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スウェーデンの身近なエコ活動!プラスチック削減からフードロスまで紹介

焼却大国である日本は、世界でもごみのリサイクル率の低い国です。実際に食品トレーなどのプラスチックごみの約56%がリサイクルされずに、熱回収処理されているのが現状です。プラスチックのメリットは耐久性があり軽いことですが、自然分解されず環境に残ってしまうため問題視されています。

エコ大国と言われて久しい北欧の国・スウェーデン。スウェーデンでは、一般家庭でも当たり前のようにエコ活動がおこなわれています。とくに、プラスチック削減への取り組みは近年顕著で、日常生活のなかに数多くの活動が見られます。

今回はスウェーデンのスーパーマーケットを舞台に、生活に密着した北欧のエコ活動の一部をご紹介します。

スウェーデンのスーパーでおこなわれているエコ活動【プラスチック削減への取り組み】

出典:Spaceship Earth

一般的にスウェーデン人は、環境への意識が高い傾向にあります。しかしながら、日本のように「エコバッグ」が普及しているかというと、実はそうとも言い切れません。一般的なスーパーでの様子を見てみましょう。

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野菜を入れるビニール袋が紙袋に

出典:Spaceship Earth

多くのスウェーデンのスーパーマーケットでは、野菜や果物は量り売りです。買い物客は野菜や果物の山から、必要な分を取って自分で袋に入れます。売り場には秤が置いてあり、リンゴを買ったらリンゴのボタンを押すと、キロあたりの金額から計算されたバーコード付きのシールが出てきます。そのシールを品物の袋に貼り、レジをとおすのです。

これまでは野菜や果物を入れるために、売り場には薄いビニールの袋が設置されていました。しかしプラスチック削減が推し進められ、それまで無料で使い放題だった生鮮食品用のビニール袋は課税対象になりました。代わりに登場したのが、無料の紙袋です。

使い勝手の点からいうと、正直ビニール袋のほうが嵩張らないし丈夫でした。たとえば紙袋は、1㎏のジャガイモの重さに耐えられずに、レジで破れてしまうのです。それでも、1回の買いもので何枚も使う野菜袋ですから、有料と無料では大きな差があります。

使いまわせる野菜ネットも

出典:Spaceship Earth

野菜を入れるビニール袋が紙袋になったのと同じころ、「野菜ネット」なるものも登場しました。目の細かいメッシュ状の袋で、100%プラスチックリサイクルのポリエステル素材でできています。とくに玉ねぎやジャガイモなど、重い野菜を大量に買うのに向いています。

スウェーデン人は主食のジャガイモを大量に買いますし、玉ねぎなどは保存もききます。ネットに入れたままで、キッチンや床下の保管庫に転がしておけるのは便利です。野菜ネットは約10㎏の野菜や果物を収納できるので、かなり丈夫です。

値段も10~30クローナ(約133円~400円)ほどと幅はありますが安いので、これからもっと普及する可能性のある商品ですね。Veggio、Frusack、F&Vpåsarなどいろいろなブランドから発売されています。

レジ袋値上げにともなうショッピングバッグへの変貌

出典:Spaceship Earth

日本でレジ袋有料化が始まったのは2020年7月1日からですが、私が初めて北欧の国を訪れた1990年代半ばには、レジ袋はすでに有料だったため、スウェーデンのレジ袋有料化の歴史はかなり長いといえるでしょう。

長年の間、1枚2〜3クローナ(日本円で約27~40円)だったスーパーのレジ袋。2020年3月からプラスチック削減強化に伴ない、レジ袋が課税対象になりました。

スーパーによって元の値段が異なりますが、課税により、レジ袋の金額は1枚当たり6~8クローナ(約105円)になりました。使用後に捨てるだけのレジ袋が100円となると、さすがに気楽に買える金額ではありません。

従来精算時に買っていたレジ袋は、家庭でごみを入れて捨てるだけの二次利用が多い印象でした。しかし今では袋が破れるまで繰り返しつかったり、そもそもレジ袋を買わない選択をしたりと、購入意識は根本から変化しています。

代わりに登場したのが、各スーパーオリジナルのショッピングバッグです。どれも丈夫な不織布やリサイクル可能なプラスチック素材で作られており、マチ幅が大きく取られているのが特徴です。使い勝手がよいので、使い捨てのレジ袋をわざわざ購入する人も減ってきています。

そもそもスウェーデン人はレジ袋をつかわない?

レジ袋有料化に伴い、日本では繰り返しつかえるエコバックやショッピングバッグが急激に普及しました。かわいい柄やコンパクトさが売りの商品など、多くの種類が見られます。

スウェーデンでも各スーパーがオリジナルのショッピングバッグを売り出したり、IKEAがエコバッグを販売したりと、使い捨て以外の商品も存在しています。しかし、それよりもずっとエコな方法が普及しています。

究極のエコな方法とは、袋を使わないこと。たとえば仕事帰りにスーパーに寄れば、野菜や肉をそのまま仕事のバッグに突っ込んでしまいます。手で持てる量の食品の場合は、袋を利用せずに素手で持ち運びます。

そもそも鞄の中が汚れるのを気にしない、おおらかな国民性なのでしょう。無駄なことをしないのも、スウェーデン人気質といえそうです。

スウェーデンでも食品ロスは大問題

出典:Spaceship Earth

温室ガス排出の原因となっている食品ロスは、世界中で取り上げられている問題です。温室効果ガスは二酸化炭素やメタン、フロンなど赤外線の一部を吸収し、地球温暖化の原因となります。

スウェーデンで取り組まれている食品ロス対策には、どのようなものがあるのでしょうか。

食品ロスを減らす、身近な対策とは?

出典:Spaceship Earth

スウェーデンでは外国人移住者の経営する市場が賑わいを見せています。おもに野菜や果物を販売するいわゆる「青空市場」では生鮮食品が安く購入できるため、人通りが絶えません。

しかしこのような市場で売られている商品がいわゆるB級品で、大手のスーパーに卸されない商品だという事実はあまり知られていないでしょう。

大手のスーパーマーケットは、たとえばトマトを箱で購入する場合、1箱に1個つぶれたトマトや腐ったトマトが入っていた場合に買取りをしません。そのような商品は移民の卸業者などに安く買い取られ、市場に並ぶのです。

本来食べられる食品を捨ててしまうフードロス。

ストックホルムやデンマークの首都・コペンハーゲンでは、そのような規格外の食品を安く買い取って営業をしている、レストランやケータリング業者もあります。

都市では廃棄食品を配布する、「フードバンク」の働きも盛んです。メインの利用者は生活保護を受けている人や、移民の家族、生活困窮者やフードロスに関心の強い一般人など実に多岐にわたります。

スーパーでの廃棄食品はまとめて大きな袋に入れ、とても安く売られています。どれでも一律10クローナ(約130円ほど)で購入できたり、前日のパンが半額以下で売られていたりと、本来捨てられるはずだった食品のあらたなサイクルが生まれています。

賞味期限の長期化をはかる食品パッケージ

出典:Spaceship Earth

スウェーデンでは、真空パックの食肉の流通が盛んです。もっとも、ここ数年の間に急激に出回るようになった食肉の真空パック。ブロック肉からステーキ用など、実にさまざまな種類があるだけではなく、見た目の面でも真空パックの商品は衛生的でおいしそうに見えます。

お寿司につかえる刺身用サーモン、サルマ・ラックス(SALMA LAX)も真空パック入りです。日本でお刺身が次の日まで売り場に残されていることはありませんが、サルマ・ラックスは真空パックなので梱包してから11日間も日持ちします。

スウェーデンの食肉の賞味期限は、日本と比べると長い傾向にあります。長期保存のできる真空パックの商品が増えてきているため、まとめ買いをしたのをうっかり忘れてしまったり、使い切れずに腐らせてしまったりという失敗も減った気がします。

卵パックの大改革は成功か失敗か?

出典:Spaceship Earth

最近では紙製も増えてきましたが、日本で卵のパックは現在でもプラスチックが主流です。ペット樹脂製のリサイクルタイプになったのが、大きな変化でしょうか。

スウェーデンの卵パックは、すべて再生紙でできています。ただし購入側の取り扱いが雑なのか、よく中身が割れています。プラスチックと違って中が見えないため、購入前にパックを開けて卵の無事を確かめるのが習慣化してしまいました。

さて、この卵パック。2015年ごろでしょうか、とてもカラフルな卵パックが売り場を賑わせていました。スタッキング(積み重ねたり、コンパクトに収納すること)できる卵パックの特性を生かし、ブロックとして子供が遊べるようにデザインされた「エッグプレイ(eggplay)」。その年のバニティ・オブザイヤーにも輝いています。

エッグプレイは、ポリプロピレン製プラスチックでできた、いわば巨大なレゴのような卵パックブロック。ポリプロピレンは、リサイクルしやすく燃やしても有毒ガスが発生しないという特性があります。また安価なうえ、強度にも優れています。

より環境に優しいプラスチックパッケージとして開発された、エッグプレイ。しかし、2022年の現在、スーパーで見かけることはほとんどありません。スタッキングできるとはいえ、1ピースが巨大すぎるこのブロック。子供の成長と共に、やはりごみとなってしまうのが欠点なのかもしれません。

スウェーデンの家庭でおこわれているエコ活動【家庭ごみの分別方法】

出典:Spaceship Earth

アパートと一軒家ではごみの収集方法が異なります。

スウェーデンでは一般家庭のゴミの分別は、当然のこと認識されています。ただし外国人移民も多いため、地域によってはかなりいい加減なものとなっているのも事実です。

アパートでのごみの分別は徹底している

出典:SpaceshipEarth

どのアパートにも専用のゴミ収集所が設けられているので、アパートの住人はいつでも好きなときにごみを捨てられます。ごみを出す曜日が決まっていないので、このシステムはかなり重宝です。

ごみ収集所はMiljöhuset(直訳で環境の家)と呼ばれ、一般的にはごみの種類ごとに色分けされたコンテナが並んでいます。専用のごみ捨て小屋がないアパートでは、中庭にコンテナを置いています。

まず家庭で出た生ごみは、専用のコンポスト用紙袋に入れ、生ごみ専用のコンテナへ捨てます。ただこの袋は何の防水加工もされていないので、生ごみを入れると水分で破れてしまいます。せめて内側に自然素材のワックスで防水加工を施すなど工夫をして欲しいものです。

しかしこの専用のコンポスト袋は、そのまま袋ごと燃やしてバイオガスに生まれ変わるため、余計な加工は施されていないのでしょう。都市部ではこの生ごみを分別して作られたバイオガスで走る市バスも運行されています。

コンテナの種類は、新聞・雑誌用、空き缶、段ボール類、一般家庭ごみ用に分かれています。ガラスビンは透明のものと色つきを分けて、別々のコンテナに捨てます。蛍光灯や電池、家庭用の電化製品を捨てる場所もあります。

一軒家では各家庭で収集の契約をする

出典:Spaceship Earth

アパート以外の一軒家では、ごみの収集ルールは住んでいる地域によって異なります。地区ごとに回収日が決まっていますが、自分でごみ収集の契約をすると、決まった曜日にゴミ収集車が回ってくるという仕組みです。

各家庭では、自治体から借りたごみ用のコンテナを、家の敷地内の道路わきに設置します。しかし有料の上、ゴミ収集車が回収してくれるのは、生ごみと可燃ゴミのみ。そのうえ、月に2回ほどしか回ってこないため、夏場の熱い最中は生ごみに群がるハエで庭先が大変なことになります。

一軒家の場合、そのほかのごみは回収してもらえないため、地域にあるゴミ回収場所(リサイクルステーション)に持っていくシステムです。

スウェーデンでは2025年までにフードロスを現在の5分の1まで削減するよう目標を掲げているのです。

まとめ

スウェーデンと日本のごみ処理の現状を比べると、大きな違いがあるといえます。日本のゴミの分別はかなり細かいですが、行政が手を入れている部分もあれば、地域活動として一般のボランティアが執りおこなっている面も多くあります。また、リサイクルに対しての国民の意識も異なりますね。

リサイクル活動やエコ活動を一般に浸透させるために、分別や理解だけでなく、だれもが気軽にできて負担にならない手軽な方法も必要だと感じます。食べものを大切にする意識はもちろんのこと、可燃ごみとして捨てられる食品容器の開発が進むなど、ストレスフリーで環境を考えられる世の中になるとよいですね。

(※文章中のスウェーデンクローナは2022年11月の為替レートにより換算しています。)