私たちが、日々の暮らしの中で扱うさまざまなアイテムは、必ず誰かによってつくられています。
SDGs目標の認知が高まるにつれ、多くの企業が大量生産・消費ではなく、持続可能な社会を目指す取り組みに舵を切りはじめました。
そこで今回は、国内外でSDGs目標12「つくる責任、つかう責任」に取り組む5つの企業を紹介します。
毎日の生活で、何気なく手にしているアイテムもあるかもしれません。この記事を通して、少しでも「ものづくり」に対する意識・考え方を変えるきっかけにしてみてください!
目次
ハチドリ電力
まずはエネルギー分野において、SDGs目標12にかかわる活動を展開している企業の紹介です。
私たちが普段の暮らしの中で、何気なく使っている「電気」は、地球環境に大きな負のインパクトをもたらしています。
そこで、ハチドリ電力がどのようにSDGs目標12「つくる責任、つかう責任」に貢献しているのかを見ていきましょう。
企業の紹介
「ハチドリ電力」は、世界13か国で社会問題に取り組む株式会社ボーダーレス・ジャパンが立ち上げた事業です。
子どもの教育や福祉のような社会問題は、どれも気候変動が根本にあることを実感したことから、日本でエネルギー供給源を切り替えるための事業をはじめました。
暮らしと地球環境に大きな影響を与える電力を、風力・太陽光のような自然エネルギーに変えることが、地球温暖化・気候変動を少しでも食い止める一手になりうるからです。
どのような事業なのか
ハチドリ電力では、気候変動・地球温暖化の観点から、すべて自然エネルギーのみを提供しています。
固定料金方式で、ひとり暮らしから大家族まで、誰でも利用可能です。
売り上げの1%は自然エネルギー発電所の増設費用に、もう1%は、消費者で選べる支援団体へ寄付する仕組みになっています。
支援団体は、
- ・自然環境の保護
- ・医療、難病
- ・子どもの教育
- ・動物愛護
- ・町づくり
- ・ジェンダー平等
- ・出産、子育て
- ・災害復興、防災
- ・障害、社会福祉
など、日本国内外のさまざまなNPO法人・組織から選択できます。
また、毎月の明細書はメールで届き、二酸化炭素排出の削減度合いや、植林活動に換算するとどのくらい効果があるのか、といった「貢献度」を確認できます。
つくる側も使う側も、常に「自分たちのエネルギーと、支払ったお金がどのように使われているのか」を知ることができる仕組みです。
なお、家庭だけでなく、飲食店やオフィスも簡単に導入できるため、クリーンなエネルギーを使いながら環境に配慮した形でビジネスを行なえるよう支援しています。
どのようにSDGsの達成につながるのか
ハチドリ電力の活動は、以下のような形で、SDGs目標の達成につながります。

- 目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」12「つくる責任つかう責任」の達成に貢献
自然のエネルギーを消費者へ提供し、地球環境に配慮した活動。
また、消費者が選ぶ寄付団体は多岐に渡るので、SDGs目標1~6、10、11、13~15など、ほとんどの目標に関連していることがハチドリ電力の強みだといえます。
ほかの電力会社から切り替えるためのシミュレーション・手続きはインターネットで完結するため、手間がかからず、気軽に利用できるのも魅力です。
WHY zero waste center(上勝ゼロ・ウェイストセンター)
次にご紹介するのは、自治体の取り組みです。
徳島県上勝町は2003年、町全体でごみを出さないように取り組む「ゼロ・ウェイスト宣言」をし、本格的なごみ削減の活動に励んできました。
長年の活動によるゴミゼロの仕組みが町民にも浸透し、国内外から注目を浴びています。
では、具体的にどのような取り組みを行なっているのか、チェックしていきましょう。
企業の紹介
徳島県上勝町は、人口1,500人ほどの小さな町です。
町民の高齢化や経済上の理由によって、ごみ処理場・焼却炉の運営が厳しくなってしまったことをきっかけに、2003年「ゼロ・ウェイスト宣言」を、日本の自治体としてはじめて行いました。
できるだけごみを出さない工夫と、資源を上手にリサイクル・リユースする取り組みを重ねた結果、約8割のごみ削減に成功しています。
どのような事業なのか
上勝町では、行政と事業者・町民が連携して、日々の暮らしの中でできるだけごみを出さない工夫を行なっています。
基本的に、町民が自らごみの分別を行ない、町民が資源を自分たちで持ち込むセンターを併設。ここで13種類45分別を行なっています。
このような取り組みを行うと、自然とごみを減らす意識が芽生えるもの。使えるものは最後まで大切に使い、廃棄する際はできるだけ細かく分類して持っていきます。
金属や紙といった資源はお金になり、町の売り上げとして最終的に町民にも還元されるため、ひとりひとりが意識しやすく、地域の活性化にもつながるのです。
また、2013年から町内事業者が食料などの量り売りを開始したり、2017年には紙ごみ削減を目的に、布オムツを配布したりと、町を挙げて取り組んでいるのが印象的です。
さらに2020年、町民以外の人々も「ゼロ・ウェイスト」の取り組みを体感できるような宿泊型体験施設「ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」をオープンしました。
2020年にできた、宿泊施設を含む「ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」は、以下のように分かれています。
宿泊施設では、町の古い建物から回収された建材・道具を利用して建てられています。
また、野菜の皮・食べ残しなどをたい肥化できるコンポストや、まだ使えるアイテムを交換できる「くるくるショップ」のような設備を見学可能。
ほかにも、町外から視察の受け入れや、定期的なイベント・ワークショップを行うことで、町・地域全体でごみを出さないための学びを提供しています。
どのようにSDGsの達成につながるのか

上勝町の取り組みは、以下のような点でSDGs目標の達成に繋がります。
- 目標12「つくる責任つかう責任」の達成に貢献
ごみについて知り、普段の暮らしでものを大切に扱うなどの意識を向上できる - 目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に貢献
資源の売り上げで、町が活性化する
また、ごみ処理の際に出る二酸化炭素の排出量を大幅に減らせる点は、目標13~15のような環境関連の項目にも通じますね。
普段の暮らしの中でのごみを出さない工夫や取り組みは、みんなが実践すればSDGs目標にも大きなインパクトを与えるのです。
RePack(フィンランド)
続いては、北欧・フィンランドからのご紹介です。
さまざまなサービス・商品が世界中で行われるなか、気になるポイントのひとつが「梱包資材」ではないでしょうか。
いくら段ボールや紙パックで梱包している商品でも、手にとる回数が増えればごみの量も増える現状に、悩んでいる方も多いはずです。
そこで、フィンランドの企業・RePackが取り組んでいる画期的な内容をお伝えします。
オンラインショッピングをするうえで切っても切り離せない梱包資材を、上手に扱っている一例です。
企業の紹介
フィンランドに拠点を置く企業・RePack(リパック)は、2011年にスタートしました。
リサイクルされたポリプロピレンを原料に用いた梱包資材は、参加企業や配達会社と連携して管理を行なっています。
どのような事業なのか
Repackは、
- あらかじめ参加企業がRePackの梱包材を用意。※3つのサイズから選択可能です。
- 購入者が商品を注文すると、企業はRePackの梱包資材に入れて発送します。
- 購入者が商品を受け取ったあと、近くの郵便ポストに空の資材を投函。
- RePackに返却され、洗浄・メンテナンスを経て再度企業へ届けられる
といった仕組みになっています。
なお、レンタルや返品の際は、資材の中に商品を入れ、同梱されたラベルを張って投函するだけでOK。
RePackの存在を知らなくても、資材の表面に書かれた英語表記に沿って手順を踏めば、簡単にリユースにつなげられます。
資材を繰り返し利用することで、仮に段ボール資材を20回使いまわすのに比べても、80%程度の二酸化炭素量削減を実現できるのです。
このサービスは、現在EUだけでなく、アメリカ・カナダでも展開し、100社を超える企業が参加しています。
どのようにSDGsの達成につながるのか
RaPackの取り組みは、以下のような点でSDGs目標の達成につながります。
- 目標12「つくる責任つかう責任」の達成に貢献
資材を捨てずに再利用することで、生産~破棄段階の二酸化炭素量を減らせる
なお、RePackは資材の生産時に発生する二酸化炭素量と、破棄までに削減できる量をニュートラル(相殺の状態)にできていないことから、より環境に配慮した資材開発にむけて努力しています。
資材を使いまわした後は、再度アップサイクルして梱包資材に復活させるだけでなく、パソコンやタブレットケースの一部にするといったプロジェクトも進行中です。
Terra Thread(アメリカ)
今度は、アメリカの企業・Terra Thread(テラ・スレッド)の取り組みを見ていきましょう。
現代では世界各国の数あるアパレル・アクセサリーブランドから、自分のほしいアイテムを簡単に調達できる時代。
だからこそ消費者にとって、
「この商品はどこで・どのように作られているのか?」
「どれくらい地球へのインパクトがあるのか?」
といった点は気になります。
また、気候変動から派生する、さまざまな社会問題への解決にもつながれば、一石二鳥でしょう。
そこで、フェアトレードを通し、社会のあらゆる視点から商品生産を考えるTerra Threadの活動と理念は、企業にも消費者にも参考になるはずです。
企業の紹介
Terra Threadは、アメリカを拠点に、オーガニックコットン素材のバッグ・小物を販売するアパレル企業です。
原材料となるコットンは、フェアトレード認証・GOTS認証を取得。
綿農家をはじめ、縫製工場で働く人々との公正な取引を行なっています。
どのような事業なのか
オーガニックコットンを使用したバックパックやポーチ・小物を中心に販売しています。
売上はフェアトレード契約を結ぶ生産者の人々に渡り、彼らの安定した経済活動と暮らしを支える仕組みです。
また売り上げの一部は、アメリカのフードバンクや社会活動を行う団体へ寄付され、飢餓に悩む人たちや、学校へ行けない子どもたちにむけたサポートも行っています。
消費者はTerra Threadの商品を購入すると、アイテムの生産者だけでなく、社会問題にも貢献できるようになっているのです。
どのようにSDGsの達成につながるのか

Terra Threadの取り組みは、以下の通りにSDGs目標の達成へつながります。
- 目標12「つくる責任つかう責任」の達成に貢献
農薬・化学肥料を使わないコットンの生産で、生産~破棄段階まで地球にも身体にもやさしい商品づくり - 目標8「働きがいも 経済成長も」の達成に貢献
フェアトレードによって、作り手の安定した暮らしを実現 - 目標2「飢餓をゼロに」4「質の高い教育をみんなに」の達成に貢献
飢餓や教育といった社会活動をサポート
ブランドの商品は、どれもシンプルなデザインで、使う人の年齢や性別・ファッションスタイルを選ばないため、長く使い続けられる点もメリットです。
Sunaho
最後は、私たちの暮らしの中で欠かせない「食品・水の入れ物」に関する取り組みです。
食べものを保存したり、外出先に持ち運んだりする際に、何かと活躍するのがお弁当箱やタンブラー。
しかし、多くがプラスチックで作られ、生産段階はもちろん、消費者が使い終わった後の配慮が足りない商品に溢れているのも事実です。
日本で料理研究家として活動する野上優佳子さんと、台湾のホームウェアメーカー・ツゥーライ社が共同開発した容器シリーズは、ごみ問題の解決につながる画期的なアイテムです。
企業の紹介
Sunahoは、サスティナブルなお弁当箱づくりのために立ち上がったプロジェクトです。
もともと野上さんはお弁当が好きで、300個以上ものお弁当箱が自宅にあったそう。
おかずをひと箱に詰め合わせるだけで、特別感が生まれるお弁当箱ですが、ビジネスの場面では1回きりで捨てられるプラスチック製が当たり前になっていることに、違和感を覚えていました。
いつか、安心して捨てられる素材でお弁当箱を作りたいと思っていたところ、台湾の企業・ツゥーライ社と出会ったのです。
どのような事業なのか
Sunahoで販売するお弁当箱やタンブラーは、コーヒーかすと竹の粉でつくられています。
野上さんは、ツゥーライ社が過去にコーヒーかすを利用した容器を作った経験があること、竹製品の拠点である台湾・台中では、生産段階で大量の竹の粉が出ている現状を学びました。
そこで、竹のおがくずとコーヒーかすをあわせた素材を開発し、本来捨てられてしまう素材の組みあわせで、何度でも洗って使える容器を販売しています。
なお、商品の開発資金は、クラウドファンディングで調達することに成功。
素材選びの経緯や理由を、支援者が理解したうえでサポートを行うあたりは、つくる側だけでなく使う側の意識が、持続可能な方向へ変化していることがうかがえますね。
どのようにSDGsの達成につながるのか

- 目標12「つくる責任、つかう責任」の達成に貢献
・一度消費された素材(コーヒー)の再利用による、素材生産時の二酸化炭素排出量を減らす
・ほかの製品生産時に出る廃棄物(竹のかす)を利用し、ごみを削減
・何度も使える容器を暮らしの中に取り入れて、ゼロ・ウェイストを実践できる
・捨てる際は土に還るため、廃棄時のエネルギーを無駄にしない - 目標15「陸の豊かさも守ろう」の達成に貢献
竹素材を使うことで、定期的なメンテナンスを必要とする竹林の管理ににもつながる
以上はすべて、に通じています。
まとめ
今回は、ものづくりだけでなく、エネルギーや循環型社会のモデルといった、幅広い範囲から取り組み事例をピックアップをしました。
モノを作ることは、エネルギーや自然の恵みを消費すること。私たち人間だけでなく、すべての生き物が快適に暮らせる未来のために、地球に配慮した活動が求められています。
5つの活動で見てきたように、ひとりで声を上げるのではなく、ほかの企業や団体と手を取りあいながら活動の輪を広げていくことも、SDGs目標達成の大きなポイントです。
今回、取り上げた企業の例を参考にしながら、ぜひみなさんの活動に役立ててみて下さいね。