#17の目標

SDGs11「住み続けられるまちづくりを」日本や世界の取り組み事例を紹介!

SDGs11「住み続けられるまちづくりを」とは、スラム街や大気汚染に悩まされる人をなくし、すべての人が安全な住まいにすめることを目指しています。

あまり馴染みがないようにも感じますが、日本も無関係ではありません。
SDGs13の現状が気になる方はこちらの記事をチェックです!

ここでは、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」に取り組む日本や世界の企業の取り組み紹介します。

目次

住み続けられるまちづくりの実現に向けた自治体の取り組み事例|福島県郡山市

まずはSDGs11「住み続けられるまちづくり」の実現に向けて取り組みを進める福島県郡山市を紹介します。

SDGs未来都市である郡山市のテーマは健康

SDGs未来都市は「積極的にSDGsの達成に取り組む自治体」を内閣府地方創生推進室が選定し、全国の自治体のモデルケースとなるようフォローしていく制度です。特に先導的な取り組みを見せる自治体は「自治体SDGsモデル事業」に選定され、補助金も交付されています。

毎年30程度の自治体が選ばれています。

ここで紹介する福島県郡山市は、2019年に自治体SDGsモデル事業に選定されました。

「健康」をキーワードにして経済・社会・環境において、住み続けられるまちづくりに向けた取り組みを展開しています。

郡山市
出典:郡山市

SDGs未来都市は、日本全体の経済や環境のよい循環を高めながら世界にも発信することで、地球規模でSDGsの達成を推進しています。

参考:内閣府地方創生推進室公式サイト 

郡山市にインタビューも実施しています。ぜひご覧ください。

▶︎関連記事:「福島県郡山市 |ステークホルダーとの連携で”健康”を目指す。郡山市の強みを活かした持続可能なまちづくり

SDGs11達成のための日本企業/団体の取り組み事例

ここではSDGs11への取り組みをする日本の企業や団体の取り組みを紹介します。

事例①トミィミューズリー

岐阜県飛騨高山市にお店を構えるトミィミューズリーは、日本在住歴30年のスイス人のオーナーが手がける自然素材をたっぷりと使ったミューズリー専門カフェです。

トミィミューズリーが貢献するSDGs

トミィミューズリーの存在は目標11の下記のターゲットに貢献しています。

11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

トミィミューズリーは新しく農地開拓をし地元の食材を使うことで地域に貢献しており、観光客のみならず地元のファンも訪れるお店になっています。

過疎化対策、休耕地の再利用

トミィミューズリーの目標は、飛騨高山が元気になること。

飛騨では農地の過疎化、休耕地が増えています。

そこでトミィミューズリーは地域活性化のために休耕地を自然栽培の農地として利用し、農薬なしのオーツ麦の収穫に成功。いずれはミューズリーを飛騨の特産品にしたいと願って事業を展開しています。

市を挙げて掲げる未来の設計図

現在、高山市には「人・農地プラン」があり、耕作放棄地対策として地域の農地を誰に任せるか、担い手をどう確保するかを話し合う未来の設計図をつくっています。

オーナーの想いに触れる

実際、筆者もトミィミューズリーファンのひとり。以前実際にお店に訪れてミューズリーと地元食材をふんだんに使ったカレーライスを注文。その美味しさに感動し、また必ず来ますと伝えました。

定期的に通いたい、応援したい、訪れる人々をそんな気持ちにさせてくれるのは、やはり地域を愛するオーナーの姿勢があるからでしょう。

事例②熊野古道

熊野古道は和歌山県にある、2004年に世界遺産に登録された、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へ通じる参道です。

巡礼地としても古くから愛され、平安時代の貴族らも足を運んだとされる、歴史ある場所です。

8年間で観光客が40倍以上になったマーケティング

そんな世界遺産の熊野古道ですが、2011年時点でこの近辺(田辺市)での外国人宿泊者が年間1,217人と低迷。そこで独自のコンテンツマーケティングを行なった結果、2019年の外国人宿泊者数は年間50,926人まで増加し、ファン獲得に成功したのです。

マーケットの最終目標は、熊野古道を心から愛してくれる人に訪れてもらうこと、つまり根強いファンをつくることです。

そこでポイントとなった方法を紹介すると、

  • 来て欲しい人のターゲット選定
  • 環境、インフラ整備
  • 価値の高いコンテンツ

上記を手段にしアクションを起こした結果、近隣都市に旅行に来た観光客が熊野古道を旅程に組み込む人が増えました。

田辺市熊野ツーリズムビューローが貢献するSDGs

熊野古道戦略は目標11の次のターゲットに貢献しています。

11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。

世界遺産の熊野古道の最終目標が、なぜ本物のファンを作ることだったのかに注目してみましょう!

環境保護を考える世界遺産

実は世界遺産に登録されたことをきっかけに観光ツアーの立ち寄り地としてツアー客が訪れ、その滞在時間は30分程度と短い時間で散策するものが多かったのです。

熊野古道を訪れた方や、こうした場所を巡礼をされている方なら分かるのですが、こうした場所は急いでまわる場所ではなくじっくり時間をかけてはじめて魅力を知る場所です。

かくいう筆者も熊野古道には毎年訪れ、半日ほどかけてようやく1つのコースをまわっています。平坦な道ばかりでなく木の根を避けながら歩く場所もあるため、それなりの服装と靴が必要です。

しかしツアーの一部で立ち寄り30分となると、そうした山歩きの装備をせずに訪れる人も多く、道が荒らされてしまったこともあったようです。

そうした理由から、熊野の魅力を知ってもらうには本物のファンの獲得を目指し、環境保全の強化を徹底する、と掲げたのです。

マーケティング要素と強い想いの相乗効果

世界遺産を保護する、保っていくための努力を強化する、というのは単純にマーケティング要素を強化するだけではなく、熊野古道の事例のように心から存続させたいという強い想いがファンに届いたのです。

事例③ロカキャリ

「人生、このままでいいのか」

そう自問自答する人も少なくないのではないでしょうか。

新潟県魚沼湯沢で就職、転職・移住サポート事業を展開するのは、きら星会社のロカキャリです。

ロカキャリで得られること

ロカキャリのサービスを受けることで得られるものは主に3つ

  • 魚沼湯沢の暮らしの情報
  • 移住後の仕事情報、サポート
  • 最短1日からお試し移住ができる

ロカキャリが貢献するSDGs

移住という形を通してその街の魅力に触れ、持続可能なまちづくりに参加する。

ロカキャリの取り組みは目標11の下記のターゲットに貢献しています。

11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。

実際に移住を決めた人の声:移住しながら育児とリモートワークを両立

では実際にロカキャリを利用して移住し、就職した方の声を聞いてみましょう!

東京で暮らしていた2人のお子さまの育児中のご一家が、ロカキャリを利用して移住体験をはじめました。

移住する前にネックだったのが仕事。ロカキャリのサポートを受け、お母さんは月に数回の新幹線通勤、お父さんは魚沼湯沢で再就職を叶えたのです。

ご一家はこれまで培ってきた経験を活かして、移住先で何か貢献できることがないかを模索しているといいます。

移住がもたらすメリット

地域を活性化させるのはその地域でずっと暮らしている人に加え、移住というスタイルで貢献できるということがわかります。

ロカキャリの活動は、ひとりひとりに備わった経験値や個性を活かしてその力を発揮させるサポート的存在なのです。

事例④ソヤ畦畑

ソヤ畦畑(うねはた)は、岐阜県の最北の地、飛騨市古川町にあり、映画「君の名は。」のモデル地にもなり多くの観光客が巡礼地として訪れます。

この古川の地で無農薬無肥料、除草剤を使わない自然農法で野菜を育て、販売しているのがソヤ畦畑です。ソヤ畦畑では夏から初秋にかけて50種類ほどの野菜や豆を育て収穫しています。

ソヤ畦畑がSDGsに貢献すること

ソヤ畦畑が貢献するのは下記のターゲットです。

11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。

大気の質やゴミ処理、環境負荷と自然農法がどんな関係があるの?」と感じられた方もいらっしゃるでしょう。

実は従来の慣行栽培などで使用される農薬や化学肥料、除草剤は土壌劣化や気候変動を引き起こすひとつの原因となっているのです。

農薬、化学肥料と温暖化、そして大気汚染

散布された農薬や化学肥料、除草剤は土壌に染み込み河川を辿りやがて海へ流れ着きます。

そうした汚染物質を海のプランクトンが食べて大量発生し、その呼吸で水温が一気に上昇し気候変動へ導くケースが見られます。

ほかにも、農薬や化学肥料の撒かれた農地から発生する亜酸化窒素ガスがオゾン層を破壊することもわかっています。

自然農法の農家を応援することが土地の劣化を防ぐ

無農薬、無肥料、除草剤不使用の野菜づくりは決して簡単ではありません。

だからこそ、

  • そうした農家で作られた野菜を買うこと
  • 応援すること
  • 身近な人に紹介すること

が私たちができるアクションなのです。

生まれ育った故郷への恩返し

ソヤ畦畑のオーナーご夫妻の今後の目標は、畦畑オリジナルの野菜をつくること。

2014年に一念発起して臨んだ自然農法の農家という仕事は、オーナーの生まれ育った土地への恩返しと、力強い野菜のいのちを未来につなぐ持続可能な取り組みです。

みなさまも、自然農法で農作物を育て販売されている農家さんをお住まいの地域で検索してみて、直売所があれば実際に訪れてみるのもいいですし、オンラインストアがあれば利用してみるのもいいでしょう!

住み続けたいと思えるまちづくりは、自らのアクションで変わります。地元農家さんの魅力に触れてみませんか?

※野菜販売は毎年7月から11月頃

事例⑤三河里旅

三河里旅は、愛知県豊田市の山間部、旧小原村を拠点に、旅行雑誌に掲載されていない、地元の人しか知らないようなディープな場所をツアーとして提案する事業です。

三河里旅の概要

三河里旅を通して得られるのは大きく2つ

  • 地域密着型のローカルツアーでその土地の文化や人に触れることができ貴重な体験となる
  • 地域の人にとっても「こんなところあったんだ!」という気づきにつながり、地域づくりに活かせる

三河里旅でツアーで関わる人たちは、

  • 地域に詳しい個性豊かなプレミアムガイド(漆芸家、とよた森林学校主任講師、カフェオーナーなど)
  • ガイドをサポートする地域のスタッフ

三河里旅のローカルツアーで企画されるものは、

  • 伝統工芸や文化・アートなどの体験
  • 郷土料理、ジビエ、地酒などの食事
  • 旅館、民宿、キャンプなどの宿泊
  • お土産、工芸品などの物販

などです。

三河里旅が貢献するSDGs

三河里旅は目標11において下記のターゲットに貢献しています。

11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

ツアーに関わるガイドやスタッフは地元豊田(三河)で生まれ育った方や三河地区で働いている方です。拠点豊田市は、都市部も山村部も両方兼ね備えた地区。その中で山間部を開拓の可能性のある場所とし、事業として起業をする人が増えています。

これまで企画された里山ツアー

これまで開催された里山ツアーは、

  • 自然観察ツアー(2021年4月開催)
  • 和紙工芸作家と巡る蒔絵体験ツアー(2021年7月開催)

など。

また2021年9月には、ジビエバーベキュー付きの狩猟の世界を巡るツアーが企画されています。

今後も地元ガイドとスタッフが試行錯誤し、里山の魅力満載のツアーが企画される予定です。

行ってみたい!気になる!事業として始めるヒントを得たい!という方はぜひ「三河里旅」を検索してみてはいかがでしょうか!

住み続けられるまちづくりの実現に向けた世界の企業/団体の取り組み事例

都市の人口増加から起こるさまざまな問題への解決策として、世界の企業や団体では国際規模でたくさんの取り組みが行われています。

3Dプリンターを使って建てる低コスト住宅(アメリカ・ICON社&NPO法人)

安全で安心な家に住めない人は世界に10億人いるとされています。

アメリカのICON社は、貧困にさらされる人のために住宅建築を行うNPO法人(NEW STORY)とタッグを組み「3Dプリンターで建てる住宅」を実現させました。

住むのに十二分な広さ・設備・センスをもつ一軒家が、予算4,000ドル(約42万円)の低コストかつ24時間という驚異的な速さで作れてしまうそう。

建築用3Dプリンター「Vulcan」は、入手しやすい砂・セメント・水を混ぜて作るので、電力や水道のインフラが整っていない地域に適しているのです。

建築用3Dプリンター「Vulcan」のメリット
  • 建築費用が通常の半分以下。
  • 断熱効果が高いので、夏は涼しく冬は温かい。
  • 建築過程での廃棄物はほとんどゼロ。
  • デザインも臨機応変に変えられる。
  • コンクリートやレンガ製と同じ、またはそれ以上の耐久性。
  • 傷がついても修復が簡単なので長持ちする。

実際にメキシコに多くの家が実際に作られ、家を必要としていた人々が住み、彼らの人生は大きく変わりました。

NPO法人NEW STORYが作成した動画によると、家のデザインは住む人のアイデアを取り入れたり、多くの家族が1日3ドル以下で暮らしているそうです。

貧困に苦しむ世界中の人々の明るい未来を感じられる快挙と言えます。

スラムの改善(国連・ハビタット)

住居をはじめ、都市化から起こるさまざまな問題の解決を目指す団体が、国際NGOのハビタットです。

かつてのカンボジアのある都市では、戦争の影響もあり2,000世帯以上がスラム街や非公式の家に住み、電気や水道のない生活はもちろん災害被害や政府からの立ち退き命令におびやかされていました。

ハビタットは、当時カンボジアになかった「土地の所有権を提供する法律の仲介者」となって、貧困の解決に取り組んだのです。(10年住み続ければ、正式に土地が与えられて所有権を得る。)

10年間で156世帯がハビタットの支援を受けながら、新居を手に入れました。

150kgまで運べる電動貨物トレーラーで排気ガスの削減を目指す(ドイツ・NÜWIEL)

ドイツのスタートアップ企業であるNÜWIEL「自転車とつなげて運べる電動貨物トレーラー」を開発しました。

150kgまで運べる電動貨物トレーラーで排気ガスの削減を目指す(ドイツ・NÜWIEL)
出典:NÜWIEL

ヨーロッパでは都市部の排気ガスの約35%が「配送車」から出されており、EU連合は「2030年までにCO2の排出ゼロ」を掲げています。

「持続可能な配送」の面から、環境の負荷を低くしながら大気汚染や騒音問題の解決策として作られ、郵便や小包の配送業者だけでなく、小売、工場、一般市民からも使われています。

電気貨物トレーラーの特徴
  • 電動自転車や運搬用自転車など、ほとんどの自転車と簡単につなげられる
  • つなげなくとも、独立した電動の台車としても使える
  • 最大150キログラムの物を運べる
  • フル充電で60キロメートルまで運べる
  • 独自のセンサー技術で、自動的に発進したり減速したり止まったりするので、使う人の労力がいらない

提携先はドイツ国内外に及び、国内のIKEAや大手スーパー、国外ではアメリカの運搬会社、ベルギー郵政などでも導入されているそうです。

参考
TECHABLE 
NÜWIEL

衛星データによって洪水被害を予防する(宇宙航空研究開発機構:JAXA)

世界規模で川の情報共有をするのは難しく、警報が届かぬうちに洪水の被害がでしまう国は多くあります。

例えば、低地でインフラが整っていないバングラデシュは洪水被害が多い国で有名です。

雨期にはガンジス川を含む3大河川の水位が同じタイミングで上がると、大洪水が起こり甚大な被害を引き起こします。

特に、森林破壊が目立つ上流地域からの洪水は危険です。土砂崩れと並行して洪水が共に起きやすく、その数日後、下流地域へも洪水が到達する二次被害となるのです。

そこで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「衛星データと地上データ」を使って、洪水が到達する数日前に洪水を予測し、バングラデシュの人々へ警報や避難を直接呼びかけています。

衛星データと地上データ
出典:JST

ガンジス川などの国境をまたぐ国際河川は情報シェアが難しいとされているので、衛星からのデータが役に立っているわけです。

バングラデシュの場合は、上流で起きた洪水が下流の農村部にたどり着くまで数日かかるので、被害を受ける前に農作物の収穫などの防災ができるようになりました。

参考
GLOVAL NEWS VIEW 
JST 衛星全球降水マップ:洪水災害対策 

まとめ

この記事ではSDGs13「住み続けられるまちづくりを」に取り組む日本や世界の企業や団体の取り組みを紹介しました。

SDGs13達成のために私たちにできることもあります。

自分には関係ないことだとは考えず、「自分ごと」として捉えできることを重ねて、SDGs13を達成しましょう。