世界でもっとも裕福な26人が、世界人口の所得の低い38億人の総資産と同等の富を独占していると、国際NGO「オックスファム」が発表しました!
また世界経済フォーラムでは資産約1,100億円以上の富裕層の資産は、2018年で毎日約2,700億円ずつ増加したと報告されています。
その一方で、経済的に恵まれない38億人の資産総額は減少しており、格差の広がりは止まることを知りません。
世界中に存在する不平等は、こうした所得格差などの経済的なものだけではありません。人種、ジェンダー、身分、宗教、移民、伝統などさまざまな不平等が存在しています。ジェンダー格差報告2017(※1)によると、今の状態を続けているとジェンダーに関しては不平等を解消するのに217年かかります。じつに7世代後なのです。
SDGs10のゴールは「人や国の不平等をなくそう」です。
世界規模でも、国内でも、あるいはもっと小さな集団でも不平等や差別、偏見は存在します。
目標10は「だれひとり取り残さない」というSDGs基本理念の根底部分であり、貧困問題、飢餓問題、ジェンダー差別の解決に深くかかわります。
みなさんは日々暮らしている中で不平等だと感じる場面はありますか?
人と比較しない人生は大切ですが、やはり人間である以上、社会の中で暮らす以上、誰かと比べることはごく自然なことです。
そこでもしあなたが雇用、賃金、ジェンダーなど、自分ひとりでは解決できない不平等さに気がついたとき、声をあげる権利があります。
そのためにもSDGs目標10を詳しくみていきましょう!
目次
SDGs10 「人や国の不平等をなくそう」とは?
目標10の目指す姿は、国と国の間の不平等、国の中での不平等をなくすことです!
先進国と開発途上国の双方で貧富の差、性別や人種、伝統的慣習による偏見や差別をなくす必要があります。
と言っても難しく感じる人も多いと思います。そこで次に、SDGs10「人と国の不平等をなくそう」の理解を深めるためのポイントをまとめました。
この記事はボリュームが大きいので、まずは気になるポイントだけ詳しく抑えてみても良いかもしれません!


◆格差について詳しく知りたい方はこちらをクリックしてください。

◆世界の不平等の現状を知りたい方はこちらをクリックしてください。日本の現状はこちら。

③問題の解決策を詳しく知りたい方はこちらをクリックしてください。
④解決に向けた取り組みを知りたい方はこちらをクリックしてください。
⑤私たちにできることを詳しく知りたい方はこちらをクリックしてください。
では、ここからより具体的な内容に踏み込んでいきましょう。
SDGs10のターゲット
目標10のターゲットは、1〜7の達成目標とa〜cの実現方法で構成されています。
詳しく見ていきましょう。
ターゲット | |
---|---|
10.1 | 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。 |
10.2 | 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
10.3 | 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。 |
10.4 | 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。 |
10.5 | 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。 |
10.6 | 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。 |
10.7 | 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。 |
10.a | 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。 |
10.b | 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。 |
10.c | 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。 |
目標10のターゲットは、目に見える格差解消だけでなく、すべての人が社会や経済の場に参加できること、社会的に不利な立場に置かれた人を守る政策を推進します!
今もなお世界中に根強く残る差別や偏見を早急に解決することが目標1、2のめざす貧困や飢餓をゼロにする手助けとなります。
さらに貧困による児童労働などの社会問題を解決するなどSDGs全体をゴールへ導くものが目標10なのです。
ではもう少し踏み込んで、目標10の重要性を知っておきましょう。
なぜ、目標10がSDGsに必要なのか?〜不平等な社会の現状〜
不平等の解消は、その延長線上にある貧困や飢餓、ジェンダー問題解決の根本となり影響を与えるため、現状を理解し不平等をなくす取り組みを実践することが必要です。
賃金格差、性別、人種、民族にかかわらず、すべての人を世界の経済的な枠組に取り込み、健全な政策が求められます。
不平等の背景は、性別、年齢、障がい、人種、民族、階級、宗教などさまざまです。
しかしながら世界中のあらゆる場所で「不平等」が残ります。
世界の最も豊かな10%の人々が全世界の所得の40%近くを独占している状態にあり、その一方で世界で最も貧しい人たちの所得は全世界の割合の2%ほどに過ぎません。
医療サービスや教育など暮らしに必要なサービスも、安い価格で受けられるかどうかは国によって大きな格差があり、同じ国の中に目を向けても収入格差の大きな広がりが見られます。
差別や慣習が、不平等を生み続けている
世界人口の15%にあたるおよそ10億人が何らかの身体的・精神的・感覚的な障がいに苦しんでいます。
彼らは社会の主流から取り残され、教育や雇用の機会を失い、社会的障がいを作られてしまいます。

障がいを持つ子どもや若者は世界で5,000~1億2,000万人いますが、そのうち学校に通えている割合はわずか2%以下です。(※2)
特に開発途上国においては障がいを持つ子どもは教育を受けるチャンスが少なく、例えばエチオピアの農村部では98%の子供たちが学校に通えていません!
伝統的慣習もまた格差を広げる要因です。
西アフリカ・サヘル地域の農村部では、農耕民と牧畜民の間で結ばれる野営契約という伝統的慣習があります。
野営契約では牧畜民の家畜が落とす糞で土壌改良を目指し作物を育てる栄養分とし、農耕民が牧畜民に報酬を支払います。
ただ牧畜民に野営契約を依頼できるのは富裕層のみであり、多額の収入を持っています。
富裕層の畑は野営契約によって作物が育ちますが、そうでない貧困層の農地は養分がなく作物を生産できません。
野営契約という伝統的慣習によって経済格差が拡大しているのです。
99%のための経済
貧困と不正を根絶するための持続的な支援・活動を90カ国以上で展開している団体オックスファムは、2017年の報告書で「99%のための経済」を発表しました。(※3)
世界では最も裕福な人(1%)がほとんどの富を所有していて、残りの99%の人との格差が広がっていおり、10人に1人が、1日2ドル以下(100円台)で生活することを余儀なくされているのです。
こうした現状が生まれた背景は、
- 大企業の活動が豊かな人々に利益をもたらす仕組みになっている
- 労働者や生産者が利益を搾取されている
- 大企業や豊かな人が最大限の利益を求めるためにタックス・ヘイブン(※)を利用している
- 裕福な人が各国の政策にも影響力を行使している
ことが挙げられます。
そこで発表された99%のための経済とは、最も裕福な1%の人以外の99%の人のための経済です。
雇用の安定と適正な賃金、ジェンダー平等を保証し、地球上の限りある資源を少ない範囲で活用し、世界中の子どもがその可能性を発揮できる経済社会を目指すものです。
富裕層のタックス・ヘイブンを終わらせること、労働者や生産者が正当な賃金を得られること、すべてのコミュニティに収益が届くビジネスモデルを作り支援することを必要だと報告書では言及されています。
さらに、男女平等に関しては女性が社会進出しやすい世の中に、さらに無償労働も評価の対象とすることがまとめられています。
貧富の差による命の格差
コロナ禍では、貧富の差がそのまま命の格差につながってしまいました。
アメリカミシガン大学の疫学助教ジョン・ゼルナー氏は、「感染症は不平等のリトマス試験紙」と言及しています。(※4)
これはどういうことなのでしょうか。
アメリカの新型コロナによる死者はホームレスの多いワシントン州シアトルで多く、生活環境が整っていないことや高齢者や慢性的な疾病を抱えているホームレスは重症化しやすいと伝えられています。
さらに低所得者は経済的な問題で通院することが困難で仕事を休むことを許されない場合が多いと指摘しています。
新型コロナの蔓延で浮き彫りになったことは、貧富の差で命の格差が広がったということです。
日本では2008年のリーマンショック以降、金融不安で経済的理由から病院に行けない人が増え、治療ができずに死亡した件数は2009年1年間で47件確認されています。
2017年では死亡した人の年齢は50〜70代が8割、無職や非正規雇用が7割を占めていました。経済的な理由から受診ができず、本来なら救えた命が貧富の差によって失われてしまったのです。(※5)
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世界の格差の現状と課題
最も裕福な10%の人々が世界の40%の所得を得ています。世界全体の半分近くの所得が世界人口75億5,000万人のうちの8億人のものとなっているのです。
目標10は国と国の間に立ちはだかる不平等と、1つの国の中で生じる不平等をなくすことを目指しています。
経済のグローバル化が加速するにつれ先進国と開発途上国の間で経済格差が生まれ、貧富の差が拡大しているため、地球規模での取り組みが必要なのです。
ジニ係数
世界の所得分配における不平等さを知る上で知っておきたいのが「ジニ係数」です。
ジニ係数とは、社会での所得分配の不平等さを数値化したもので、イギリス統計学者コッラド・時にによって考えられた指標です。
ジニ係数の特徴は手元にデータさえあれば簡単に格差度合いを示すことができという点です。
OECDが公表しているデータ(※6)によると数値がもっとも大きい、すなわち不平等さが強い国は
- 南アフリカ(0.62)
- コスタリカ(0.48)
- メキシコ(0.458)
日本は14位で0.339です。
ジニ係数が0.4以上は格差への不満が高まり、社会が不安定になる警戒ラインです。
0.6以上は暴動がいつ起きてもおかしくない状態で、南アフリカはかなり危険な状態と言えるでしょう。
ジェンダーギャップ

世界経済フォーラム(※7)によるジェンダーギャップ指数2021が発表されました。
ジェンダーギャップ指数は、経済、政治、教育、健康の4つの分野のデータから作られ、
- 0に近いほど完全不平等
- 1に近いほど完全平等
を示し、日本は経済および政治の分野で順位が低く世界各国がジェンダー平等に向かっている中で日本は遅れを取っています。
ジェンダーにもとづく不平等による、雇用・賃金格差・偏見なども問題点です。
2020年に起きた世界的なパンデミックは男女間での不平等さが浮き彫りとなりました。
突然の不況で解雇された女性や子育て世代の女性に関しては、休業したり、子どもの休園・休校に伴い男性よりも就業時間を大幅に減らしたりしていることが報告されました。
こうした女性の経済的危機をShe-cessionと呼びます。
またジェンダーギャップは賃金格差にも表れています。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のグラフを見ると2019年の格差は74.3%と依然として大きいことがわかります。(※8)
社会において男性が優遇される理由
男女共同参画局では、社会において男性が優遇される傾向にある理由を世界各国で調査しました。(※9)
- 男女の役割分担についての社会通念・慣習・しきたりなどが根強いから
- 育児、介護などを男女が共に担うための制度やサービスなどが整備されていないから
- 男女の平等について、男性の問題意識がうすいから
- 能力を発揮している女性を適正に評価する仕組みが欠けている
- 男女の差別を人権の問題としてとらえる意識が薄いから
- 専業主婦に有利な税制や社会保障制度などが男女の役割分担を助長しているから
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日本の格差の現状と課題
続いて、日本の格差の現状と課題について見ていきましょう!
ジニ係数から見る格差

日本の格差の現状は、ジニ係数がひとつの指標となっています。前述の通り0に近いほど完全な所得の平等、1に近いほど一部の世帯が所得を独占している不平等な状態を指します。
日本ではジニ係数が2種類、「当初所得」と「再分配所得」があります。
所得税や社会保険料を支払う前の雇用者所得
当初所得から差し引き公的年金などの現金給付や医療や介護などの現物給付を加えたもの
厚生労働省によると2017年に行われた日本のジニ係数は
- 当初所得ジニ係数 0.5594
- 再分配所得ジニ係数 0.3721
という結果になりました。
当初所得ジニ係数は0.5を超えていることがわかりますね。
日本では一部の富裕層に所得が集まることを示します。
所得の格差に加え、日本では貧困層の現状においても知る必要があります。
日本では相対的貧困が問題となっている
日本で貧困?と少し驚かれた方もいるかもしれませんが、実は高齢者層とひとり親世帯に増加しています。

キャロライン・ケネディ元駐日米大使は2014年に日本の現状を「日本は仕事をしても貧困率が下がらない唯一の国」と述べました。
OECDのデータから分かるように、世界のひとり親家庭の相対的貧困率は50.8%、ワーストです。
なぜこのようなことが起こるのかというと、それは日本独特の賃金体系にあります。
- 10(男性正社員)
- 8(女性正社員)
- 6(男性非正規)
- 4(女性非正規)
成人男性の賃金を10とした場合、非正規雇用で働く女性は4割程度、昭和の高度成長期にできたモデルが今も続いているのです。
一方でデンマークやフィンランドをみると、相対的貧困率は低くなっています。
この違いは、同一労働同一賃金制度です。
欧州では、同じ仕事内容なら性別関係なく時間あたりの賃金格差がないというのが一般的です。賃金に違いが出てくるといえば労働時間の長短によるものです。
正規雇用と非正規雇用によって格差が生まれている
日本ではどうでしょうか。
日本では同一労働同一賃金法が2020年4月から適用されましたが、正規雇用と非正規雇用という区分があるがために格差は消えずにいます。(※10)
法があるからといって、雇用形態によって分けられているため、完全に格差がゼロとなったわけではないようです。
各国で憲法により、人権の村長や法の下の平等が説かれているのにもかかわらず、実際には差別や偏見が招く格差が解消されないのは、声をあげる機会がないケースや個人が不平等に気がついていないケースがあるのです。
目標10の解決は、他の目標のゴールである貧困や飢餓、児童労働などの社会問題解消などの大きなステップとなります。
では、SDGs全体をゴールにつなげるために、目標10にはどのような解決策があるのかというお話に移っていきましょう。
>>日本の雇用の不平等・格差…現状についてはこちらの記事
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世界で起こっているさまざまな格差・不平等の問題。解決策はあるの?
国同士、国内においても格差や不平等の問題は広がっています。解決策はあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
国を超えて考える移民の問題
移民問題とは、合法的に入国したとしても移住先や就業、賃金格差、社会保障が受けられないという不平等です。
2019年時点で世界の移民は2億7,200万人、世界人口の3.5%を占めています。
移民理由はさまざまです。
- 元々の国の制度による所得格差や選択の不自由からの求職による移民
- 内戦被災による貧困からの移民
- 政治不安や紛争からの脱出
移民先での不平等の要因は、
- 不法入国が後をたたないため移民政策に反対する団体が出てくる
- 生涯税金を払い続けるか不明な移民に対して自国の負担を増やしているという考え方がある
- 治安悪化のおそれ
これに対しての解決策として、名城大学が「外国人との共生がもたらす未来と、そのメリット」をドイツの移民社会を例に移民受け入れの必要性が書かれています。(※11)
- 日本の人口減少を食い止めるきっかけとなり少子高齢化対策となる
- 日本語教育と日本語教師の養成を強化する
- 外国人を受け入れることで経済的にプラスに働き、ビジネスにおいては新しい風が吹く
- 日本国内においてグローバル化をめざせる
上記は日本国内において移民受け入れをすることで得られるメリットですが、世界に目を向けても同じように考えることができます。
2億7,000万人の移民がもたらす影響はとても大きなものです。
不法入国や不法雇用などネガティブな側面が報道されがちですが、人材不足の解消やグローバル化、少子高齢化対策など世界的に見たメリットを報道することが不平等解決に向かうのです。

セクシャルマイノリティの不平等や差別
「性のありかた」を理由に差別や不利益を受けているのは女性と捉えられがちですが、そうではありません。
LGBTや、LGBTQという総称も目にするようになりましたが、Facebookアメリカ版の性別欄は58種類あります。

Facebookでは、「トランスジェンダーの方々や男女という性別にあてはまらない方々が、フェイスブックというプラットフォームで自分のありのままのアイデンティティを表現することを応援しています」とコメントしています。
そもそも性の認識は個人によって異なり、枠にはめてカテゴライズすること自体が違和感だと理解する人が増えてきているのです。
ジェンダー格差
世界の中でも女性差別が根強いインドでは身分の違いから二重の差別に苦しんでいます。
根付く宗教身分制度のカースト最下層の少女たちはまともに教育を受けることができず格安の賃金で労働を強いられ、性的暴行の被害者になることも珍しくありません。

上記はインドで通報のあった件数ですが、残念ながら実際の発生件数はデータに示されるよりもはるかに多く、被害者本人が被害届を出せないケースが問題となっています。
なぜ被害届を出せないのか。
その理由は性的暴行被害に対するインド社会の偏見はすさまじく、自分や家族が恥辱を受けるなど偏見の対象となり、勇気を出して名乗り出たとしても加害者よりも非難されることにあります。加害者よりも被害者が責められる社会、信じがたいでしょうが事実です。
そんな理不尽極まりない社会を変えるために立ち上がったのは修道女シスター・チャンドラでした。
彼女はシャクティ・フォーク・カルチャーセンターを立ち上げ差別や偏見のない社会づくりに貢献したのです。
- ダリットの少女たちを受け入れるセンターをつくる
- 少女たちに民族舞踊を教え舞踊団を組織し公演活動をする
- 差別や偏見を受けてきた少女たちに自信をもたせ、問題を社会に訴える
古くからダリットで信仰されてきた土地の前で少女たちは踊り、芸術的な力を引き出します。それまで受けてきた抑圧から解放されるように、抑圧を受けてきたことを象徴する太鼓・パレイを鳴り響かせます。
差別と偏見を社会に訴えかけること、差別を受けてきた人々が自信を持つこと、ダリットの少女たちの舞踊はこの2つを同時に叶える手段となったのです。
人種差別
2020年5月、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが偽札を使用した疑いで白人警察官に首を抑えられ窒息死した事件がありましたね。
世界中で起こっている黒人差別の反対運動のきっかけとなりました。

2013年から2019年の統計によると、
- アメリカ人口の76.3%が白人
- アメリカ人口の13.4%が黒人
白人人口が多いにも関わらず、黒人は白人より警察に殺害される確率が3倍に膨れ上がるのです。
また、警察の偏見により黒人男性は白人よりも職務質問されやすく身体検査をされる傾向にあります。
人種差別には中立だ、と主張するだけでは差別社会はなくなりません。
差別解消に求められる行動は、大きな行動でなくても自分ひとりでできる行動から始められます。
- 人種差別について固定観念はないか、自分の価値観を分析する
- 身近な人と人種について話してみる、考え方の違いを知る
- Black Lives Matterなど人種差別解消団体の募金や署名に携わる
差別や偏見は個人の固定観念が集まって社会となって生まれるのです。
黒人への差別の撤廃を訴える公民権運動の指導者であり、非暴力を唱えたキング牧師の言葉に次のものがあります。
「最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である。」
“The ultimate tragedy is not the oppression and cruelty by the bad people but the silence over that by the good people.”
何もしないということは黙認するということです。
ニュースやメディア、他者の固定観念など外部の影響を受けずに自らが考えることが人種差別を解決するのです。
働いても稼げない不平等な現実

働いた分だけ正当な賃金がもらえる。
というのは私たちの生活の中では当たり前の権利ですが、世界に目を向けてみるとそうではありません。
たとえば私たちが毎日着る衣類・コットン。
世界70カ国で1億世帯がコットン生産に従事していて、そのほとんどはインドや西アフリカ、パキスタンといった開発途上国です。
コットン業界は先進国に有利になる不平等な構造が存在し、生産者は非常に低賃金で労働を強いられています。インドでは親の借金を返すため、家計を助けるために少女が働かされ児童労働が社会問題となっています。
コットン畑で働いた少女の賃金は日給30ルピー(日本円で75円)程度。
さらにコットンに使われる殺虫剤や農薬で中毒死や健康被害で苦しみ、治療代としてさらに借金を重ねてしまい教育を受ける機会もありません。
人々が平等に正当な賃金を受け取るには、公正な取引が行われているフェアトレード商品を購入することが私たちがすぐにできる行動です。
消費者がものを購入する際に、この商品はなぜ安いのかを考える必要があります。
フェアトレードに関しては後ほど詳しくご説明しますが、コットンだけでなくコーヒー、チョコレート、お茶、スポーツ用品などさまざまな商品が存在します。
世界中で広がる不平等や格差、偏見に対する対策は、ひとりひとりの固定観念の除去から始まり、社会全体で不平等をなくしていくことが重要になってきます。

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SDGs10「人や国の不平等をなくそう」に対して個人でできること・私たちにできること
ここまで見てきたように、SDGs10は多くの問題を抱えています。では、この目標を達成するために、私たち個人でできることはあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
寄付してみよう
「個人ができる行動」と聞いて真っ先に思いつくのが「寄付」ではないでしょうか。
小学校のときは毎年「赤い羽根募金」があったり、コンビニなどのレジ横に募金箱があるなど、寄付は私たちにできる一番身近なアクションです。
けれど、目標10を達成するためにどんなところに寄付したらいいの?と聞かれるとすぐに答えられる人は少ないかもしれません。
そこで、目標10に取り組む団体を5つご紹介します。
どんな団体があるの?
国内外で活動する以下の団体について紹介していきます。
・公益財団法人 日本ユニセフ協会
・公益財団法人プランインターナショナル・ジャパン
・公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
・一般財団法人 あしなが育英会
・認定NPO法人抱樸
団体の活動内容
◆公益財団法人 日本ユニセフ協会
190の国と地域で、主に子どもの貧困を解決するために活動する「ユニセフ」の日本における公式機関です。「世界中の子どもたちの命と健康が守られる世界」を目指しています。
ユニセフの活動を支援する方法の1つが、「ユニセフ・マンスリーサポート・プログラム」です。
月々の寄付金額を自分で設定し、定期的に活動を応援できるといった内容です。この寄付金は、子どもに安全な水や栄養治療食を届けたり、教育の支援などに使われます。
◆公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
プラン・インターナショナルは、世界70カ国以上で、女の子や女性に特化した支援を行う国際NGOです。「子どもの権利を推進し、貧困や差別のない社会」を実現するために活動しています。
貧困問題は世界中に存在しますが、その中でも女性は特に弱い存在です。プラン・インターナショナルでは、教育や仕事の面で不利な状況に置かれがちな世界の女性をサポートしています。
例えば、インドやバングラデシュなど、女の子が若すぎる年齢で強制的に結婚させられることが問題となっています。プラン・インターナショナルでは、この問題に取り組み、バングラデシュでは200件の「早すぎる結婚」を阻止しました。
月々3,000円から寄付を受け付けているので、興味関心のある方はぜひ公式サイトをチェックしてみてください。
◆公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
1961年に発足した国際人権NGOアムネスティは、「すべての人が世界人権宣言にうたわれている人権を享受でき、人間らしく生きることの世界の実現」を目指して活動しています。
ロゴマークの有刺鉄線は「自由を奪われた人々」、ろうそくは「暗闇を照らす希望」を表しています。無実または不当な理由で投獄された人を解放する活動が、「自由、正義、そして平和の礎をもたらした」として、1977年にノーベル平和賞を受賞しました。
寄付は、
- 1回限り
- 毎月(月1,000円~)
の2パターンから選べます。
◆一般財団法人 あしなが育英会

日本には遺児が40万人いると言われています。あしなが育英会では、
や、を奨学金、教育支援、心のケアで支えています。
- 病気や災害、自死(自殺)などで親を亡くした子どもたち
- 障害などで親が働けない家庭の子どもたち
に対して、奨学金、教育支援、心のケアで支えています。親がいないことや収入の格差が、そのまま教育の格差につながっていいはずがありません。
以下の記事でも紹介したとおり、子どもが教育を受けられないことは日本全体の損失につながります。

あしなが育英会では500円から寄付できるようになっており、その都度または毎月の寄付を選べます。
◆認定NPO法人抱樸(ほうぼく)
抱樸は1988年より北九州を拠点に、生活困窮者の支援をしている団体です。「誰も取り残されない社会、誰もがありのままの状態で受け入れられる社会」の実現を目指しています。
厚生労働省の調査によると、平成30年時点で日本にいるホームレスの数は4,977人でした。
抱樸では、ホームレスの支援として炊き出しや居住支援、就労支援、さらには障害福祉や刑務所出所者への支援など、幅広く活動しています。
抱樸では、その都度の寄付や月1,000円からの毎月の寄付を募集しています。
目標10「人や国の不平等をなくそう」はとても広いテーマで、世界で活動する団体、日本の問題解決に取り組む団体などさまざま。
まずは、あなたの関心のある分野や団体をチェックしてみてくださいね。
ボランティアに参加しよう

寄付は単純にお金を支払うことですが、私たちが実際に行動することで支援できる方法もあります。ここでは目標10の達成に向けたボランティア活動をご紹介します。
炊き出しボランティア
前述したNPO法人抱樸では、炊き出しとパトロールのボランティアを募集しています。
炊き出しを行うことは、単に食事を提供するだけが目的ではありません。ホームレスの方が生活する場所を訪問し、安否を確認する意味もあります。これを継続することで顔や名前を覚えてもらって信頼関係を築いていくことができるのです。そうすることで抱樸の活動内容を知ってもらって、炊き出し以外の活動も利用してもらえることにつながります。
路上生活とは食事の面だけではなく、精神的なサポートも必要なのです。
抱樸以外にも、ホームレス支援を行っている団体は全国にあります。「炊き出し ボランティア 地域名」で検索して、お近くの炊き出しに参加してみてはいかがでしょうか。
日本語ボランティア
さまざまな理由で日本に移り住んだ外国人はたくさんいます。出入国在留管理庁によると、2020年12月末の在留外国人数は292万8,940人でした。
中には親と一緒に日本に来たけれど、日本語がわからず学校の授業についていけなくなり、進学することができない子どももいます。そのような外国人を支援すべく、各地で日本語ボランティアを募集しています。
内容はさまざまで、定期的に教室で教えている場合もあれば、
- 保育園や行政窓口等の公的機関での通訳
- 手紙やかんたんな資料の翻訳
などを行うボランティアを募集している機関もあります。また、プライベートレッスンでボランティアと生徒をマッチングしている団体もあり、カフェなどお互いの都合のいい場所で教えることも可能です。
各地の国際センターなどが情報を提供していますので、お近くの情報を探してみてくださいね。
ここで挙げた以外でも、先程寄付の項目で紹介した団体など、ボランティアを必要としているところは多くあります。
ボランティア活動に参加することは、単にその団体の手助けになるばかりでなく、遠かった問題を「自分事」として考えられるようになるメリットもあります。他人事ではなく、自分事として捉えることができれば、自然と毎日の行動が変わるはずです。
気になる団体を見つけて、積極的にボランティアに参加してみてくださいね。
ソーシャルグッドな買い物を意識しよう!
普段あなたが何気なくしている買い物は、「投票」です。
その商品が自然環境を破壊して作られたものなのか、それともあなたがその商品を買うことで弱い人をサポートできるものなのか、知る必要があります。それを知った上で、社会的によい商品を選ぶことで、活動を応援することができます。
以下、買うことで社会的によいインパクトになる商品を2つご紹介します。
- フェアトレード商品を買う → 開発途上国へ公正な賃金を支援
- 雑誌「ビッグイシュー」を買う → ホームレス支援
次で詳しく解説していきましょう!
フェアトレード商品の購入

先述したようにフェアトレードとは、公平・公正な取引と認定された商品を指し、該当の商品には画像のロゴマークがついています。
フェアトレード商品を購入することによって、児童労働や不当に労働力を搾取することに加担するこなく、生産者の安定した生活を支えることができるのです。
最近では、スーパーやコンビニでもフェアトレードラベルつきの商品が見られるようになってきました。コーヒー、チョコレート、紅茶など、宝探しをするように、お店で探してみてくださいね。
認定NPO法人日本ビッグイシュー基金
ビッグイシューは1991年にロンドンで発足、日本では2003年に創刊された雑誌です。「誰もが排除されない、すべての人が生きやすい社会、特に若い世代が希望をもって生きられる社会を作るのに役立つ情報発信」をコンセプトに活動しています。
販売者は、路上で生活しているか、安定した自分の住まいを持たない人々です。1冊450円の雑誌を売ると、半分以上の230円が販売者の収入となる仕組みです。
私も路上で販売する人から、何度か購入したことがあります。有名人が表紙を飾っていたり、インタビュー記事があったりして、「ホームレス支援」というだけではなく、読み物として充実した内容となっていますよ。
サイトからどこで販売しているのか探すことができますので、お近くにあれば一度購入してみてはいかがでしょうか。
学ぶ、知識を身につける
目標10「人や国の不平等をなくそう」ですが、私たちに知識がないことから無意識で差別してしまったり、不平等を生み出してしまっていることもあるかもしれません。
世界の状況は刻々と変わっています。その時々の最新情報を得て、私たち1人1人が常に学び続ける必要があるのです。そして知識を得ることで、防げることがたくさんあるはずです。
イベントやセミナーに参加する
多くの団体やNGOで不平等に関する啓発イベントやセミナーを開催しています。
最近はコロナ禍の影響もあり、オンラインでイベントを開催する団体が増えています。自宅から参加できるので、以前より参加のハードルはグッと下がっているかもしれませんね。
以下のイベントもチェックしてみてください。
メルマガやSNSで学ぶ
今までに紹介した団体の中でも、メルマガやSNSで定期的に情報発信している団体がたくさんあります。
メルマガは登録するだけ、SNSはフォローするだけで、自分の好きな時間やスキマ時間に活動をチェックすることができるので、とても手軽ですよね。
「SDGsについて勉強するぞ!」と意気込んでも疲れてしまったり、続かなったりする場合もあると思います。手軽な行動から始めて、継続することが大事です。そのためにも、メルマガやSNSはとてもよいツールではないでしょうか。
発信する
最後に紹介するのは、SDGsを身近な人と話すことや、発信することです。
日本人は、欧米人に比べて社会的、政治的なことをあまり話さない国民性だと言われています。この状況を変えるためにも、家族や友達などと積極的に話すことで、身近な人と一緒に社会・政治への意識を持つきっかけづくりをしてみてはいかがでしょうか。
家族や友達と話してみる
自分では当たり前だと思っていたことも、意外と知られていないこともあります。この記事で学んだことや、他の団体のサイトを見て知ったことなど、積極的に身近な人と話してみてください。
身近な人とSDGsについて話すことで、お互いの知識が深まるし、さらに疑問が出てきてもっと調べようと思えるかもしれません。
SNSで発信する
学んだことをSNSで発信するのもいいでしょう。身近な人と話していたことが、SNSを使うことで多くの人に拡散することができます!
団体やNGOの中には、「ハッシュタグをつけてSNSに投稿してください」と呼びかけているところもあります。プラン・インターナショナルでは以下のハッシュタグをつけて投稿することを呼びかけています。
- #プランインターナショナル
- #女の子だから
- #BecauseIamaGirl
>>トップに戻る場合はこちら
SDGs10の達成に向けた日本の企業・団体の取り組み事例
SDGs10の達成に向けて、日本の企業も取り組みを進めています。身近にもこれらの企業が展開する商品があるかもしれません。ぜひチェックしてみてください。
ピープルツリー
途上国の製品や原料を適正な価格で販売し、消費者が持続的に購入する仕組みをフェアトレードといい、そうした仕組みで商品を扱う代表的な専門ブランドが「ピープル・ツリー」です。
ピープルツリーを運営するのはフェアトレードカンパニー株式会社の母体であるNGO「グローバルビレッジ」です。
アフリカ・ナミビアでフェアトレードのアイテムを作る女性に出会ったことがきかっけで1991年に日本で創設されました。
おしゃれでかわいいフェアトレード商品を販売
おしゃれでかわいい服や雑貨、プレゼントしたくなるような食べ物など、ピープルツリーでは日々の暮らしを楽しむ商品を販売しています。
・環境配慮
・手仕事推進
・自然素材を使った商品開発
ピープルツリーで紹介する製品はすべて自然素材のもので手仕事によって仕上げられたものです。生産に関わる人への敬意、自然素材への敬意、環境保護を目指しています。
・バングラデシュ
・インド
・ネパール
・トルコ
・フィリピン
・ボリビア
・ペルー
発注時に必要に応じて発注額の50%を前払いし、小規模農家や生産者団体が資金繰りができるようにしています。
ピープルツリーの商品が購入され得られた利益は、貧しい家庭の子どもたちが通う学校や地域開発にあてられます。
フェアトレードは環境問題と人権問題をビジネスの側面から解決する糸口なのです。
>>ピープルツリーほか、エシカルなファッションブランドは…こちらの記事
丸井グループ
足のサイズは人それぞれ、大きい人もいれば小さい人もいます。
一般的な靴のサイズ設定では日本人の足のサイズの約7割しかカバーできていません。
足が大きい小さいという身体的特徴から履きたくても履けないという問題が生じていて、大きいサイズが見つかったとしてもおしゃれさがなかったり、履き心地がよくなかったりと満足とは程遠いものでした。
「すべての人が心地よく靴を選べるように」と、丸井グループは靴を求める人が自分にぴったりの靴を履けるようにすべく、従来の業界標準だった7サイズから16サイズへと大幅に拡大したのです。
すべての人が自分にぴったり合う靴選びができる

その名もカバー率100%の「ラクチンきれいシューズ」。女性が靴へ求める「おしゃれ」「履き心地」「価格の手頃さ」のすべてを叶えたのです。
- 日本人成人女性の従来のサイズ展開 20.5~26.0cmの7サイズ
- ラクチンきれいシューズのサイズ展開 19.5〜27.0cmの16サイズ
これまで望むデザインで履けるサイズの靴がなかった人たちも、この靴によって救われています。
ここでサイズを増やすことへの問題として考えられるのは大量在庫・廃棄が出るのではないかということですね。廃棄物の削減はSDGsの課題でもあります。
そこで丸井グループは、お店でサンプルを試着しWEB通販で注文・購入するという仕組みを導入。
在庫をもたずに済むように問題をクリアしました。
配送と返品が減ることでトラックによるCO2が減り、環境負荷への削減も期待されます。
身体的な特徴から不平等さを感じる人もたくさんいて、それを解消することで消費者ニーズを叶えることができるのです。

シサム工房
シサム工房は、1999年に京都郊外で小さなシェアトレードショップとして誕生した会社でです。社名の「シサム」とはアイヌ語で「隣人」という意味。同じ地球上に暮らす人たちと「良き隣人」としてつながっていきたいという想いがこめられています。
シサム工房では、衣料・小物・インテリアなどクオリティの高いオリジナル商品開発を行い、販売しています。シサム工房の商品は、とてもファッショナブルでかわいいものばかり。
そして注目したいのが、取り扱う商品のほとんどがフェアトレードであることです。
フェアトレードは公平な取引を行う貿易の仕組み。これまで生産者へはわずかな金額しか支払われなかったため、人間らしい生活を送れませんでした。そこで適正な金額を支払うことが保証されています。
フェアトレードによって販売された商品を購入することで、社会経済的に立場の弱い人たちを支援できる仕組みです。
しかし、社会貢献活動だけに留めていては、会社自体の利益に影響が出るため、存続することはできません。シサム工房は「フェアトレードの現場に商品開発力と販売力を!」をスローガンに掲げ、社会的事業と経済活動の両立を目指し、事業を拡大してきました。
現在は、京都・大阪・神戸・東京に8店舗と、オンラインショップを運営しています。
WFTOの正式メンバーに
シサム工房は、2021年7月にWFTO(World Fair Trade Organization「世界フェアトレード連盟」)の正式メンバーとして認証されました。WFTOは世界中のフェアトレード組織が集う国際的なネットワークであり、シサム工房は数々の厳しい基準をクリアした末に認定されました。
シサム工房のフェアトレードパートナーは、タイ、フィリピン、インド、ネパールなど13か所(2021年現在)。女性たちに適正価格の仕事を提供したり、現地の伝統工芸を守るなどの役割を果たしています。
UNROOF JAPAN
じょっこ株式会社が運営するUNROOF(アンルーフ)は、2017年東京・久米川で設立。精神・発達障がいのある方々を革職人として採用し、最初は委託された革製品の製作を行っていましたが、2019年からオリジナルブランドをスタートしました。
「UNROOF」とは「天井がない」という意味。障がいがあるだけで仕事の選択肢が制限される社会を、「障がいがあっても自分の可能性を信じられる社会」へと変えていくことを目標に掲げています。
障がい者と健常者の線引きをなくしたいという思いから、あらゆる「ボーダーがない」ことをコンセプトとし、
- 右利き、左利きの仕様
- 性別関係なく使えるデザイン
- 選べる金具やカラーベルト
といった商品を展開しています。
障がいがあっても働ける環境づくり
2018年度の厚生労働省調査によると、日本の精神障がい者総数は398万1,000人。うち仕事に就いている人は推計20万人です。実に100人に5人しか仕事に就くことができていません。※1
また、仕事に就いても賃金は、精神障がい者は12万5,000円、発達障がい者は12万7,000円と、一般の労働者よりも著しく低い傾向です。
UNROOFでは、このような社会の現状を変えるべく、精神・発達障がいがある人たちにとって働きやすい職場を作ることを目標に、以下の理念を掲げています。
- 経済的自立ができる
- 仕事内容や経済面でもステップアップが可能
- 合理的配慮のされた環境
最低限生活ができる賃金を保証し、スキルを身につけ給与のステップアップができる環境を整えています。また、休憩を取れるスペースの確保、精神保健福祉士との定期面談を設けるなどの配慮も行っています。
日本航空株式会社(JAL)
日本を代表する航空会社であるJALグループでは、2014年に「ダイバーシティ宣言」を発信しました。
JALの掲げる「ダイバーシティ宣言」
性別・年齢・国籍・人種・民族・宗教・社会的身分・障害の有無・性的指向・性自認・出身会社などの属性によらず、誰もが生き生きと活躍できる会社を目指しています。
具体的には、以下の取り組みを行っています。
- 女性リーダーの育成と輩出
- グローバル人財の育成
- LGBTQへの理解促進
- 障害者雇用
- シニア従業員の再雇用

日本では低い女性管理職の比率がたびたび問題として挙げられますが、JALグループでは、「2023年度末までに管理職女性比率20%、2030年度末までに30%以上を達成する」という数値目標を掲げています。
その結果、2015年には15.6%だった女性管理職の比率が、2019年には18.4%と着実に増加しました。
また、JALグループではLGBTQへの理解促進にも力を入れています。異性と法律上の結婚をしている従業員(およびその配偶者と家族)に適用する制度を、会社の定める同性パートナー登録を行った従業員(およびそのパートナーと家族)にも同様に適用する制度を導入しています。
日本の法律上では、同性パートナーは未だ認められていませんが、JALグループでは率先して社内制度を整えているのですね。

さらには社内外の理解促進のために2019年、国内初の「JAL LGBTチャーター」も実施しました。
LGBTへの理解促進を図るイベント「ピンクドット沖縄2019」に合わせて羽田~那覇間を運航したこちらのチャーター機。機内では、LGBTの専用ヘッドレストカバーがつけられ、LGBTを表わす虹のフォトフレームを使った記念撮影、当事者によるトークイベントなどが開催されました。
取り組みへの評価
JALグループの活動はさまざまな課題解決に貢献しているとして、広く評価されています。
2018年には「新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞。2021年には、「2021 J-Winダイバーシティ・アワード」企業賞と個人賞を受賞しています。
三承工業株式会社(SUNSHOW GROUP)
岐阜県の三承工業株式会社は、新築注文住宅を提供する建築事業を中心に、外構事業、 メンテナンス事業などを手掛ける会社です。
岐阜県の外国人比率は全国で4位の1.772%、支店がある美濃加茂市においては県内トップの7.654%です。このような地域特性の中、SUNSHOW GROUPでは外国籍の方のマイホーム取得を積極的に応援しています。
外国人にとってハードルの高いマイホーム購入を応援
日本に住む外国人の数は、2016年には約231万人と過去最高を記録しました。一方で、増え続ける外国人へのサポートは足りていません。
法務省の調査によると、「外国人であることを理由に入居を断られた」経験のある人は 39.3%、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」経験のある人は 41.2%、「『外国人お断り』と書かれた物件を見たので、あきらめた」経験のある人は 26.8%でした。
外国人にとって、賃貸物件の部屋を借りることや住宅ローンを組むこと、土地の購入などを断られることが多いのが現状です。
SUNSHOW GROUPでは、低価格高品質な注文住宅「SUNSHOW夢ハウス」の提供をはじめ、外国人のマイホーム取得を積極的に応援。現在では、顧客の約2割を外国人が占めるようになりました。
2018年には、JR岐阜駅内の商業施設にSUNSHOW GROUPの情報発信基地を開設し、家づくりの提案やDIY教室、ワークショップなどを開催しています。他にも、各言語のパンフレットや資料、通訳の配置など、広く対応できるような運営体制を整えています。
一般社団法人ラバルカグループ
愛知県豊橋市で2003年に事業を開始、2014年に久遠チョコレートを立ち上げたラバルカグループ。
代表の夏目浩次氏が「障がい者の全国平均月収1万円」という事実に衝撃を受けてスタートしました。今では、全国38拠点28店舗を展開し、約500人いる従業員の半数を障がい者が占めています。
久遠チョコレートが生まれた背景
最初はパン工房からはじめたものの、パンは工程が複雑で障がい者には簡単ではない作業だったと言います。そのため当初は赤字続きだったとのことですが、試行錯誤の末にパンに比べて工程がそれほど複雑ではなく、利益率も高い「久遠チョコレート」が誕生しました。
久遠チョコレートは、ショコラティエの野口和男氏に監修を受け独自に商品開発を行い、チョコレート、半生菓子、焼き菓子などバリエーション豊富に展開しています。中でも、全国に店舗がある強みを生かし、各地の名産を使った久遠テリーヌが人気です。
障がい者にも適切な賃金を

「障害者は単なる社会貢献の一対象者ではない。彼らと共に、次なる成熟社会を創っていく」という理念を掲げているラバルカグループ。障害者の月給は直営店で15~16万円、フランチャイズ店でも平均6万円となっています。
また、障害者だけではなく、子育て中の女性や社会の中で悩みを抱える若者など、多様なバックグラウンドを持つ人の雇用促進と賃金向上、地域活性化に取り組んでいます。
こういったラバルカグループの取り組みが評価され、2018年第2回ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞を受賞しました。
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SDGs10の達成に向けた世界の企業・団体の取り組み事例
最後に、世界で実際に行われている取り組み事例を見ていきましょう。
世界で、といってももちろん日本も参加しているため、日本にいながらも地球市民として参加可能です。さっそく見ていきましょう!
サプライチェーンに透明度を。世界フェアトレード連盟(WFTO)

WFTO(世界フェアトレード連盟)とは、開発途上国の立場の人々の自立を生活環境の改善を目指す世界中のフェアトレード組織が結成した国際ネットワークです。(※12)
WFTOに加盟する世界72カ国(2018年時点)と、欧米、日本、アジア、アフリカ、中南米の生産者団体が323団体が加盟し、各国の情報を共有しながら公正な貿易取引の普及を目指しています。
毎年5月第2土曜日にWFTOでは世界フェアトレード・デーというイベントやキャンペーンを開催し、5月を世界フェアトレード月間とし、加盟していない人たちも参加ができます。
世界フェアトレード月間の活動
フェアトレード月間に行われる活動を紹介します。
◆ピープルツリー
ピープルツリー では毎年5月第2土曜日に東京・丸ビルでバングラデシュやケニアの生産者団体をゲストに迎え、ファッションショーやフェアトレード・マーケットなどを開催
◆フェアトレード・ラベル・ジャパン
フェアトレード商品の購入(コーヒーやチョコレート)、フェアトレードを人に伝える(食べた、飲んだ、買った等)、個人がアクションを起こすイベント
◆フェアトレード・フィルム・フェスティバル
東京渋谷の映画館UPLINKでは「世界フェアトレードデー」(5月の第2土曜日)に合わせて、映画やトークショーを通じてフェアトレードを伝えます。
世界フェアトレード月間は東京だけでなく地方でもイベントが行われます。
もしお近くでフェアトレードイベントが開催されているかチェックしてみてください。
検索方法は、世界フェアトレードデー・お住まいの地域で見つかります。
ファッションレボリューション
おしゃれな服を安く買うことができたら誰でも嬉しいですよね。
けれどもなぜ安く買えるのか考えたことはありますか。
2013年4月、バングラデシュの繊維工場「ラナ・プラザ」のビルが突然崩れ、1,100名の労働者が亡くなりました。(※13)
崩壊した工場の施工品質は悪く、コンクリート強度は規定値の半分以下の30%、そんな危険な環境の中で労働者は低賃金・長時間労働を強いられていたことが判明しました。
ファッション業界のサプライチェーンの仕組みを知り、誰がどんな場所でどのように作られたのか透明度をあげよう、消費者が何を買うべきか考えようと始まったのが「ファッションレボリューション」になります。(※14)
世界の一流モデルやメーカーが先頭に立ち、世界90カ国以上の国が参加するムーブメントとなりました。
ファッションレボリューションは、買い手と作り手の両方の立場から参加ができます。
購入した服のタグを写真に撮りハッシュタグ#WHOMADEMYCLOTHESとタグ付けしSNSヘアップ
ハッシュタグ#IMADEYOURCLOTHES と自分の写真をアップ
1つの服に込められた思いやストーリー、誰がいつどのように作ってきたのか、ファッション業界の透明度が上がることで、低賃金で労働を強いられている人々を救うきっかけとなるのです。
このように、日本を含め世界の企業や団体で不平等をなくすためにフェアトレードイベントやトークショーが行われています。
また、丸井グループのシューズのように選択肢の平等を叶えることもまた今後さらに多くの企業に求められる対策でしょう。
まとめ
人間は、不平等があるがゆえに、プライドを傷つけられ物事の達成意欲が低下し生きる気力さえも失ってしまいます。
不平等がある以上、貧困や飢餓の削減は困難になりSDGs全体のゴールから遠ざかってしまいます。
世界で起こっているさまざまな不平等を示すと、
- 移民
- ジェンダー格差
- 雇用格差
- 賃金格差
上記のような不平等が起こる背景は、性別、年齢、障がい、人種、民族、階級、宗教の違いからです。
自分と他者は、育ってきた環境も言葉も考え方も違います。
そうした違いを認め合うことが、不平等をなくす一歩なのです。
SDGs目標10は、国と国との間、また国の中での不平等をなくすことで経済発展や貧困解決をめざし、SDGs基本理念である「すべての人々とともに」を強く反映させます。
私たちの話し方や伝え方、物事の進め方や価値観に関しても不平等はゼロではありません。
不平等をなくすには、個人の価値観を整理することから始まります。
何が不平等で、どうなることが平等なのか、周りの人と話し合ってみましょう。
コミュニケーションは受け取った側の感情で決まります。
あなたが人と会話をする際、差別や偏見を持っているつもりでなくても、受け取った相手が不平等を感じてしまったのならば、「差別された、偏見の目で見られた」となります。
人と人のコミュニケーションはとても繊細。
身近な場所から不平等をなくすには、
- 身の回りにある差別や偏見を見つけてみる
- 自分が差別していないか考える
- 自分が差別されていないか考える
- 個人の価値観を身近な人と話し合ってみる
さらにアクションとして、フェアトレード商品を見つける、購入してみる、イベントが開催されれば参加してみる、につなげます。
個人を大切に思う気持ちが、差別や偏見、不平等をなくす一歩です。そこから世界で起きている不平等を現状を共に打破していきましょう!
参考文献
※1 http://www.kfaw.or.jp/wp-content/uploads/2019/05/KFAW_workingpaper_2018_3_Oda.pdf
ターゲット引用:https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/10-inequalities/
※2 https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/10-inequalities/
※3 https://oxfamilibrary.openrepository.com/bitstream/handle/10546/620170/bp-economy-for-99-percent-160117-en.pdf;jsessionid=61EB5E7D17257E1012E30EFE71849216?sequence=1
※4 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/031700177/
※5 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35065400W8A900C1000000/
※6 https://data.oecd.org/inequality/income-inequality.htm
※7 https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2021
※8 https://www.works-i.com/column/teiten/detail028002.html#:~:text=%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AE%E8%B3%83%E9%87%91%E6%B0%B4%E6%BA%96%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B,%E4%BE%9D%E7%84%B6%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%84%EF%BC%88%E5%9B%B31%EF%BC%89%E3%80%82&text=%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%A7%E3%82%82%E3%80%811%E5%89%B2%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E3%81%AE%E6%A0%BC%E5%B7%AE%E3%81%8C%E7%94%9F%E3%81%98%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
※9 https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/ishiki/kekka2.html
※10 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
※11 https://www.meijo-u.ac.jp/sp/meijoresearch/feature/post_5.html
※12 https://wfto.com/
※13 https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12252383_01.pdf
※14 https://www.fashionrevolution.org/about/