オーストラリア国内でも、特に温かい気候が魅力の都市・ブリスベン。
そんなブリスベンの市街地には、Queen St Mallと呼ばれる大型の商業施設が存在します。
環境に優しい取り組みを行うビジネスが多く集まっており、エコなエリアとして市民や観光客から支持されています。
今回は、そんなQueen St Mallで行われているエコ活動に着目してみましょう。
ファッションブランド、スキンケア、飲食店といった異なるテナントの取り組みをご紹介していくので、「海外の商業施設がどんなふうにSDGsと向き合っているのか知りたい」「エコ大国のサスティナブルな活動に興味がある」という方はぜひ参考にしてくださいね。
Queen St Mallとは?
Queen St Mall(クイーンストリートモール)は、クイーンズランド州ブリスベンの中心部に位置する屋外型商業エリアです。
複数のショッピングセンターのほか、アパレル、化粧品店、薬局、スポーツ用品店、靴屋、高級ブランド店、雑貨店、飲食店、クリニック、家電量販店など500以上の店舗が並んでいます。
Queen St Mallの周辺エリアは歩行者天国となっており、休日やクリスマスシーズンには多くの人々で賑わいを見せます。
季節ごとに異なるデコレーションが登場したり、定期的に演奏会やダンスショーなどが行われたり、Queen St Mallはエンタメ性の高い商業エリアとして知られるブリスベン随一の観光地です。
エコ意識が高いQueen St Mallのテナント
Queen St Mallが位置するブリスベンは 、オーストラリア国内でも生物多様性が高く、緑豊かな州都のひとつです。
20年以上にわたって持続可能性の高い都市として認知されていることから、ブリスベン市街地のQueen St Mallもエコ意識の強い商業エリアを目指しています。
テナントの中には、環境保全に繋がる取り組みを行っている企業やブランドが多く含まれます。
ここでは、Queen St Mallのテナントが具体的にどのようなエコ活動を行っているのか見ていきましょう。
Uptown
Uptownは、Queen St Mallの中でも主要なショッピングセンターのひとつです。
2023年に大手百貨店のMyer Centreが撤退したことを受けて、同年の8月よりUptownとして生まれ変わりました。
Uptownは6階建てで、ショッピングセンター内には多くのファッションブランドが入っています。
Uptownはファッションが環境に与える影響を懸念していることから、環境保全の一環として衣類の再利用に力を入れています。
ファッションは水質汚染に対する影響が2番目に大きい産業とされており、工業用水汚染の約 20%は繊維の処理と染色が原因です。
Tシャツ1 枚を作るのに約2,600ℓの水、ジーンズ1本では7,500ℓの水が必要で、大量の水の消費と汚染に繋がります。
そこで、Uptownでは廃棄された衣類の95%を再利用して、新たな衣類を製造しています。
また、状態の良い衣類は慈善団体に寄付するなど、本来は廃棄となるはずだった520万枚の衣類をリサイクルに回していきました。
衣類1枚あたり9か月間使用することで、炭素、水、廃棄物の影響が20~30%減少すると言われています。
Uptownは衣類の再利用を通して、ファッションをサスティナブルに楽しめる道を模索しているのです。
Tengdahl
1986年に創業したTengdahlは、文化遺産に登録されているブリスベンアーケード内に店舗を構えるブティック店です。
ブリスベンを中心にビジネス展開しており、高品質の生地を使用したファッション性の高いリゾートウェアなどが人気です。
Tengdahlでは、自社製品の生地にリサイクル可能なリネンとコットンを採用しています。
環境への優しさと質の良さを両立するために、サプライヤーの1つには高級繊維を取り扱うインドの企業を選定しました。
また、リネンの衣類を製造するにあたって、水の消費が必要不可欠です。
Tengdahlは水の消費を最小限に抑えるべく、サスティナブルな製造技術を持つトルコのサプライヤーと契約を結んでいます。
最大で50%の水を節約しながら衣類を生産できることから、製造過程でのエコ意識の高さが評価されています。
Gorman
Queen St Mallの大型ショッピングセンター・Queens Plazaに店舗を構えるGormanは、1999年にファッションデザイナーが立ち上げたアパレルブランドです。
店内にさまざまなインテリアを設置しているGormanですが、大気汚染対策の強化に繋がる低VOC塗料の家具類を選んでいます。
リサイクルショップから購入したビンテージの家具類も多く採用しており、廃棄物の削減や木材の不必要な伐採を防ぐことにも貢献しています。
また、Gormanで取り扱う衣類は、オーガニックコットンなどのエコ素材が中心です。
店舗内で不必要な廃棄物を生み出さないために、最小限の梱包材の使用を徹底するといった取り組みにも力を入れています。
さらに、サプライヤーのエコ意識向上を目的に、廃棄物の取り扱い、有害化学物質の排除、二酸化炭素排出量の測定と削減に関する指導も行っています。
Viktoria & Woods
Queens Plazaに店舗を構える Viktoria & Woodsは、スローファッションを理念に掲げているブランドとして
2004年に設立されました。
耐久性が不十分ではサスティナブルなファッションを作れないと考えており、高級素材と精巧な縫製にこだわっています。
また、コンポスト化に対応している天然繊維やリサイクル由来の素材も多く、廃棄物削減に大きく貢献しています。
特に注目を集めているのが水着で、使われている糸や繊維は自然分解可能な素材です。
紫外線、塩素、日焼け止めに対する耐性も非常に高く、長期的に着られるというメリットがあります。
また、輸送時に発生する二酸化炭素の排出量を懸念して、Viktoria & Woodsは海外生産から国内生産への切り替えを行いました。
オーストラリアでの生産数を以前よりも50%増加しており、積極的に地球温暖化防止に取り組む企業として知られています。
KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)
2022年9月、Queen St MallにサスティナブルなKFCが登場しました。
店内の電力は100%再生可能エネルギーで賄われており、二酸化炭素の排出量削減を実現しています。
また、リサイクルガラスの作業台や、80%がリサイクル素材の金属ラミネートなど、店内の至る所にエコな素材を採用しているのも特徴です。
ほかにも、食品ロスを減らすべく、地元の非営利団体・ウェスリーミッションクイーンズランドと提携を結んでいます。
店舗内で余った食品を地域住民に届けるシステムが構築されており、ファストフードで生まれがちな食品ロスの大幅な削減に繋がっています。
The Body Shop
Queen St Mallの一角には、イギリス生まれのThe Body Shopも店舗を構えています。
日本でもおなじみのスキンケアブランドですが、2023年に環境保全に特化したコンセプトストアをオープンしました。
「チェンジメーカーズ・ワークショップ」をコンセプトに掲げるQueen St Mallの店舗では、店内設計に再利用の木材を使っています。
また、詰め替えステーションが設けられており、シャワージェル、シャンプー、コンディショナー、ハンドウォッシュなどを顧客自身が300mlのアルミニウム容器に詰められます。
リサイクル可能なプラスチックをはじめとする持続可能な備品を置いているのもポイントで、プラスチックごみ、廃棄物の削減、森林伐採防止などに繋がる多方面からのエコ活動を行っている店舗です。
まとめ
Queen St Mallは、生物多様性や持続可能性の高さを兼ね備えているブリスベン市内で人気の観光地です。
単なるショッピングやエンタメの場としてだけでなく、環境に優しいビジネス運営を行っている点が特徴です。
水質汚染、大気汚染、廃棄物、地球温暖化、森林伐採、水の消費など、わたしたち人間の活動はさまざまな環境問題に繋がっています。
Queen St Mallはエコなテナントを多く集めることで、サスティナブルなビジネスと観光地としての魅力の両方を実現しています。
多方面における環境問題解決を目指すためにも、エコを意識する商業施設を増やしていくことが大切ですね。