定オーガニック農場との契約

Norcoは環境汚染のリスク軽減を実現するために、合成殺虫剤、肥料、除草剤を使用していない認定オーガニック農場と契約を結んでいます。

そのほかにも農場で飼育されている乳牛の飼育環境の審査を行っており、動物福祉の面でもメリットの大きな取り組みとして評価されています。

まとめ

持続可能性の高い未来を叶えるためには、乳製品の完全除去ではなくサスティナブルな乳製品を増やすことが大切です。

Norcoは多方面におけるエコ活動に取り組んでおり、環境負荷を減らしながら製品の開発・製造を行っています。

私たちも、牛乳やそのほかの乳製品を購入するにあたって環境に優しいものを見極めることからはじめてみましょう。