資生堂は1872年に創業して以来、環境と社会、人権尊重を重視した「サステナブルな価値創造」という使命のもと事業活動を進めてきました。2030年に向けて「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指し、事業活動を通じた地球環境に対するアクションを加速させています
本記事では、「ビューティーイノベーション」でよりよい世界を目指す資生堂のビジョンや事業内容、SDGsへの取り組みをご紹介します。
目次
資生堂のビジョン・事業内容
企業名 | 資生堂 |
SDGs | 1.2.5.7.8.9.10.12.13.14 |
サステナビリティレポート |
ビジョン
資生堂は、100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業となるため、新しい企業理念として「THE SHISEIDO PHILOSOPHY」を策定しました。「『美と健康』を通じてお客さまの役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指し、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」を打ち出しました。美には人の心を豊かにし、生きる喜びや幸せをもたらす力があると信じる資生堂は、世界で勝てる日本発のグローバルカンパニーへと歩を進めます。
「美を通じて、人々が幸せになる社会を実現したい」という情熱のもと、力を注ぐ化粧品事業。資生堂は、デパートなどでカウンセリングを通して販売する高価格帯のブランドから、ドラッグストアを中心に多くの世代の美を叶える、幅広いブランドを展開しています。その中でもプレステージ領域、いわゆる「デパコス」部門を強化する方針で、Clé de Peau BeautéをはじめNARSやIPSAなどの成長を図ります。
資生堂が考える美は、肌表面に見える部分だけでなく、身体全体の健やかさや生き方などを踏まえたホリスティックなものと捉えています。1902年(明治35年)に創業した資生堂パーラーをはじめ、レストラン事業やフーズ事業を展開しながら、企業資産や文化の活用を進めています。
1956年に開業した資生堂美容室は、全国の主要都市に展開しており、「ヘア」「エステティック」「ブライダル」の3つの部門でトータルビューティーをサポートしています。その人ならではの輝きを発見し、磨いていく場として、地域社会の発展と美しい生活文化の創造に努めています。
美容分野の人材育成を目的として、資生堂の美容人材や美容法などの資産を生かし、プロ向けのヘアメイクアップ育成専門学校の運営、サポートをしています。
事業所内保育所の運営サポートや独自の保育プログラムを開発し、共働き世帯の増加に伴う悩みや希望に寄り添うサービス「KODOMOLOGY」は、変わりゆく社会の中で、子どもと大人の両方がのびのびと健やかに成長することを願い、子どもたちのつくる美しい未来のための価値を提供しています。
資生堂のSGDsの取り組み|~美の力でよりよい世界をつくる~
資生堂が重点的に取り組んでいるSDGsへの貢献目標は、「環境」と「社会」問題に関してです。
環境
「美を心から楽しめる、豊かな地球環境へ」が、資生堂が掲げた環境問題に対する課題解決のスローガンです。異常気象など気候変動の影響が年々深刻さを増す中、資生堂が策定した取り組みは以下の通りです。
環境問題対策①地球環境の負荷軽減
CO2排出量の削減
2026年までにカーボンニュートラルを実現し、バリューチェーン全体を通じて科学的な根拠に基づいたCO2削減目標を設定することを明言しました。
再生可能エネルギーの利用
従来の化石燃料から、太陽光や水力などの再生可能エネルギーへの切り替えは気候変動の緩和に向けた大きな取り組みの一つです。
資生堂は、自社工場をはじめオフィスや事業所でも再生可能エネルギーの利用を推進しており、那須工場では、電力の100%を再生可能エネルギーへとシフトしています。
さらに、世界各国・地域の工場や研究所の敷地内・建物に太陽光パネルの設置を進め、環境に配慮した発電をしています。
今後は、資生堂の事業活動をすべて再生可能エネルギーにすることを目指しています。
エネルギー効率の向上
上記の再生可能エネルギーの推進と並行して、建物や設備の電気使用にかかるエネルギー率の向上も急務の課題です。
資生堂の工場では、照明をLEDに替えたことに加え、EMS(エネルギーマネジメントシステム)※を導入したことで電気使用量の削減へとつなげています。
※EMS(エネルギーマネジメントシステム)とは、情報通信技術を用いてエネルギーの使用状況を可視化することで、省エネルギーおよび負荷平準化など、エネルギーの効率的な利用を実現するシステムのこと
参考:環境負荷の低減
また、資生堂は、最新設備や環境負荷の軽減設備への投資や改善計画策定と実行を積極的に進めています。大阪にある茨木工場と西日本物流センターでは、建物の外壁に断熱性能に優れたパネルを採用したことで、建物内の断熱性能を向上。CO2発生量を約30%削減することができました。
輸送時のCO₂排出量削減
資生堂は、輸送におけるCO2排出量を削減するため、輸送ルートや輸送効率の改善を図っています。他企業との共同配送に加え、日米間の海上貨物については、コンテナの利用率を上げることで、運用コンテナ数と出荷回数の削減に取り組んでいます。
環境問題対策②サステナブルな製品の開発
資生堂は、独自の商品開発ポリシー「Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース)」の「資生堂5Rs」を打ち出し、環境負荷が少ない原材料調達や処方開発などを推進しています。
容器包装
2025年までに100%サステナブル容器を実現するため、容器の軽量化や、「つめかえ・つけかえ」容器、リサイクル可能な素材容器の展開、生分解性樹脂の利用などに取り組んでいます。
リデュース/リユース
「資生堂5Rs」のポリシーに沿って、製品に応じた容器サイズの適正化や容器の軽量化、「つめかえ・つけかえ」容器によるプラスチック使用量の削減を目指しています。
資生堂の主要ブランドである「SHISEIDO」や「Clé de Peau Beauté」、「エリクシール」などのスキンケア容器では、リサイクルが簡単な設計なだけでなく、ふたやケースを簡単に分解でき、「つめかえ・つけかえ」を簡単にする工夫などを両立させた対応を進めています。
店頭回収リサイクルの取り組み
サーキュラーエコノミーへの転換が求められる中、生産製品の販売はもちろん、使用後や廃棄に伴うリサイクルへの取り組みも実施しています。具体的には、他企業と連携して、店頭に回収ボックスを設置するなどして、資源を再活用しています。
リプレース
資生堂は、プラスチックゴミ問題への対策として、ケースや外袋へは生分解可能な素材を使用したり、CO₂排出量の少ないバイオマス由来素材を利用したりしています。
環境問題対策③サステナブルで責任ある調達の推進
資生堂は、サプライチェーンにおけるサステナブルな原材料調達に責任もって取り組むことも重要だと考えています。サプライヤーと協働して人権侵害などの課題にも取り組みます。
サステナブルな原材料の調達
製品の原材料を生産する地域では、環境破壊や労働環境などが問題になっているケースがあります。
<パーム油>
特にパーム油は、食品から化粧品まであらゆる製品に使用されるほど汎用性が高い半面、生物多様性への影響や人権侵害の問題も大きくなっています。
資生堂は、2010年にRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟し、2018年からはパーム油由来原料の100%に相当するRSPOクレジット購入を開始しました。さらに、2026年までに100%サステナブルなパーム油の調達を達成するという中長期的な目標を発表しました。あわせて、資生堂の全工場におけるRSPOサプライチェーン認証の取得も進めているところです。
<紙>
資生堂は、化粧品の容器包装へのシングルユースプラスチック使用をできるだけ削減しようと、化粧品の外箱などの2次包装の紙化を積極的に推進しています。
2023年までに、製品の容器包装に使用される紙を、すべてサステナブルな紙にシフトするという目標を明示しています。さらに、販促物やオフィスのコピー用紙についても順次切り替えていく方針です。
<マイカ>
マイカは、美しい光反射や耐熱性から、化粧品や自動車、電気製品など幅広い製品で使用される一方、児童労働や強制労働が問題にもなっています。インド東部では2万人以上の児童が危険なマイカの採掘に違法労働させられており、さらにマイカは人権侵害などを引き起こしている武装勢力の資金源になっているとも懸念されています。
資生堂は、2017年にRMI (Responsible Mica Initiative)に加盟しました。 RMIは、マイカ生産国の採掘現場から児童労働や強制労働を撲滅し、サステナブルで責任あるマイカ生産の確立を目標に掲げています。マイカの自社での調達方針を明確にし、生産地でのサポート体制の構築などを通じて、生産地域の問題解決に向けた取り組みを強化しています。
社会
資生堂は、「美で勇気づけ、違いを認め合い、尊重し合う社会へ」をスローガンに掲げ、従来のステレオタイプな価値観・偏見・差別のある社会を変革しようとしています。多様な美の価値観の啓発やジェンダー平等のための教育支援などの積極的な取り組みをご紹介します。
資生堂は、SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に通じる、女性を取り巻く社会課題の解決を大きな使命だと考えています。
誰もが自分の力を自由に発揮できる社会を重要視し、1990年代から女性のライフイベントへの支援を実践し続けた結果、2000年頃にはほぼ100%の女性社員が育児休業から復職するなど、先進的な取り組みを進めてきました。資生堂は国際機関、民間企業、地方自治体、関係団体などと連携し、一人ひとりが自分らしく生きられる平等社会の実現に貢献していきます。
資生堂は、誰もが持つ「自分らしくありたい」という願いを化粧品の力で支援します。
化粧品には人の心を癒し、自分らしく前向きにする力があると資生堂は信じています。がん治療による外見の変化を化粧品の力で支える活動「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」では、資生堂の経営資源を社会課題に対して新たな提案をしていることが評価され、メセナアワード※優秀賞を受賞しました。
そのほか、「資生堂化粧療法プログラム」に基づき健康寿命の延伸を目的としたセミナーを開催したり、アジアを中心とした海外にも知見や研究結果を共有したりすることで、すべての人が自分らしく生きられる豊かな社会を構築しようと考えています。
※メセナアワード…企業によるメセナの充実と社会からの関心を高めることを目的に、1991年「メセナ大賞」(2004年より「メセナ アワード」に改称)を創設しました。前年度に実施されたメセナ(芸術文化振興による豊かな社会創造)活動を自薦・他薦で毎春公募し、有識者による選考の上、特に優れた活動7件を表彰します
引用:メセナアワード
資生堂のすべての事業活動は人権尊重の上にあります。これまでも、資生堂はさまざまな国や地域で構成されるグローバルサプライチェーンにおける人権尊重に取り組んできました。
強制労働や児童労働、多様な価値観に起因するハラスメントなどに対し、高い倫理観を持ち、資生堂で働く一人ひとりがとるべき行動を「資生堂倫理行動基準」としてまとめています。
まとめ
人々の幸せを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の発見と創造によって時代の美を彩る資生堂。美の力で健やかな社会と地球を実現するための姿勢は、創業から現在に至るまで、ブランド全体に生き続けています。資生堂はこれからも、世界をよりよくするための美のイノベーションを起こし続けていきます。
参考:資生堂公式サイト