グリーンツーリズムとは|国際観光学を学んだライターが説明します

近年、自然を満喫し都会での生活とは異なる非日常を楽しむ旅行の形として、グリーンツーリズムが注目を集めています。

グリーンツーリズムは、

「自然を満喫できる旅がしたい!」

「都会の生活に疲れてしまった…。」

と感じるときに最適です。

今回の記事では、グリーンツーリズムに興味のある旅行者や、今後導入を検討している担当者様に参考になるように、

  • グリーンツーリズムの定義とメリット
  • グリーンツーリズムに成功した事例
  • グリーンツーリズムのデメリット

を、オーストラリアの大学で国際観光学を学んだ筆者が紹介します。

記事の後半には、筆者の体験や今後実践できる旅先の選び方も説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)

目次

グリーンツーリズムとは

「グリーンツーリズム」は元々、長期休暇を使い、農村でバカンスを過ごす人が多い欧州で生まれた旅行の形態です。日本国内では、1994年に「農山漁村余暇法」が制定されたことにより、グリーンツーリズムが注目されるようになりました。

グリーンツーリズムの定義

国によって異なりますが、日本においてのグリーンツーリズムは、農林水産省によって下のように定義されています。

”緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動”

農林水産省

つまり、ただ田舎に滞在するだけでなく、その地方に残る緑豊かな自然や、その地域ならではの文化や美味しい食材を楽しむ活動がグリーンツーリズムと言えます。また、滞在型の余暇活動言っても必ずしも宿泊を伴うわけではなく、日帰り型と宿泊型があります。

グリーンツーリズムの一例には、

  • 地方の農家に滞在する「ファームステイ」
  • 星空観察や郷土料理づくり体験
  • 釣り船にのって漁業を体験

などが挙げられます。

ここまで読むと、「サステナブルツーリズム」や「スローツーリズム」といった旅行形態と何が違うのか疑問に思う人もいると思います。そこで次の章では、それぞれの言葉の定義の違いを見ていきましょう。

前提として「サステナブルツーリズム」が大きな定義

まずは前提として、ツーリズム全体の考え方を見ていきましょう。図が示すように、サステナブルツーリズムは最も大きな考え方であり、スローツーリズムやアグリツーリズムはその一部とされています。

そのため、サステナブルツーリズムは世界的に共通の考え方ですが、他のそれぞれのツーリズムは国によって若干定義が異ります。

1つずつ見ていきましょう。

サスティナブルツーリズムとの違い

サスティナブルツーリズムは直訳すると、「持続可能な観光」という意味です。UNWTO(国連世界観光機関)はサステナブルツーリズムを、

“訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光”

UNWTO(国連世界観光機関)

と定義しています。

つまり、サステナブルツーリズムとは、地域の自然環境を守りながら、観光を通して社会文化経済に良い影響をもたらし、持続可能な観光業を目指すという考え方です。また、サステナブルツーリズムは田舎から都会まで幅広い観光地域が対象で、農山漁村地域に限られるグリーンツーリズムとは異なる概念です。

スローツーリズムとの違い

スローツーリズムは、これからの観光のあり方として期待される形態のひとつで、国ごとに定義が異なるケースが見られます。ここでは日本の定義として、国土交通省が掲げるものを確認しましょう。

”新しい観光のニーズに応えながら、地域の自然と文化と生活を守り、地域経済の活性化に資する観光の形態”

国土交通省

”新しい観光のニーズ”とは、今まで主流だったできるだけ多くの場所を訪れ、多くの物を見る「ファストツーリズム」に対し、ゆったりと回遊する旅行を求める旅行者のことです。その地域の自然や文化に注目する点ではグリーンツーリズムと似ていますが、スローツーリズムは農村や漁村に限定されません。

アグリツーリズムとの違い

アグリツーリズムとは、アグリカルチャー(農業)とツーリズム(観光)との造語で、旅行者が農場や農村で休暇を過ごすことを指します。グリーンツーリズムとほぼ同様の意味ですが、グリーンツーリズムには漁村など海辺で休暇を取る活動が含まれているのに対し、アグリツーリズムは基本的に農山地域での休暇を指します。

ブルーツーリズムとの違い

ブルーツーリズムは、漁村や島などに滞在し、休暇を取る活動のことです。国土交通省・水産省はブルーツーリズムを「漁村滞在型余暇活動」と定義しています。

グリーンツーリズムが漁村の他に農村などを含む一方で、ブルーツーリズムは海辺の資源を活用した観光に特化しています。自然景観や文化資源を活用することで、漁村地域の活性化も目指しているのです。

グリーンツーリズムのメリット

さまざまな旅行形態が分かったところで、グリーンツーリズムのメリットを観光客地域経済の、それぞれの視点から見ていきましょう。

①観光客へのメリット

グリーンツーリズムでは、普段の生活で体験できない豊かな自然や伝統文化に触れることができます。特に都市部に住む旅行者は、自然の中でゆったりとした時間を過ごすことで、やすらぎや新しい視点を得る絶好の機会となるでしょう。

また、グリーンツーリズムは外国人旅行者が日本固有の土地柄や歴史に触れる機会にもなります。日本政府観光局によると、アメリカやフランスから訪れる訪日観光客は、都会での買い物よりも日本の美しい文化や歴史を理解できるような体験を求めています。

農家や漁家の生活を体験できるグリーンツーリズムは、そのような観光客が求める理想的な旅行形態となるでしょう。

②地域経済へのメリット

農村地帯や漁村は、普段ならば観光客の勧誘が難しく、収入も1つの産業に偏りがちです。グリーンツーリズムが発展し、都市部から農村地帯や漁村に旅行者が訪れることで、副収入が生まれ、地域経済を活発化させることができます。

また、経済が発展すると、おのずと雇用の創出にも繋がります。雇用機会が少なく少子高齢化が深刻な農村地帯では、少しでも多くの雇用を生み出し若者の都会への流出を抑えることが求められます。そこで、宿泊施設の管理やお土産屋のスタッフなどの雇用が生まれれば、地域の賑わいにもつながる可能性を秘めているのです。

また、グリーンツーリズムは自然環境があってこその観光の在り方なので、都会では不便とされる交通の便の悪さも、旅行者にはゆったりと景色を眺める機会になったりと、体験の一部になります。

流行りのカフェや高速電車は必要なく、新たな建物などを開発せずに、ありのままの姿で観光客を呼び寄せられるのも大きなメリットです。

世界のグリーンツーリズムの具体事例

では、ここからはグリーンツーリズムの具体事例を見ていきましょう。

世界には、日本に先駆けてグリーンツーリズムが浸透している国や地域があります。この章では、グリーンツーリズムの発祥の地と言われる欧州と、近年グリーンツーリズムを推奨しているタイの事例を紹介します。

【大衆向けに農村を商品化】バイエルン州(ドイツ)

ドイツでは1918年に休暇法が制定され、労働者層も長期休暇を取れるるようになりました。一般大衆の休暇日数が増え、ドイツにマス・ツーリズム(※)が訪れたことで、観光地での混雑や観光汚染などが問題視されるようになりました。

マス・ツーリズムとは

第2次世界大戦後に先進諸国で発生した、観光が大衆化された観光行動のこと。一度に多量の観光客が押し寄せることでさまざまな問題が発生した。

その結果、混雑する観光地を避け静かに田舎で過ごすグリーンツーリズムの需要が増えたのです。

そこで受け皿となったのがドイツのバイエルン州です。全国農家民宿協会を始めとする民宿組織を中心に、農村の景観を維持しながら楽しめるプランを打ち出し、現地の観光を発展させてきました。

地域内にはグリーンツーリズム関連の民宿、レストラン、ヨットの貸出やスカイスポーツができるエリアがあり、現在は国内外から豊かな自然を求め、観光客が訪れます。

【政府観光庁によるグリーンツーリズムの推進】チェンマイ(タイ)

筆者提供

タイのチェンマイは、国内でも特に豊かな自然に恵まれており、政府観光庁によってグリーンツーリズムが推奨されています。

チェンマイでは、

  • 農地に滞在し、有機野菜栽培から食事作りなど現地の健康志向ライフスタイルを体験
  • チェンマイにある山岳地帯の村に滞在し、お米やコーヒー豆の収穫を体験
  • ジャングルの中を川下りし自然を満喫

といったツアーを展開し、グリーンツーリズムという観光形態を通して、自然保護活動に一層力を入れています。また、徒歩や自転車を利用するツアーを提案したり、堆肥化できる素材を包装などに採用しツアー中に出るゴミを削減する工夫が見られます。

続いては、日本におけるグリーンツーリズムの現状を見ていきましょう。

日本のグリーンツーリズム

日本でもグリーンツーリズムは推進されており、さまざまな施策を打ち出しています。

グリーンツーリズムを推進する施策

グリーンツーリズムの実現には、美しい景観を守りつつ快適な居所空間を形成しなくてはなりません。また、農家と観光客の両者にグリーンツーリズムについて啓発運動を行い、理解を深めることが求められます。これらの実現のために制定された施策を紹介します。

農村漁村余暇法

農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律(農山漁村余暇法)」は、農山漁村地域の復興を目的とし、1994年に制定されました。この法律は、自然を活かしたグリーンツーリズムを推進する際に不十分だった受け入れのための条件整備を図るきっかけとなり、農林漁家民宿開業が広まりました。

子ども農山漁村交流プロジェクト

「子ども農山漁村交流プロジェクト」は、2008年に総務省、内閣官房、文部科学省、農林水産省、環境省が開始したプロジェクトで、子どもが自然の中で宿泊し、農林漁業体験や自然体験活動等を行うことを推進しています。子ども達が自然の中でのアクティビティを通して学ぶ意欲思いやりの心規範意識などを育むことが目的です。

日本のグリーンツーリズムの具体事例

では、日本国内でグリーンツーリズムに成功している具体事例を紹介します。

【農家民宿事業で記憶に残る旅を提供】北海道長沼町

長沼町は、北海道のほぼ中央に位置し、町域の7割ほどを田畑が占める農村地帯です。札幌から車で1時間以内という立地条件を生かし、都市と農村地帯の交流促進を図るため、グリーンツーリズム特区に認定されています。

長沼町のグリーンツーリズムには、半日の農業体験ができる日帰り型滞在型のファームステイを提供しており、修学旅行地としても人気です。グリーンツーリズムの発展で地域の賑わいが生まれ、土産品や観光施設・温泉などの利用拡大につながっています。

ファームステイでは、農家が観光客を家族のように受け入れ、一緒に農業を体験したり、食事の準備などをすることで思い出に残るグリーンツーリズムを実現しています。

【交流施設を核にグリーンツーリズムを発展】長野県飯山市

飯山市は、長野県北東部に位置する山々に囲まれた緑豊かな地域です。市内の農家民宿は、もともと冬期間の副業としてスキー客を受け入れていました。しかし、1993年頃をピークにスキー客が激減し、農業とリンクしたグリーンツーリズムへと転換。

1994年に「飯山市グリーンツーリズム推進協議会」を発足させ、「なべくら・高原森の家」などの交流施設を整備した結果、市内の農家民宿数は60を超えました。

そして、飯山市では

  • 自然に囲まれたコテージでの滞在
  • 森林セラピー
  • カヌー
  • そば打ち
  • わら細工
  • 山菜取り

など、都会では味わえない非日常を体験できます。

【ありのままの農家の暮らしを体験】高知県梼原町(ゆすはらちょう)

高知県高知市から西に80㎞ほど離れた地にある梼原町は、都市農村交流に取り組む住民が中心となってグリーンツーリズムを推進しています。梼原町の豊かな自然環境や伝統文化を有効に活用し、観光客を受け入れることで地域の経済活性化新規雇用の創出を目指しています。

梼原町のグリーンツーリズムは、体験交流を重視しているため、山での仕事や野菜の収穫、昔遊びや田舎料理など、ありのままの農家の暮らしを体験できるのが特徴です。梼原町のグリーンツーリズムで心と体をリフレッシュさせることができるでしょう。

グリーンツーリズムのデメリットや課題

ここまで見てきたようにグリーンツーリズムは、観光客や地元経済にメリットをもたらしますが、デメリットや課題も存在します。ここではデメリットとして

  1. 環境破壊のリスク
  2. 農家のプライバシー

を挙げ、課題として、

a.時間と費用の負担

b.受け入れる側の人手不足

を見ていきます。

①環境破壊のリスク

グリーンツーリズムは、あくまで旅行者が緑豊かな地域にて、自然や文化を体験することを目的とし、”環境を守る”ことには焦点を当ててはいません。そのため、ツーリズムを活性化させるために新しい施設を建設したり、道路整備を行うなど大規模な計画になり環境破壊に繋がってしまう恐れもあります。

その一方で、旅行者が自然や地域文化を楽しみ、農山漁業に対する理解を深めることで、都市部に帰ったときに、より責任のある行動を起こすことに繋がる可能性もあり、プラスになることもあるでしょう。

②農家のプライバシー

農林中金総合研究所は、グリーンツーリズムに関して農家のプライバシーをデメリットとして挙げています。地元の人との交流を重視するグリーンツーリズムでは、プライベートな空間を商品化して売り出すため、観光客が訪れている期間は私的な時間が取りづらいという問題が発生します。

農家のプライバシーを守るためにホテルを用意してしまえば、地元の人との交流が薄れてしまい、グリーンツーリズムの醍醐味が失われてしまうので、交流とプライバシーの調和が求められます。

a.時間と費用の負担

グリーンツーリズムは、観光客を受け入れる施設やサービスを用意するために、資金調達や施設の整備、人手の確保、広告など様々な過程が関与し、軌道に乗るまでに時間と費用がかかります。

特に農家民宿の開業には、旅館業法や建築基準法などの規制があり、許可申請の障害となることも少なくありません。より国内でグリーンツーリズムを発展させるためには、規制の緩和や自治体独自の基準の設定が求められます。

b.受け入れる側の人手不足

時間と費用の負担に加え、人材不足が大きな問題として挙げられます。農山漁村地域では、少子高齢化が進んでおり、サービスを提供できる若者がいない場合も少なくありません。また、グリーンツーリズムのために施設を作っても後継者がいないため維持が困難な点も大きな課題です。

✓人手不足を乗り越えた例

先ほど紹介した飯山市の森の家では、1年間市内に移住することを条件に、旅行者に体験を提供するインストラクターを全国から募集しました。その結果多くの応募があり、県外スタッフの採用に成功し、体験メニューを提供しています。

デメリットや課題はありますが、記事の前半で紹介したように、グリーンツーリズムには沢山のメリットがあります。課題を知った上で地域と旅行者が工夫をすることで、グリーンツーリズムの良さを拡大させていくことも可能になるでしょう。

ここまでがグリーンツーリズムの概要になります。次の章では、グリーンツーリズムを体験するための旅先の選び方を紹介します。

旅先を決めるポイント

今後旅先を決める際に確認したいポイントは、

  • グリーンツーリズムを展開しているか
  • 日帰り・宿泊どちらに適しているか
  • ピークシーズンで人が集中していないか

の3つです。

グリーンツーリズムを展開しているか

地域によってはグリーンツーリズムを展開していない場所もあり、受け入れ体制が整っていないことも。公式サイトをチェックしたり、自治体に問い合わせて確認するようにしましょう。

日帰り・宿泊どちらに適しているか

観光地によって、用意しているプランが異なります。例えば、日帰りで楽しめる体験ツアーは豊富でも、宿泊施設が整備されていないなどのケースもあるため、この場合もどちらに適しているのかを事前に確認するようにしましょう。

ピークシーズンで人が集中していないか

せっかくグリーンツーリズムを楽しむのなら、比較的静かな時期に訪れるのがおすすめです。その地域の繁盛期に訪れると、観光客が多く、思ったように地元の人との交流ができない可能性もあります。

また、観光が発展すると地域経済にメリットがある一方で、観光客が訪れすぎると環境に負荷がかかり、地元のコミュニティにも悪影響を及ぼします。特に人手不足が問題視されがちな農山漁村地帯では、少人数で一度に集中せずに少しずつ観光を発展させていくのが理想的です。

旅をする自分の体験と、迎え入れてくれる地元の人々のためにも、ピークシーズンは避けて訪れましょう。

これらの情報をチェックするためにおすすめしたいサイト

グリーンツーリズムを推奨している自治体は、観光に特化した公式サイトやページを公開していることが多くあります。そのため、「気になる地域名+グリーンツーリズム」で検索をかけると、グリーンツーリズムの詳細やピークシーズンの情報を見ることができます。

また、Imatabiではおすすめのグリーンツーリズムの観光地を10選まとめています。これらのまとめ記事を参考に行きたい地域を見つけ、詳細を自治体ページでチェックすると旅行の予定をスムーズに立てられます

他にも、グリーンツーリズムに特化しているわけではありませんが、旅行者が旅先での思い出を動画で投稿できる、「たびのび」を参考にすると、より具体的なイメージが湧くのでおすすめです。

【体験記】トロッコで堪能する自然の旅 in 黒部・宇奈月

筆者提供

グリーンツーリズムの旅先を決めるポイントを実践し、実際に旅に出た筆者の実体験を紹介します。

2021年10月初旬にグリーンツーリズムを展開する富山の黒部・宇奈月温泉を訪れ、都会とは全くかけ離れた世界を体験しました。

この地域には「農村文化伝承館山本家」と呼ばれる江戸時代末期の建物があり、現在は古民家宿泊施設として利用されており、かまどや巻き割りなど昔ながらの農村生活を体験できます。

また、宇奈月温泉からは黒部峡谷鉄道トロッコが走っており、1時間半ほどの乗車では、美しい景観が続きます。途中下車できる駅が複数あり、黒部峡谷を流れる黒部川にある迫力のあるダムや、露天風呂や築100年以上の建物など、建設当時の歴史を学べるのも魅力です。

自分で掘れる天然温泉でリラックス

筆者提供

トロッコに揺られ約1時間。今回の一番の目的地である鐘釣(かねつり)駅で下車し、10分ほど歩くと、河原が見えてきました。一見ただの川に見えますが、よく見るとところどころ湯気が出ています。河原には温泉が湧き出ており、自分でスコップで温泉を掘ったり、石を並べて足湯を作ったりして楽しめるのです。その地域に残る自然を堪能し非日常を楽しむことで、体も心もリフレッシュすることができました。

現地の人の話では、夏休み期間や紅葉で人気の10月下旬から11月上旬のピークシーズンを避けると、観光客の方が一切いないこともあり、ゆっくりとした時間を過ごしたい方にはもってこいとのことです。

【補足】グリーンツーリズムはSDGsの達成にもつながる

近年、SDGsが注目を集めています。SDGsには、観光に関連するターゲットもあり、ツーリズム業界もこれに基づいて未来を描いていくことが求められます。

ここでは、グリーンツーリズムとSDGsの関係を見ていきましょう。

SDGsとは

まずはSDGsについて簡単に確認します。

SDGsとは「Sustainabale Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。「誰一人取り残さない。」を理念とし、2015年に国連で採択されました。

SDGsは、

  • 社会
  • 経済
  • 環境

の、世界が抱える課題を解決するために設定された、17個の開発目標と、169のターゲットから成ります。

ここでは、特にグリーンツーリズムと関りが深いSDGs目標の3つを紹介します。

目標8「働きがいも経済成長も」に貢献

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」は、誰もが安定した暮らしを送るための公正な労働条件と、安全な労働環境に配慮した雇用の促進を目的としています。

グリーンツーリズムは、農業や漁業など、天候や災害に左右されやすい産業を営む人々が、観光を通して収入を生み出すことを可能にします。また、現地の人々との交流を重視するグリーンツーリズムでは、住民そのものが地域資源として重要です。地元の魅力を伝えるという役割で雇用を生み出し、働きがいを持って活躍できることが期待されます。

また、ターゲット8.9には

2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する

とあり、持続可能な観光業の促進について明記されています。

目標11「住み続けられるまちづくりを」に貢献

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」は、安全で災害に強い持続的なまちを目指すために掲げられています。日本の多くの地方都市では少子高齢化による労働力の低下や経済成長の停滞が深刻な問題で、活気にあふれたまちづくりが求められます。

グリーンツーリズムを推進するためには、快適な宿泊施設や、ある程度の交通アクセスが不可欠です。これらを整備することで、観光客だけでなく地元の人にとっても住みやすい街を実現できます。また、観光が発展することで雇用が増え、経済成長にもつながります。

観光客に評価をされることで、地域住民は、地域の魅力を再確認し誇りを持てるといった教育効果が期待でき、より良いまちづくりを進めるための意識向上にも繋がります。

目標15「陸の豊かさも守ろう」に貢献

SDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」は、私たちの生活を守る森林や陸上生態系の回復および持続可能な利用の推進を目的としています。土地劣化の阻止や砂漠化への対処も目標15の一部に定められています。

先述したように、グリーンツーリズムそのものの定義には、環境を守るという概念は含まれていません。しかし、農村や漁村などの景観を重視するグリーンツーリズムでは、美しくあることが大前提であるため、目標15と深い関わりを持っています。

また、観光客が自然との触れ合いを通じて、気候変動や資源の有効活用などに対する知識を深め、地球規模の課題について考える機会を得られれば、個人レベルでアクションを起こすきっかけにもなるでしょう。

まとめ

この記事ではグリーンツーリズムの定義やメリット・デメリット、世界と日本の成功事例などを紹介しました。

グリーンツーリズムは、1つの産業に依存しがちな農山漁村地域に観光業というプラスの収入をもたらし、地域経済を活性化できます。また、普段都市生活をしている人々にとっては、その地の自然や文化、ライフスタイルを満喫することで、新たな価値観を得られる点でも非常に価値のある旅行形態でしょう。

地域資源を活用するグリーンツーリズムを楽しみ、自然環境を守りながら地域を発展させることは、SDGs目標への貢献にもなります。ぜひ紹介した旅先を決めるポイントを参考に、新しい旅のスタイルに挑戦してみてはいかがでしょうか?

参考文献
CiNii ドイツ・バイエルン州におけるルーラルツ―リズムの発展と農村空間の商品化
CiNii ドイツのグリーンツーリズム
タイ政府観光庁『チェンマイのエコツアーの情報一覧』
北海道長沼町町勢要覧2008
長沼町『グリーンツーリズム』
飯山市公式サイト『飯山市グリーンツーリズム事業の取り組みについて』
農林水産省農村復興局『グリーン・ツーリズムの現状について』