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デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?企業の取り組み事例やSDGsとの関係を解説

ここ数年、世の中では「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が頻繁に使われるようになってきました。

DXはこれからのビジネスや社会でその必要性が叫ばれており、世界中で浸透しています。しかし、日本ではDXに対する理解が十分とは言えず、導入が遅れているのが現状です。

そこで、この記事では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の基本知識や導入にあたっての注意点などを説明していきます!

目次

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

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デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)とは、デジタル技術が世の中に浸透して、人々の生活を豊かにすることやテクノロジーの力で、ビジネスや社会全体の既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションを起こすことです。

重要キーワードは「変革」

デジタルトランスフォーメーションは、従来のデジタル化(アナログをデジタルに変換すること)やIT化(コンピューターやネットワークを使って既存の仕組みを変えること)とは異なり、社会やビジネス市場に大きな影響や変革をもたらすものです。

過去に大きな変革をもたらしたデジタルトランスフォーメーションとしては、

  • Apple:
    iPodとiTunesにより、音楽はパッケージからデータが主流に。また、iPhoneの登場によりスマートフォンというデバイスが世の中に普及。仕事から買い物、娯楽に至る様々なことがいつでもどこでもできるようになり、人々の生活スタイルが変化するきっかけとなった
  • Amazon:
    書籍をはじめ、あらゆる商品の検索から購入までをインターネット上で完結させる購買方法が一般化し、店舗へ買い物に行かなくてすむようになった

などが挙げられます。こうした例からも分かるように、デジタル技術の導入は私たちのそれまでの習慣や考え方までも変化させてきました。つまり、デジタルトランスフォーメーションを行う際には、「何を変えたいか」という目標を明確にし、広い視点を持つことがカギとなってきます。

広義のDXと狭義のDX

DXには社会的文脈で使われる広義のものと、ビジネスの場面で利用される狭義のものがあります。

広義のDXとは、ITやICTの普及により、ビジネスに限らず私たちの生活が豊かになることを指します。

一方狭義のDXとは、ビジネスシーンに限定されたデジタルの変革をさします。
企業がデジタル技術を活用して、製品の質やビジネスモデルを向上させたりすることを指します。

なぜデジタルトランスフォーメーションなのにDX?

ジタルトランスフォーメーションは、略して「DX」と表記されます。Digital Transformationの頭文字を取るなら本来は「DT」とするべきです。しかし、英語では「Trans〜」を略する時には「X」を使うのが一般的であるため「Digital Transformation⇒Digital Xformation⇒DX」となります。

また他にも、experienceを「X」と略すなど、ビジネス関連においてはXを用いた略語が多いため(「UX:User Experience(ユーザー体験)」「CX:Customer Experience(顧客体験)」など)、デジタルトランスフォーメーションでもDXという略称が定着しやすかったことが考えられます。

デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い

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DXと関連した言葉として、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。どちらもデジタル化を意味する単語ですが、それぞれDXとは異なる概念です。

デジタイゼーション

デジタイゼーションとは、今までアナログで行っていた作業をデジタル化することです。具体的には

  • 紙の書類をPDFやWord、Excelにする
  • 連絡方法を電子メールやチャットツールにする

など、効率化や無駄をなくすための手段が当てはまります。しかし、これらの取り組みだけでは業務のシステムや流れそのものを変えるには至りません。

デジタライゼーション

デジタライゼーションは、1つの作業をデジタル化するだけにとどまっていたデジタイゼーションから踏み込んで、仕事のプロセス全体もデジタル化することを言います。例えばデジタル技術を使い、

  • 業務の流れ(ワークフロー)を統合する
  • 組織全体のデータ形式を統一し、各部署や部門で流用できるようにする
  • 製品や情報の流れをリアルタイムで管理できるようにする

ことなど、より包括的、全域的にわたるデジタル化がデジタライゼーションなのです。

デジタルトランスフォーメーション

デジタライゼーションで生み出された成果をもとに、既存の仕組みや人の意識、企業風土までをも変化させていくがデジタルトランスフォーメーションです。

その影響が企業や組織のみならず、業界や社会に新しい常識をもたらし、価値を創造することで「変革」が成し遂げられていきます。

つまり、デジタイゼーションを行い→デジタライゼーションを構築し→デジタルトランスフォーメーションをもたらす、という流れがこの3つの関係です。

デジタルトランスフォーメーションが注目される理由

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デジタル化やIT化、ICT(情報通信技術)化はこれまでも、効率化やコスト削減、サービスの向上などからその重要性が説かれ、社会へ導入されてきました。それにもかかわらず、改めてDXという新しい概念の必要性が叫ばれ、その導入が急務とされているのは何故なのでしょうか。この章では、その理由を確認していきましょう。

急速に変化するビジネスの流れについて行くため

社会のデジタル化が進むにつれ、スマートフォンやサブスクリプション※など従来では存在しなかったサービスや製品が登場してきました。同時に、デジタルの力を利用して既存の業界に参入したり、それまでの業態を転換する企業も現れました。

※サブスクリプションとは:ネット上のサービスを月または年単位で定額利用すること

例としては

  • GE(航空機部門):
    エンジンの販売業務から、エンジンにセンサーを取り付けて集めたデータをもとに保守・点検を行うサービスへ移行
  • トヨタ自動車:
    IoT技術や自動運転を基盤に、車や建物、家電、インフラなど、人を含むあらゆるものがネットワークでつながる都市を開発

などが挙げられます。

デジタル化によるビジネスや社会の変化は急速で劇的です。こうした流れに取り残されないためにも、企業はDXによる変革が求められているのです。

人口減少社会を見据えた生産性の向上

今後、世界では急速に少子高齢化社会が進むことが予想されています。中でも日本は、世界でも群を抜いた速さで少子高齢化と人口減少が進行すると言われており、現役世代の減少による労働力不足、国内市場の縮小が懸念されています。また、日本は世界の産業のデジタル化に対する競争力の低下も指摘されています。

少ない労働力で生産性を上げ、付加価値を生み出すためには、これまで以上にデジタル技術を活用していかなくてはなりません。

モノの消費からコトの消費へ

私たちの消費様式が変化していることも、DXが必要とされる理由の1つです。

かつての私たちは、物理的な「モノ」に価値を見出す傾向にありました。しかし近年においては、Netflixなどの動画配信やスマホのゲームアプリのような、サービスや体験などの「コト」を購入する機会が増えています。

また、計測機器メーカーのTANITAがヘルスケア・健康管理サービスに乗り出すなど、「モノ」を媒介として「コト」を提供するビジネススタイルも広がっています。競争の激しい市場社会で生き抜いていくためにも、企業の総合的なDX導入は避けて通れません。

参考:Health Planet ヘルスプラネット

従来のシステムでは対応しきれない

早急なDXが必要な理由としては、既存の「レガシーシステム」の老朽化があげられます。

レガシーシステムとは、古いコンピューターシステムのことです。組織内でのみ使用される独自のプログラムであることが多く、環境の変化に合わせて構築、改修、廃棄を繰り返した結果、継ぎはぎだらけのシステムになってしまっていると言われています。実際、経済産業省の報告によると、日本の企業の7割が、こうした古いシステムが自社のデジタル化の足かせとなっていると答えています。

しかし、なぜレガシーシステムは問題視されているのでしょうか。掘り下げて見ていきましょう。

レガシーシステムがなぜ問題なのか

レガシーシステムが問題とされる理由は大きく2つあります。

1つ目は、システムがあまりに肥大化・複雑化したため、ブラックボックス化して修正ができなくなることです。頻発する大手メガバンクのシステム障害はまさにこれが理由です。

2つ目は、既存システムは社内・部署単位での運用が前提だったため、データの整備や標準化・連携も困難であり、新しいプログラムやネット・クラウドでの運用の妨げとなることが挙げられます。

また、これらの理由によって、システムの運用や保守に無駄なコストがかかってしまうことも問題とされています。

「2025年の崖」問題

レガシーシステムを放置することで生じる問題もあります。

現在のレガシーシステムを放置した場合、2025 年以降、最大で年12兆円(現在の約3倍)の経済損失が発生すると予測されているのです。レガシーシステムによるこの危機的な状況を「2025年の崖」と言いますが、この背景には、第一線で働いてきたIT人材の引退や多くの企業が使っている基幹業務パッケージのサポート終了が、2025年前後に起こることが挙げられます。これを2025年問題といいます。

手遅れになる前に、古いITシステムを刷新しDXに移行することは、喫緊の課題となっているのです。

デジタルトランスフォーメーション推進の課題

日本でも、多くの企業や自治体がデジタルトランスフォーメーションの推進に力を入れつつあります。しかしながら、国内企業では41%程度しか導入が進んでいないのが現状です。ここでは、日本でDXを推進・導入するにはどのような課題があるのか確認していきましょう。

経営層のDXに対する理解不足

DX導入に対する課題として第一に挙げられるのが、企業のトップである経営者や役員が、DXの本質※を正しく理解していないことです。日本の経営者は年齢層が高く、デジタル化やITが得意ではない方がたくさん存在していると考えられます。

もちろん経営者がSE並みにITに精通する必要はありません。大事なのは「デジタル化するとはどういうことか」「デジタル化で会社を変革するということはどういうことか」を理解することです。その上で、社内全体を巻き込んで取り組むよう指揮を執ることが必要なのです。

<DXの本質とは>

  • DXはデジタルとデータで物事を根本から変える概念そのもの
  • デジタルは「手段」であり「目的」ではない
  • 部分的にではなく、全体を変えなければ意味がない

導入目的が明確になっていない

DXの本質を理解していないと、何のために導入するのか、という「目的」が明確にできません。

データ分析ツールでデータを活用したいと思っても「どう活用して」「そのデータでどのような価値を生み出すのか」がはっきりしていないと、導入する意味がありません。

AIを導入して何かできないかと考えても、その「何か」が明確化されていなければDXは実現できません。

人手不足なのか、顧客のニーズを把握するのか、商品の差別化なのか、「課題と解決の方向性を定める」ことが重要です。

デジタル人材の不足

社内でDXを進めるためのデジタル人材が不足していることも多くの企業の課題です。

今まではシステムを作るメーカーやベンダー(販売者)に頼っていましたが、社内全体の構造を変えるためには自社でデジタル化に対応できる人材を抱えることが大事です。

具体的には

  • 日常業務で気づいた違和感をデータとして抽出、構造化し、他者に上手に伝えることのできる人材
  • ビジネスの課題点を吟味し、データやアルゴリズムを理解してプロジェクトを見極められる人材
  • デジタル技術で変化する業務のポイントや関係性をステークホルダーに説明できる人材
  • 課題全体を全方位に展開し、新しく企画立案ができる人材
  • 高度な課題を解決するデジタル技術に通じた人材

などのように、プログラムやシステム・データを理解する技術者以外に、ビジネスを理解してデジタルとの関連を結びつけるデザイン人材が必要と言われています。

組織内外の連携とコミュニケーション不足

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DXの肝となるのは、組織や社会全体の変革です。そのため、特定の部署や企業のみが単独でDXを導入したり、データやシステムを囲い込んでいては意味がありません。開かれたシステムのもと、社内全体でデータを統一化・オープン化して相互に利用し、コアとなる技術以外は他社との共用も視野に入れる必要があります。

日本の組織的問題

最も難しいのが、私たちの意識変革に関わる問題かもしれません。

ここまで説明したように、DXの本質はデジタルを使って「従来の構造や考え方を根本的に変える」ことであり「新しい価値観を生み出すこと」です。

しかしこのDXの概念は、日本社会の従来からの価値観とは相反する性質があり、それが日本でDXが進まない一因ともなっています。

オープン化を妨げる組織的閉鎖性

TRONシステムの生みの親である東京大学名誉教授・坂村健氏によると、DX成功の鍵は「オープン化」にあるとされます。しかし日本の組織では「よそ者にデータを見られたくない」「チェックされたくない」という意識が強く、データのオープン化が進んでいないという問題があります。

変化を好まない国民性

変わることを極端に恐れる日本人の国民性は、特に組織になるとその傾向が顕著に現れ、社会の変化を妨げると言われています。この変化に対する抵抗感は、「今のままで問題ない」「デジタル化の必要性を感じない」という現状肯定と、「IT化についていけない」「AIに仕事を奪われる」という将来不安の2つから形成されています。このマインドを私たち一人ひとりがどう克服するかが、解決の鍵になります。

完璧さを求め過ぎる

日本人は、物事に完璧さを求め過ぎる性質があります。企業のシステムや鉄道のダイヤにも寸分の狂いのない正確さを要求し、配送の包装や野菜に傷があることを気にする方は少なくありません。

こうした特性は、高品質を重視する従来の産業では有利に働きました。

しかしDXでは、変化に対するスピードや、不確実性に対する柔軟さが要求されます。100%の完全さが保証されないと動けない日本人の性格は、時として裏目に出てしまう恐れがあるのです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に必要な5つの技術

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DXを実現させるためにはデジタル技術の導入が不可欠です。その中でも特に重要になってくるのが、次にあげる5つの技術です。

AI

私たちの間でもすっかり定着しているAIは、人工知能とも呼ばれており、人間の知的行為をコンピューターで再現したものです。AIは、ビッグデータと呼ばれる膨大なデータを高速で計算・処理し、コンピュータが自ら学習して答えを導き出す仕組みになっており、医療分野/小売業/スポーツ科学/製造業などで強みを発揮し、人間の行う業務の意思決定を支援します。

参考:人工知能(AI)とは | SAS

5G

5Gは携帯電話の新しい通信規格で、第5世代移動通信システムと呼ばれます。現在私たちが使っている4G・LTEと比べ、圧倒的な速さとデータ量が特徴です。超高速・低遅延で通信のタイムラグがほぼ発生しないため、完全自動運転や高精細映像のライブ配信、遠隔医療、製造機械の遠隔制御などへの利用が期待されています。この他にも、多数同時接続により100個もの機器やセンサーとの同時接続が可能となるため、次に挙げるIoT技術へも応用されます。

参考:第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望

IoT(Internet of Things)

IoT(アイオーティー)は「モノのインターネット」と呼ばれます。これは従来インターネットにつながっていなかった家電や道具、日用品などあらゆるものをインターネットに接続し、情報を集め利用する技術です。例えば、

  • 外出先からエアコンの温度管理を行う
  • スマートウォッチで脈拍や疲労度を測定する
  • スピーカーを声で操作し、音楽を再生する

などが当てはまります。

各種センサーによって集められたさまざまなデータは、位置、動き、形状や状態などが数値化、可視化されます。そのデータを利用することで、工場や店舗、農場、各家庭などにおける生産状況や在庫の管理、施設の保守・保全が飛躍的に向上します。

クラウド

「雲」を意味するクラウドは、ネット経由でコンピューターのソフトや保存場所を間借りし利用できる技術であり、今や私たちがインターネットサービスを利用する上で不可欠な存在です。クラウドは、

  • 利用者が自前でハードディスクやサーバーを持たなくてもよい
  • システムを作るコストも保守管理の必要もない

といったメリットがあるため、事業規模に合わせた柔軟な運用が可能になります。

モバイル

モバイルとは、あらゆる場所でインターネットに接続可能となる端末(スマートフォンやタブレットなど)やインフラ(携帯電話回線、Wi-Fiエリアなど)のことです。

私たちはモバイルによって場所や時間に縛られず働くことが可能になりました。しかし、もともとスマートフォンは電話ではなく「超小型PC」が本来の姿ですので、あらゆる知的活動や生産活動がモバイルで完結するのは当然とも言えます。

企業のデジタルトランスフォーメーションの導入事例・取り組み

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ここからは、デジタルトランスフォーメーションの導入事例を確認していきましょう。それぞれの会社が、課題に対してどのような事業を展開し、その結果どのような変革をもたらしたかを中心に紹介していきます。

【データが可能にしたモノからコトへの変革】株式会社ブリヂストン

国内最大のタイヤメーカーとして有名なブリヂストンは、2020年から新たに「Bridgestone T&DPaaS」を打ち出しました。

導入の背景

この「Bridgestone T&DPaaS」は、タイヤを売り切りではなくサービスとして提供するため、膨大な利用データを分析してプラットフォームを構築するというものです。

導入の背景にあるのは「100年に1度の自動車業界の大変革期を前に、モノからコトへの移行によって進化するモビリティを支える」という企業意識の変革です。

導入のポイント

この事業のデジタルを活用したサービスとして、タイヤの遠隔モニタリングシステム「tirematics」、顧客のタイヤ情報管理システム「Bridgestone toolbox」、タイヤの製造、品質、在庫などを管理するツール「basys」、車両管理および運行ソリューションなどを打ち出しています。

導入による変革

これらのシステムを活用することによって、タイヤのパフォーマンスを最適化し、車両のオペレーションに付加価値とサービスを提供することを目指しています。

【潜在顧客のニーズを探る】長谷工コーポレーション

長谷工コーポレーションは、マンション開発を中心とし、リフォームや修繕なども行う総合建築企業です。

導入の背景

長谷工コーポレーションの課題の1つに、マイホーム購入を漠然と考えている潜在顧客へのアプローチ方法が挙げられていました。同社はその課題解決のため、非対面でモデルルーム見学を予約できるLINEアプリの「マンションFit」を開発しています。

導入のポイント

このシステムを導入するにあたり、最も重視したのがユーザビリティ、つまり使いやすさです。はっきりした希望条件が思い浮かばない潜在利用者の立場に立ち、おすすめ物件の検索は5つの質問(家族構成、年齢、自宅・勤務先の最寄り駅、世帯年収、現在の居住形態)に絞っています。こうした基本データと過去の購入者のデータを組み合わせることで、より顧客の希望に合致した具体的な物件情報を提示することを可能にしました。

導入による変革

このシステムの導入により、マイホーム購入にあたって何から始めればいいか分からない、どのような家を求めているのか固まっていない、などといった検討初期段階の顧客でも、より簡単に自分の希望を形にできるようになりました。LINE上での手軽な使い勝手と合わせて、顧客体験を向上させることにつながっています。

【デジタルで完結する新たなビジネスモデル】メルカリ

メルカリは、オンラインでのフリーマーケットサービスを運用する会社です。スマホアプリを使った手軽な使用感で、またたく間に市場を席巻しました。

導入の背景

メルカリのサービスが生まれた背景には、「限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい」という思いがありました。デジタルを利用してより簡単に人と人をつなぎ、より気軽にモノの売り買いを行えることで資源を循環させ、新しい価値を生むことがビジネスの原動力となっています。

導入のポイント

メルカリがヒットした一番のポイントは、出品から交渉、支払いまでをモバイルのアプリで完結できる仕組みを作ったことです。出品に一定の手続きが必要だった従来のネットオークションに比べ、誰でも匿名で気軽に出品、購入できるようになったことは大きな利便性をもたらしました。また、売り上げポイントを「メルペイ」という形でスマホ決済に利用できるシステムもユーザーの固定化を促しています。

導入による変革

メルカリはインターネットによる個人間売買の敷居を下げ、ネット上でのフリーマーケットという新たなビジネスモデルを世間に広く定着させました。ユーザー数の増加により、一見すると他人が欲しがらないようなものでも売買が成立し、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の形成に貢献しています。

【顧客の利便性から生まれた置き薬方式】トラスコ中山

トラスコ中山は、工場向けの資材や道具を製造販売する会社です。

導入の背景

同社は「顧客の利便性を高めるにはどうすればいいか」「どうすれば便利なのか」という課題を解決するためにデジタルやデータの活用を進めました。

導入のポイント

顧客のニーズに合わせて導入したのが「MROストッカー」です。これは必要な工具を置き薬のように顧客先に配備しておき、使われた分だけの料金を集金する方式です。さらに、この利用データを分析して、商品の補充、売れ筋の把握から新商品の開発に利用しています。

また、販売店向けに開発したスマートフォンアプリ「T-Rate」で、商品への問い合わせや配送状況の確認ができるようになっています。

導入による変革

工具のペイ・パー・ビュー&サブスクともいうべき置き薬方式の採用で、顧客満足度の向上と囲い込みに成功しています。また「T-Rate」によって、販売店との円滑なコミュニケーションも可能になっています。

【新たなユーザー体験がもたらす変革】Zwift(ズイフト)

Zwiftは、実体験とバーチャル空間を組み合わせてサイクリングやランニングを行うサービスを展開する企業です。

2014年にアメリカで創業し、2015年のサービス開始以来、着々とユーザー数を増やし、現在ではインドアフィットネスのスタンダードになっています。

導入の背景

Zwiftが解決すべき課題は「退屈なインドアフィットネスを楽しいものにする」ことでした。

従来の自転車ローラー台やランニングマシンにセンサーを取り付けてIoT化させ、モバイルアプリと高速通信技術を活用することで、自分の運動に合わせてアバターを仮想空間でリアルタイムに走らせることを可能にしました。

導入のポイント

このサービスで重視したのが、新しい技術を使ってそれまでにないユーザー体験を提供することです。

3Dによる美しいコースだけでなく、地形に応じて負荷が変化するなどリアルさを追求し、没入感を高めています。またアイテムの収集やレース、イベントなど、ゲーム性やSNSのような機能を組み込んで、実際に走るだけでは得られない新しい体験を実現させています。

導入による変革

Zwiftの成功は、それまで利用の少なかったインドアサイクリングを一般化させる他、関連機器業界のビジネスにも好影響を及ぼしています。またコロナ禍で屋外練習ができなくなった大勢のプロ選手が利用し始め、公式のバーチャルレースも開かれるなど、サイクリングやランニングの楽しみ方に新しい常識をもたらしています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の関係

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最後に、SDGsとデジタルトランスフォーメーションの関係について説明したいと思います。

SDGsは、世界の持続的な成長を実現するために、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットを掲げた国際目標です。「誰ひとり取り残さない」という誓いのもと、世界のすべての国が一丸となって取り組んでいます。

DXは、17の目標の中でも目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」と大きく関わっています。

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、持続可能な産業発展につながる技術革新、すなわちイノベーションを促進させることを目的とした目標です。

世界には、労働人口の減少や環境汚染、貧困やインフラの不備など、未解決の問題が多く存在しています。しかし、目標9のターゲットの1つに、

9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。

が掲げられているように、すべての企業がデジタルを活用して新しいビジネスを生み出すことは、世界中の社会問題を継続して解決するための取り組みへと繋がるのです。その他のターゲットもDXの目的と符号しています。つまり、目標9の達成にはDXの推進・導入が重要であると言えるでしょう。

まとめ

デジタル技術は、私たちの生活スタイルを一変させました。

しかし、これから推進するデジタルトランスフォーメーションに比べれば、それもまだほんの入り口でしかありません。

私たちが現代社会で抱える問題は、非常に大きく複雑で、これまでのやり方では決して解決できないものです。今後、あらゆる産業でDXを実現させることは、多くの社会問題を解決することへと繋がるでしょう。持続可能な社会を作り出すには、デジタルトランスフォーメーションが必要なのです。

<参考文献>
DXとは何か 意識改革からニューノーマルへ/坂村健 角川新書
DXの教養 デジタル時代に求められる実践的知識/志度昌宏、三菱ケミカルホールディングス先端技術・事業開発室 DXグループ編 株式会社インプレス
60分でわかる! DX最前線/兼安暁 技術評論社
未来ビジネス図解 新しいDX戦略/内山悟志 エムディエヌコーポレーション
D X レポート 平成30年9月7日 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会|経済産業省
「DXの成功要素とDX人材の育成について」情報の科学と技術 71巻7号,p290-295
「誰一人取り残さない」デジタル化の実現に向けて – 総務省
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