今回みなさまにお届けする内容は、SDGs目標2「飢餓をゼロに」です。
飢餓と聞くとみなさまは「どこか遠い国のお話」という印象を持たれる方が多いでしょう。
実際、飢餓や貧困といったワードは日々の生活の中ではあまり頻繁に出てくる言葉ではないかもしれませんね。
けれども目標2「飢餓をゼロに」は下記5つの区切りで私たちの生活に深く関わってきます。
- 教育
- 仕事
- 経済
- お金
- 人間関係
どの切り口から目を通して頂いてもあなたの人生の変化を起こすきっかけとなるでしょう。
人生100年時代と言われている今、自分自身がどう生きていくか、目まぐるしく変化する環境をどう生きていくか。ライフシフト、まさに生きる力が問われてきます。
例えば子育て中の方であれば、お子さまと一緒にSDGsを学ぶことは今後の未来をどう生き抜いていくかの土台作りになります。経済やお金の区切りでは飢餓をゼロにするというゴールは、食が人々に届くまでの経済の動き、消費者のお金に対する考え方にも関わってきます。
ということは、子供のこれからのお金の使い方や日々の生活の過ごし方など、価値観の土台作りにつながっていきますよね。
SDGs全体で同じことが言えるのですが、いまあなたご自身が深く知りたい切り口から読み進めていくのもいいですし、日々の生活であまり考えたことのない切り口から見ていただいても新しい価値観を得られるでしょう。
不確実な時代だからこそ問われるのは、知識をインプットし、それをアウトプットに結びつける主体性です。
予期せぬことが起きたり不測な事態が起きた場合、人間はその時点で初めて創意工夫をこらします。
- 生き方自体を変えたい
- 小さくても新しい一歩を踏み出したい
- 生きる力を養いたい
- 価値観をアップデートしたい
SDGsを学ぶことは、上記のような「今人生を変化させたい方」にとって大きな転換期となるでしょう。
世界中で起きている問題を初めて学ぶ方にとっても、個人の生活に対する考え方も必ずアップデートされてゆきます。
親子で、家族で、パートナーと、友人と、世界で起きている「飢餓をゼロに」を知り、自分に何ができるのか、自分なら何ができるのかを考え、人生100年時代で生きる力を一緒に養ってゆきましょう。
目次
目標2「飢餓をゼロに」とは?
2020年度に発表された世界の食糧安全保障と栄養の現状(※1)によると、現在地球上では約9人に1人が社会的な生活や生存が困難な飢餓状態になります。
では、飢餓とはどのような状態を示すのでしょうか。
国連世界食糧計画(WFP)(※1) では飢餓を次のように定義しています。
飢餓とは、身長に対して妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要なエネルギー(カロリー数)を摂取できていない状態を指します
国連世界食糧計画(WFP)
生きる上で最低限必要な食糧がない環境が飢餓状態ということです。
SDGsの目標2の「飢餓をゼロに」とは、世界から飢えをなくし、だれもが栄養のある食料を十分に手にいれられるように地球環境を守りながら農業を進めるという目標です。
日本ユニセフ協会によると
- 5.6秒に1人、飢餓によって多くの命が失われている
- 5歳まで生きられない子どもたちは年間560万人
飢餓によって失われる命でもっとも多いのが幼い子どもたちということです。
子どもたちの生存状況は四半世紀で改善されたとはいえ、貧困地域では改善されないどころか増加傾向にあります。
SDGs2番目の目標を構成する8個のターゲット
一口に「飢餓をゼロにする!」というゴールを掲げてもあまりにも壮大過ぎますよね。
飢餓の原因は様々で、アプローチ方法も異なります。
そこで定められたのが8つの具体的なターゲット(具体的な目標と解決方法)。
順番に詳しく見ていきましょう。

2030年までに、誰もが毎日、安全で栄養のあるものを食べられる社会に
“貧しい人も、幼い子どもたちも、みんなが一年中安全で栄養のある食料を、十分に手に入れられるようにするんだね”

特に、幼児・女子・母親・高齢者の栄養不足を解消しよう
“栄養不足で苦しんでいる人たちは幼い子どもや女性、高齢者に多いんだね?”
“鋭い質問だね。栄養を必要とする成長段階の子どもたち、妊娠中や授乳中の女性は特に通常よりも多く栄養が必要なんだよ。2030年までに飢餓をゼロにするための取り組みが進められているんだね!”

2030年までに、小規模食料生産者を支援して、生産性と所得を倍増させよう
“小規模の食料生産者ってどんな人なの?”
“先住民、家族農家、牧畜や漁業をしている人々の生産性と収入を倍にすることだね。そのために、土地や資源、知識を得たり、金融サービスを使ったり、食料を売ったり、農業以外の仕事に就いたりするチャンスを平等に得られるようにするんだよ”

2030年までに、世界中の農業を、何があっても続けられるものに変えていこう
“食料の生産性と生産量を増やし、同時に、生態系を守り、気候変動や干ばつ、洪水などの災害にも強く、土壌を豊かにしていくような、持続可能な食料生産の仕組みをつくり、何か起きてもすぐに回復できるようなレレジリエントな農業を行うってことだね”
“レジリエントな農業って何?”
“困難や被害にあっても自らの力で回復する力をレジリエンスと呼ぶよ。自らが解決方法を見つける力でもあるね!”

2020年までに、遺伝子の多様性を維持し、未来の食料生産を守ろう
“作物の種とか、栽培される植物、家畜の遺伝的な多様性を守る取り組みだね!”
“そうだね。加えて作物や家畜の利用に関して、人類がこれまでに生み出してきた知識や、そこから得られる利益を、国際的な話し合いのもと、公正に使い、分配できるようにするんだよ!”

開発途上国の農業生産能力を高めるための投資を拡大しよう
“国際協力などを通じて、農業に必要な施設や研究、知識の普及、技術開発や、遺伝子の保存、ジーン・バンクに資金をだすってことだね”
“ジーン・バンクって何?”
“「遺伝子銀行」といって生物多様性が失われていることに対して植物の種子や動物の精子や卵子、微生物などのさまざまな遺伝資源を集めて人工的に管理・保存するしくみだよ。ここから遺伝子を集めて保存しなければならないほど生物多様性が危機的状況であることが理解できるね”

農作物への輸出制限や補助金をなくし、公平な貿易を実現しよう
“国際的な約束にしたがって、世界の農産物の貿易で、制限をなくしたり、かたよった取り引きをなくしたりするんだね”

くらしを安定させるために、食品価格の急激な変動をおさえよう
“食料の価格が極端に上がったり下がったりしてしまわないように、市場がきちんと機能するようにしたり、今どれだけの食料の備えがあるのかという情報を、必要な時に見られるようにしたりするんだね”
2. なぜ、目標2がSDGsに必要なのか?
生きる上で食料と十分な栄養は欠かせないものです。
飢餓をゼロにするという目標は生命の根本的な部分であり、SDGsのほかの目標とも大きく関わってきます。
例えば飢餓が起こる原因のひとつに貧困があります。貧困であるがために児童労働を余儀なくされ、必要な教育が受けられない子どもたちが大勢います。それ以外の選択肢がなかった、と幼い頃から選択する権利を奪われているのです。
目標2は、大量消費と大量廃棄の問題の解決の糸口となり得ます。生産と消費のバランスを整えることは飢餓と飽食のバランスを整えることにもつながります。
目標2の飢餓をゼロにすることは、教育、経済、健康に良い影響を与えることにつながり、持続可能な未来を実現させる基本的な部分なのです。
世界の飢餓の現状 ~世界の約9人に1人は飢餓、飢餓人口は3年連続増加~
世界の食料安全保障と栄養(※1)の現状を世界全体で見ると飢餓で苦しむ人は約9人に1人(約6億9,000万人)、世界の8.9%が飢餓状態と報告されています。
いち早く食料生産、分配、消費行動、飽食、食料廃棄などの問題に目を向け考え直すべきです。
このまま放置しておけば2050年には栄養不良により飢餓で苦しむ人口は20億人に達すると言われています。

飢餓人口はMDGsで一時的に減少したにも関わらず再び増加した理由
実はSDGsの前にMDGsの取り組みによって世界の飢餓人口は2000年から2015年までに半減し希望が見えていましたが、2015年以降から再び増加してしまったのです。
逆戻りしてしまった理由として考えられるのは気候変動による洪水や干ばつです。
飢餓をゼロにする目標は気候変動も大きく関わっていることを念頭に置いておきましょう。
飢餓に苦しむ人は世界で6億8,780万人

2020年に報告された「世界の食料安全保障と栄養の現状(※2)」から飢餓人口は2019年に6億8,780万人です。
さらに報告書では現在世界中で人間が健康的な食生活を送るうえで必要な栄養を得られていない人口が30億人と述べています。
グラフの通り、特にアジアとアフリカで90%以上でこの2地域で飢餓が問題になっていることがわかります。
2020年からの感染症によるパンデミック、封じ込めの影響で2030年度の飢餓人口のグラフは変動が出てくる可能性はあるにしろ、開発途上国での飢餓人口が増加する傾向が理解できますね。
このように開発途上国では貧困や飢餓が増加傾向にあるのですが、今必要な栄養素を摂れないことで将来かかってくる代償コストも懸念されています。飢餓状態であるならなおさらです。
みなさまは、値札につけられた値段以外の「隠れたコスト」という言葉をご存知でしょうか。
今生きる上で必要な栄養素を摂取できない状態を続けていると、将来的に病気を患ったり、現代病にかかりやすくなったり、医療コストがかかる可能性が出てきます。
飢餓が続くことによる二次被害です。
体が元気なうちはあまりコストとして現れにくいものですが、将来に支払うことになる医療費はまさに隠れたコストなのです。
気候変動に関しても今の状態を放置しておくと将来莫大な代償コスト、すなわち隠れたコストがかかってくるのです。
2030年までに飢餓ゼロ目標達成が困難になるおそれも
国連によると、2020年7月に発表された報告書の数字は2030年までに飢餓や栄養不良を世界からなくすことが困難になるおそれがあると指摘しており、飢餓をゼロにするという今回の目標2の達成が非常に困難な状況にあるとの見解です。
前述の通り、世界人口の約9人に1人が飢えで苦しんでいる状況と説明しましたが、子どもで見ると4人に1人です。
子どもたちの慢性的な栄養不良は深刻化しており、2019年で1億4,400万人の子どもたちに十分な食料が届いていないという現状です。
成長段階の子どもたちにとって栄養不良は脳や身体機能に発育阻害を引き起こし、体力や免疫力が低下することによる疾患の原因にもなり得ます。
地域別で栄養不足の割合を示したハンガーマップ(2020年)があります。

ハンガーマップによると特に飢餓が深刻化している地域がわかりますね。
- アジアで3億8,100万人
- アフリカで2億5,000万人
- ラテンアメリカおよびカリブ海諸国で4,800万人
中でももっとも事態が深刻なのはアフリカで、アフリカ全体的に飢餓蔓延率が急上昇しています。
国連世界食糧計画(※1)ではCOVID-19によるパンデミックの影響が急性飢餓を引き起こしていると専門家は指摘しています。
ロックダウンや封じ込めで食料調達が困難になり流通システム不足が大きな要因です。
序文では「世界が飢餓、食料不安、あらゆる形態の栄養不良を終わらせることを約束してから5年経った今でも、2030年までにこの目標を達成できる見通しは立っていません」と警鐘を鳴らしています。
日本の飢餓の現状~日本でも飢餓経験率は5.1%(7人に1人)~
飽食と呼ばれる日本でも飢餓が存在していることをご存知でしょうか。
食べられるものを食べずに廃棄するフードロスが社会問題として取り上げられている一方で、日本での相対的貧困率は15.7%(7人に1人)と低くはなく、さらに飢餓を経験した人は5.1%(20人に1人)、二極化という問題がおきているのです。(※3)
もっとわかりやすく言うと、2020時点の日本人口1億2,713万人に対して635万人が飢餓経験があり、東京半分の人口に当たる計算になりますから驚きですね。
日本でなぜ飢餓が起こるのか

飽食の日本でなぜ飢餓が起きているのでしょうか。
前述の通り、飢餓は十分な食料と栄養を摂ることができない状態をさすのですが、衣類や住居、環境が整っている日本だからこそ、何らかの理由で食費を削らなくては生活水準を保てないという事態が起き、本人たちも気がつかぬうちに栄養不足になっているのです。
飢餓が及ぼす影響
飢餓が発生する地域は、生まれてくる子どもたちの発達に影響を与えます。
ハンガー・フリー・ワールドによると、
- 年齢に見合う体重に満たない子どもたち 1億4,800万人
- 年齢に見合う身長に満たない子どもたち 約2億人
- 栄養不良により身体の発達に遅れに影響がある
と栄養不良の実態を報告しています。
こうした飢餓は子どもたちだけでなく妊産婦の栄養不良も起こります。
開発途上で亡くなる5歳未満の死因のほとんどは新生児期の栄養不良、合併症や先天的疾患や感染症によるものです。
赤ちゃんは既に栄養が足りていない飢餓状態で生まれてきているということですね。
新生児の栄養不良は母体の栄養不良が原因です。妊産婦、出産後の母体は多くの栄養を必要としますが、必要な栄養が摂れない状態が続くと出産後に亡くなるリスクが高まります。
赤ちゃんだけでなく、お母さん側も命の危機にさらされているんですね。
3. 飢餓の原因ってなに?どうして起こるの?
では、飢餓はなぜ起きるのでしょうか。ここでは原因を見ていきたいと思います。
慢性的な貧困

生産者が適正な賃金を受け取れないため、低賃金労働を強いられ生活に必要なお金が受け取れず貧困となり、やがては飢餓となります。
その不正取引を解消するために設けられたのが「国際フェアトレード認証ラベル」です。

フェアトレードの取り組みは、その商品に関わる生産者や流通者が労働に見合った適正な賃金で取引ができるように価格設定されています。
コーヒーひとつ取っても、フェアトレードコーヒーとそうでないコーヒーでは生産者に届くお金がまったく異なります。
またオーガニック認証も、生産者と地球環境に寄り添った商品です。
国によってオーガニック認証マークは異なりますが、一部をご紹介します。




生産者側が低賃金労働を強いられていたり、児童労働をさせられている子どもたちの現実を知ることは、消費者の行動を変えるひとつのきっかけとなるでしょう。
大量に安く手に入れられる商品は必ず安く取引される理由があります。
日本でも農水省から2050年までに有機農業を25%にする取り組みが発表されたばかりです。
貧困や飢餓をなくすために、私たちは消費行動から変えられるのです。

開発途上国内の格差

インドは世界の中でももっとも所得格差が大きい国です。
グラフに示すように開発途上国内においても飢餓による貧困は格差社会が存在します。
格差社会は、所得や経済だけでなく、資産、教育、情報といったようにさまざまな基準から生じます。
インドでは著しい経済成長により富裕層がますます多くの富を得るなか、貧困層はさらに貧しくなっており、格差が顕著に現われています。
もともとインドは農業大国。
1980年代まで社会主義政治でしたが、1991年の経済改革によって多くの規制が撤廃、公営企業が独占していた産業に民間が参入したり貿易の関税を引き下げられました。
この経済改革をうまく活用したのが都市部の人々でした。
しかし、農村部や過疎地に住む農家の人々にとっては恩恵は与えられることがなく、貧困状態が悪化していったということです。
同じ国内でも富裕層と貧困の差が広がっているんですね。
SDGs10の目標でも「人や国の不平等をなくそう」をゴールにしており、貧困や飢餓をゼロにするゴールと深く関わっています。

気候変動や、干ばつ・洪水などの自然災害

飢餓の原因にも関わってくる気候変動はSDGsの目標13に気候変動対策が定められています。
地球温暖化による気候変動で洪水や干ばつなど自然災害が増えました。
2015年、アフリカでは過去30年でもっとも最悪といわれる干ばつが起き、生態系に悪影響を与え、さらに穀物の生産が困難になり、とうもろこしの生産量は25%減少したのです。
干ばつの影響は人間が使える水の量が減り農作物も当然育ちません。仮に食料が生産されていてもすべての地域に公平に行き届くことがないことも問題で、先進国への輸出により生産者側が食糧難となっているのです。

食品ロス(フードロス)

食べられるのに捨てられてしまう食べ物を「食品ロス」とよびます。
先進国への輸出とお伝えしましたが、輸入に頼っている日本では食品ロスが社会問題となっています。
国際連合食料農業機関の報告書では、世界の3分の1(約13億トン)の食料が1年間で廃棄されています。
日本でも年間約612万トンの食料が食べられずに廃棄され、東京ドームに換算すると5つ分の量になります。
とはいえ、食品ロスは開発途上国でも発生しています。
食料が足りていないのにどうして?と思われる方も多いでしょう。
理由は、食べ物の保存設備や施設が整っていないため、食卓に届く前に腐ってしまうため捨てざるを得ない状態になっているのです。
飢餓の裏でありあまっている食料

農林水産省の報告※4によると、世界の穀物生産量は25.34億トンです。
世界人口から計算すると1人あたり年間約333kg食べられるということになります。(1人あたり年間の標準量は180kg)
穀物は十分に生産されているはずなのに多くの人が飢えに苦しんでいるのはさまざまな背景があります。
たくさんの穀物は、一体どこへ行っているのでしょうか。
現在、穀物は人間が食べるものは全体の43%、その他は家畜のエサとなっています。
世界の穀物6割がこうして家畜で消費されています。
肉を消費することの多い先進国は、何倍もの穀物を消費していることと同じといえます。
なぜ飢餓はなくならないの?
飢餓がなぜ起こるかの原因はわかっているはずなのになぜなかなか飢餓はなくならないのでしょうか。
飢餓の原因でもある気候変動は、すでに厳しい状況にあり、エルニーニョ現象ラニーニャ現象に加え、さらなる悪化が予想されています。
洪水や干ばつが激しい地域においては特に飢餓が起きやすく、農業生産ができず貧困から飢餓へ発展するケースが多いのです。
気候変動も私たち人間が原因となっていることを忘れてはなりませんね。
SGDs目標13にも定められる気候変動の対策を同時に進めていく必要があります。
4. 解決策はある?~飢餓や栄養不良に終止符を~
ここまで見てきた問題を解決するにはどのような取り組みを進める必要があるのでしょうか。さまざまな角度から見ていきましょう。
持続可能な農業で飢餓を解決

飢餓と農業は密接な関係を持っており、ゆえに農業環境を整えることが必要不可欠なのです。
飢餓の原因として先ほど説明したように開発途上国はインフラが整っていないため、農作物ひとつ作るにも大変な労力を必要としています。せっかく収穫しても届ける重機がない、保存施設がないため腐ってしまい収入が得られないという問題があります。
そのためターゲット達成目標4に定められているレジリエントな農業が重要です。
レジリエントな農業とは、安定した農業を継続させることです。
わかりやすく言うと、様々な異常気象にも耐えられる設備やシステムを増やし、持続可能な流通経路を確保するという内容なのですが、わかりやすくいえば生産工程にかかる技術協力を行うことです。
また、消費者が安く購入できる農作物はフェアトレードで取引はされ難く、生産者側に適正なお金が届きません。そのため、わたしたち消費者がフェアトレードの商品を購入することが解決策のひとつとなり得ます。
食品ロスを無くす
穀物の生産量でもお伝えしたように、世界の人口を養えるほど十分な食料があります。
なのにも関わらず、先進国と開発途上国で起きている食品ロス、毎年生産される40億トンの食料のうち3分の1がまだ食べられるのに廃棄されるため経済損失は年間で7,500億ドルといわれています。
そうなると課題となる部分は、その消費方法です。
先進国では飽食による食品ロス、開発途上国では保存設備など環境が整っていないことによる食品ロスを解決することが課題となります。
子どもたちの飢餓をゼロに

児童労働をしいられる貧困環境で暮らす子どもたちは年齢にあった教育がなされていません。
未来を担う若きリーダーたちを守るのは大人たちの役目であり、また子どもたち自身が自立しやすい支援を行うことが最優先です。
食糧の多様化
世界で消費されている代表的な炭水化物は小麦、コメ、イモ類、トウモロコシといった食料ですが、これ以外にも世界にはまだまだ栄養価の高い代表的な食料は多く存在します。
これまでのメインとされてきた食料の枠を取っ払い、その他約25万種類存在するとされる農作物の価値を理解し活用することが求められます。
食糧の多様化はある意味、限られたものへの依存から解放されることになり、バラエティに富んだ食生活を送れる糸口になるでしょう。
それには消費者の理解、生産者の理解、経済がまわる仕組みつくりが重要となってきます。
5. 飢餓の改善に向けた取組事例/対策

2030年までに飢餓をゼロにすることは困難になるであろうと示唆されていますが、世界では飢餓を終わらせるべく様々な動きがあります。
世界の取り組み
国連世界食糧計画(WFP)による活動
国連世界食糧計画(WFP)は世界の飢餓を撲滅すべく緊急時に食糧支援を行い、飢えに苦しむ人々の栄養状態を改善する活動を行なっている人道機関です。
支援活動の柱は5つ
- 学校給食支援
- 緊急支援
- 母子栄養支援
- 自立支援
- 輸送、通信支援
中でも学校給食支援に関しては2019年、59カ国の1,730人の子どもたちに学校給食を提供し、65カ国3,900万人の子どもたちが学ぶ学校で学校給食の提供を受けたと報告しています(※3)。
開発途上国の農業の支援と強化
スウェーデン国際農業ネットワークは持続可能な農業経営を実践するために養成という形で活動を行い、「発展途上国の農業経営刷新のためのビジネス・プラン・コンテスト」と名付けました。(※4)
コンテストは就労希望者に農業経営の基礎知識から最終的にはビジネスプランの構築、提出まで至ります。
彼らの活動では持続可能な農業を行うためには教育が重要だと考えています。
例えば2017年に結成された「アグリプレナーシップ・アライアンス」と協力しながら農業経営ノウハウを学ぶ養成所を設けています。
食糧を与える、受け取る、だけでなく、自ら作り出す力を養うことによって、持続可能な農業が実践されていきます。支援活動は多岐にわたりますが、教育に特化した活動はもっとも重要視される部分であるでしょう。
先進国の食品ロス対策
フランスとイタリアでは食品ロスを減らすべくある法律が設けられました。(※5)
◇フランス…食品廃棄物削減に関する法律(2016年)
環境エネルギー管理庁によるとフランスは1人あたり年間平均29kgの食品を廃棄し、中には開封する前に期限切れとなり廃棄されているものもあるとの報告がありました。
法律では店舗面積が400平方メートルを超える大型のスーパーは賞味期限切れの食品廃棄を禁じられ、肥料や飼料に再利用すること、もしくは慈悲団体へ寄付をすることが義務づけられ、違反すると罰金が課されるようになりました。
法律制定後、フランスでは食料寄付が15%増加、食品業界では損失率が14.5%減り食品ロスの対策として有効だと認められています。
◇イタリア…食品廃棄を規制する法律(2016年)
イタリアはここ10年間で家庭における食品ロスが25%減っており、2020年では最小になったと報告されています。
イタリアはフランスに次いで食品廃棄禁止法が成立、ゼロウェイスト宣言の自治体は270あるほど食品ロスに関しては優秀な姿勢を見せています。
イタリア国内は「エコレストレラン」といって環境配慮に取り組むレストランが139店舗存在しています。
エコレストランとして認定されている場合、仮に注文した料理を食べ切れなかった場合に持ち帰ることが認められています。
イタリアではフードバンクが設置され、ビュッフェやクルージングで余った食料をフードバンクに寄付する仕組みとなっています。
フランスが罰則付きの法律ですが、イタリアはレストラン側が食品を寄付した場合最大20%の税控除を受けられる法律となっています。
日本企業の取り組み
飢餓や食糧問題について日本でもさまざまな取り組みがなされています。
具体例として2つご紹介します。
分かち合う心が世界を変える「TABLE FOR TWO」
世界の人々の健康を同時に改善することとして、TABLE FOR TWO(※6)という活動があります。
直訳すると「二人で囲む食卓」ですが、先進国と開発途上国の子どもたちが公平に楽しく食事を楽しむというコンセプトで2007年10月に設立された団体です。
1. 支援する側とされる側の双方にメリットがある。
開発途上国と先進国、場所関係なく同時に健康になれる仕組み。
2. いつでもだれでも参加可能。
対象となる定食や食品を購入し、食べるだけ。ふだんの食事を通して簡単に始めることができる。
3. アイデア次第で応用することが可能。
飽食による肥満予防のためスポーツ活動の推進も取り組んでいる。
TABLE FOR TWOの対象となる食品や商品を購入、サービスを利用することで売り上げの一部が開発途上国に寄付され、学校給食になります。
届く給食は地域や国によって異なり、子どもたちが必要な栄養を摂れるよう配慮しています。
実際に給食支援によって健康状態が改善され、教育の機会も増え、TABLE FOR TWOの活動は飢餓や貧困をなくす重要な役割を担っています。

「もったいない」が世界を救う!「tabeloop(たべるーぷ)」
tabeloop(※7)が提供するサービスは「食品を売りたい人と買いたい人をつなぐ社会課題解決型の新しいサービス」です。
これまで食品ロスはさまざまな課題がありました。
- 包装が汚れているから売れずに捨てられていた
- 賞味期限の問題に店頭に並ぶことができなかった
- 形が不揃い、小さな傷があるという見た目の理由で買ってもらえなかった
本当は食べることができるのに、上記のような理由で廃棄されてきた食品をtabeloopは独自ルートで販売し、食品ロスの削減に貢献しています。


6. 飢餓をゼロにするために、私たちにできることって?

冒頭でもお伝えしましたが、飢餓はどこか遠い国のお話ではありません。
地球環境は循環しており、問題をおざなりにしておくほどに跳ね返ってくる代償はとてつもなく大きなものです。
現状を知ることは誰にでもできること、しかしそこから実際に行動につなげてこそ意味のあるものになります。
では、実際に今からできる行動をお伝えしましょう。
食品廃棄削減への取り組みを飢餓問題につなげる
前述の通り、食品ロスが飢餓を起こす原因のひとつだとお伝えしました。
- 肉の消費を減らし、オーガニック認証やフェアトレードの野菜や食品を多く食べる
- 自分で調理をする
- 生ゴミを活用したい肥にする
- 食べ物を残さない

オーガニック認証やフェアトレード商品を選ぶ理由
オーガニック認証やフェアトレード商品が勧められる理由として、農薬による被害を抑える効果があります。
農薬による被害と聞いて何を想像されますか?
実は開発途上国や貧困地域で生産される農作物の大半は農薬が使われます。
農薬によって健康を害してしまい、最悪の場合死亡リスクも高まります。
SDGs目標1の貧困問題にも大きく関わってきます。
オーガニックやフェアトレードの商品は農薬や化学肥料を使用せず、適切な賃金が生産者側に支払われるシステムとなっています。
消費者側のメリットも多いのがオーガニックです。
農薬は皮に多く含まれ健康にも地球環境にも良いことが1つもありません。
オーガニックでない野菜はどうしても皮をとって捨てることになりますが、一方でオーガニック認証マークの付いた食品は農薬不使用、化学物質不使用なので皮ごと食べられ食品ロスをなくします。
キッチンから廃棄をなくすためにわたしたちは消費行動を変える必要があります。

飢餓の要因となる温室効果ガスの排出量を減らす

飢餓の要因に、気候変動をあげました。
地球温暖化の原因とされる二酸化炭素など温室効果ガスは、イメージとしては車の排気ガスや工業からの排出と考えられやすいでしょう。けれども畜産における温室効果ガス排出量も多いのです。
肉1kgの生産に伴う温室効果ガス排出量(※8)
◇豚肉のCO2排出量 約7.8キロ
◇牛肉のCO2排出量 約23.1キロ
日本の養豚ではエサとなるとうもろこしや小麦など穀物を輸入に頼っています。ゆえに重機や輸送の燃料、化学肥料からのCO2排出もあります。
また家畜の糞尿処理では尿から窒素を取り除く際に亜酸化窒素が大気に排出されることも懸念ポイントです。
完全に肉断ちをしましょう!というのもおそらく急には難しいという方も多いでしょう。
まずは徐々に減らす、選ぶとしたら土壌を破壊するであろう抗生物質や薬剤を使用されていない農場で育った牛や豚、ストレスなくのんびりとした環境で健康的に育てられたオーガニック認証のある肉を選ぶことを心がけましょう。
近年、スーパーに出回るようになった大豆ミートもぜひ試してみましょう。

学校や社内で使っている製品を環境に配慮したモノに変えていく

家庭や会社、学校から排出される化学物質を減らすことも重要です。
排水溝から流れる化学物質は主に化学染料や合成洗剤、マイクロビーズが含まれた歯磨き粉など生活で使うものが多いのです。
環境に配慮した生活用品を例にあげると
- プラスチック製品を減らす、あるいは使わない
- シャンプーやボディソープ、洗剤を植物由来のものに変える
- 会社や学校でペーパーレスを意識する
- オーガニック認証ラベルの商品、フェアトレードマークの商品を選ぶ
私たちにとって飢餓をゼロにする取り組みはわたしたちの消費行動がカギとなってくるでしょう。
今すぐできることとして、まずは食品ロスです。
フランスとイタリアの食品ロス対策は私たちの日々の生活でも気軽に取り入れられる方法ですね。
SNSにアップするための食事、お得だからという理由で食べ放題を利用する、こうした「自分のためだけ」の目的で消費をする行為は見直していくべきものなのかもしれません。
地球はすべてがつながっています。
それが今日明日、自分の身に降りかかるかもしれませんし、わたしたちの子や孫の世代で影響が出てくるものかもしれません。
飢餓をゼロにするために、わたしたちは知る、学ぶ上に、実践することが最優先であり、また主体的に行動することが求められているのです。
まとめ
今回はSDGs2「飢餓をゼロに」の問題点と解決策/事例、私にできることを紹介しました。
日本ではあまり馴染みのなさそうな飢餓問題でしたが、「知らず知らずのうちに体が栄養不測になっている」ように誰にでも起り得る話です。
日本でも貧困は存在しています。相対的貧困にあったように、住んでいる国の環境が整っていればいるほど、ついていくために食費を削る状態になってしまうのです。
実際に世界の飢餓人口が9人に1人という数字を改善することは、SDGs全体のゴールへとつながり、もっとも重要なポイントなのです。
冒頭でお伝えした言葉をもう一度思い出してみましょう。
- 生き方自体を変えたい
- 小さくても新しい一歩を踏み出したい
- 生きる力を養いたい
- 価値観をアップデートしたい
今のままの考え方でこの先も生きていくべきなのか、生涯を閉じる前に自分はもっと何かこの世界でできることはないのか。
国連がSDGsのゴールを掲げた今、私たちは自分の人生を改めて考えるチャンスなのです。
もしかしたら、あなたひとりの勇気ある行動があなたの家族、友人、パートナー、まったく知らない人が変わるきっかけにもなります。
飢餓をゼロにする。
今日明日解決するような簡単な問題ではありません!
簡単でないからこそ、あなたの行動が重要なのです。
- オーガニックやフェアトレード商品を選んで食品ロスをなくす
- 余分なものは買わない
- 飢餓をゼロにする、ために実践した行動をSNSにアップしてみる、友人に話してみる
- 飢餓をゼロにする活動を行なっている団体を調べてみる
昨日と今日の自分を比べてみて、ひとつでも新しいことに挑戦してみるのは人生の満足度につながります。
SDGsのゴールに向けて挑戦してみよう、そんなきっかけになったら幸いです。
参考文献
※1 国連世界食糧計画(WFP)
※2 世界の食料安全保障と栄養出典:「国連世界食糧計画(WFP)」
※3 公益社団法人「相対的貧困とは何か?」
※4 発展途上国の農業経営刷新の ための「ビジネス・プラン・コンテスト開催」
※5 フランス・イタリアの食品ロス削減法
※6 「TABLE FOR TWO」
※7 「tabeloop」
※8 「肉の生産で出る温室効果ガス」
