オーストラリアを代表する家庭用品店のシェリダンは、50年以上にわたってハイクオリティなリネンやタオルを販売しています。
しかし、繊維業界が与える環境負荷を懸念して、近年では環境問題の解決策にも力を入れています。
この記事では、シェリダンが行うリサイクルへの取り組み、エコな繊維素材の採用、綿糸の有効活用、廃棄物の削減などについてチェックしていきましょう。
目次
シェリダンってどんな企業?
シェリダン(Sheridan)は、リネン及びタオルなどの家庭用品を扱う企業です。
本社をシドニーに構えており、オーストラリア国民から50年以上にわたって愛され続けています。
高品質で手触りの良い繊維製品が魅力で、オーストラリアのほか、ニュージーランド、イギリス、シンガポール、インドネシアなど、世界に160以上の店舗を展開しています。
繊維業界と環境負荷
私たちが日常的に使う衣類、タオル、リネンなどを含む繊維製品は、環境負荷が大きいと言われています。
毎年78 万トンもの繊維が埋め立てられており、リサイクル率はわずか7%と非常に低くなっています。
また、1キロ分のコットンの生産に対して1,931リットルもの水が消費されると推定されることから、繊維製品の廃棄物削減、リサイクル促進、水の消費を抑える代替品となるファブリックの採用などが必要不可欠です。
シェリダンは繊維産業が多くの環境問題を生み出していることを懸念して、以下のような取り組みを行っています。
シェリダンリサイクルプログラム
2019年、シェリダンは繊維廃棄物の削減に繋がるリサイクルプログラム・The Sheridan Recycling Programをスタートさせました。
正規店舗は2019年2月、アウトレット店舗では8月から開始されたプログラムで、シェリダンの各店舗にはリサイクル回収ポイントが設置されています。
顧客が古くなったリネンやタオルなどを自由に持ち込める仕組みになっており、回収された繊維製品はシェリダンの提携工場に送られた後、リサイクル糸となって新しい製品の製造に再利用されるという流れです。
シェリダンが2024年までに回収した繊維製品は総計25,500kg以上で、廃棄物の埋め立てや処理時の汚染といった環境問題への負荷低減に役立っています。
尚、シェリダンリサイクルプログラムを行う顧客は次回の買い物時に5%オフになるという特典を受けられるため、顧客がより意欲的にエコな取り組みに参加できる点も特徴です。
リサイクルポリエステルを使ったファブリック
シェリダンでは、リサイクルされたペットボトルを使ったリサイクルポリエステルを自社製品のファブリックに採用しています。
リサイクルポリエステルは一般的なポリエステルの製造と比べるとエネルギー消費量が少なく、プラスチック廃棄物を再利用できる点もメリットです。
リサイクルポリエステルを使用した製品製造のプロセスは、以下のようになっています。
①選別
回収したペットボトルを選別、分別、殺菌、洗浄、乾燥し、製品製造に使用する上で適切な状態にします。
②粉砕
ペットボトルを小さな破片になるまで粉砕し、加熱して乾燥させた後に水分を除去します。
③ろ過
ペットボトルを溶かし、液体を染料プレートの小さな穴に通してろ過します。
④繊維の製造
長繊維糸を硬化し、エアローラーに送って巻き取りと引き伸ばし作業を行います。
⑤生地の製造
長繊維糸を生地に編み込んだり織ったりすることで、1つの生地を完成させます。
サスティナブルな木材パルプを使ったファブリック
シェリダンの製品の一部では、持続可能な方法で管理された森林の木材パルプを使用しています。
汎用性の高さや他の生地との相性の良さなども兼ね備えており、木材パルプを使用した製品製造のプロセスは以下のようになっています。
①森林での栽培
シェリダンが契約している持続可能な認定を受けた森林およびプランテーションで木の栽培が行われます。
②木材の処理
切った木材の樹皮を剥がし、チップ化して処理したらセルロースパルプを抽出します。
③パルプの製造
パルプを溶解し、必要な形状やサイズに変えていきます。
④繊維の製造
クローズドループ溶媒紡糸プロセスを使って、繊維を製造していきます。
製造にはリサイクル水が使用されており、生態系への影響が少ない方法での処理が特徴です。
⑤生地の製造
繊維をそのほかの生地や繊維と組み合わせて、製品を完成させます。
サスティナブルな木材パルプを使用しているのはもちろん、環境に優しい製造処理を取り入れている点もポイントです。
麻を使ったサスティナブルなファブリック
サスティナブルな繊維素材を意識しているシェリダンでは、持続可能性の高い原料として麻を採用しています。
麻は綿と比べると育成期間が短く、栽培で消費する水の量も少ないのが特徴です。
麻を頻繁に栽培・収穫してもすぐに再生するため、麻を原材料にしたサスティナブルなファブリックを製造しています。
麻を使用した製品製造のプロセスは、以下のようになっています。
①栽培と収穫
原料となる麻は、発育中の早い段階で収穫されます。
②レッティング
収穫した麻は、繊維を取り出す前に熟成させる必要があります。
茎の芯の部分と硬い表皮を分離させて、繊維の抽出を行います。
③生地の製造
櫛がけして紡ぎ、ファブリックを完成させます。
発育中の早い段階で収穫されることで、より高い持続可能性と水の削減に繋がっています。
尚、麻は耐久性、強度、通気性に優れており、他の繊維と混紡できるといった点からシェリダンでは多くの製品に麻を使っています。
綿糸の有効活用
繊維製品の製造過程では、綿糸が副産物として発生します。
以前は廃棄物として処理されていたものの、近年では綿糸をファブリックの一部として有効活用することで廃棄物の転用率アップを目指しています。
以下は、綿糸を使用した製品製造のプロセスです。
①綿糸の回収
シェリダンは自社及びサプライヤーにて、ほかの繊維製品の生産で余った綿糸を回収します。
②再利用と製造
回収した綿糸を編み込んだり織り込んだりすることで、1つの生地として加工します。
③仕上げ
完成した生地に刺繍、装飾、裾上げなどを追加すれば完了です。
Clean Up Australia Dayへの参加
オーストラリアでは、毎年3月の第1日曜日にClean Up Australia Day(クリーンアップ・オーストラリア・デー)と呼ばれるコミュニティベースの環境イベントを開催しています。
1990年にスタートした国内最大の環境イベントであり、これまでに1,900 万人以上の人々が参加して総計350,000個のゴミが除去されました。
シェリダンは2022年からClean Up Australia Dayに参加することで、ゴミ問題解決への直接的な貢献や市民への啓発を行っています。
プラスチックの梱包材と段ボールの削減
シェリダンではプラスチック製の梱包を廃止し、布製やリサイクルプラスチックといった再利用可能な素材の梱包に切り替えています。
プラスチック以外にもラベル紙などの不必要なパッケージを減らすことで、年間20トン以上のプラスチックの梱包材の除去に成功しています。
また、未使用の段ボールが自社で大量に廃棄されていたことを受けて、2020年には廃棄物マネジメントを経て18トン分の段ボールを工場や店舗から減らしました。
リサイクルラベルの採用
オーストラリアの一部の製品には、市民がパッケージを自宅で正しくリサイクルできるようにAustralasian Recycling Label(ARL)と呼ばれるラベル表示が付けられています。
ラベルの指示に従って処理することでリサイクル率を高められるというシステムで、環境保全意欲の高い企業の多くが自社製品にARLを採用しています。
シェリダンも正規店舗とアウトレット店舗で取り扱っている自社製品の98%にARLを付けており、自宅での誤った処理方法による廃棄物の増加を防いでいるのです。
まとめ
世界中で日常的に使われているタオルやリネンなどの繊維素材には、廃棄物や水の消費に関する環境問題がつきまといます。
シェリダンは環境負荷の低減に繋がるプログラムや製品の開発に力を入れており、地球と共存可能な繊維製品の販売を行っています。
私たちの生活から繊維製品を完全に除去することは困難でも、環境に優しい繊維製品を選ぶことはできるはずです。
次に新しいタオルやリネンを購入するときは、エコな製品を探してみてはいかがでしょう?