SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の解決策|具体的な事例も

7億5,000万人。

日本人口の5倍近くのこの人数は15歳以上で基本的な読み書きのできない人の数です。

そのうち3分の2人が女性です。

5,900万人。

こちらは初等教育の年齢で学校に行けない子どもの人数です。そのおよそ半分が紛争の影響のある地域でくらしています。

また、開発途上国ではジェンダー不平等も根強く、女の子は学校に行かせてもらえないケースも多く見られます。

ユニセフの調査によると世界の識字率は世界平均で78%、開発途上国においては63%です。日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解して読み書きできることを識字とし、教育水準を表す指標でもあります。

これらの環境を改善し、世界中の子どもたちが質の高い教育を受けられると、

  • 子どもたちがもっと生きやすくなる
  • 子どもたちがこの世に生まれてきた価値を見いだすことができる
  • 職業の選択の幅が広がり安定した収入が得られる
  • 経済発展につながる

と良い循環が生まれます。

目標4のゴールのポイントは「子どもの権利条約」の実現であり、そのためにはすべての子どもたちに生きていくために必要な知識や能力を身につける初等教育を受けられるようにすることです。

この記事ではそんな目標 4「質の高い教育をみんなに」の解決のためにできることを考えていきますが、まずはキーワードとなる「子どもの権利条約」について、聞いたことある!という方も初耳だ!という方もここで一度おさらいしてみましょう!

目次

子どもの基本的人権を守る「子どもの権利条約」って?

1989年に国連によって草案された「子どもの権利条約」は次のように定義されます。

子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。 18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様ひとりの人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めている

ユニセフ

子どもの権利条約で定められる子どもの権利は主に4つ

  • 生きる権利
  • 育つ権利
  • 守られる権利
  • 参加する権利

発達段階の小さな子どもたちの場合、自分たちの意志、考え方、価値観を世の中に言葉でうまく伝えられません。

そうした子どもたちの希望を代弁しているのがこの条約なのです。

教育は教科を学ぶ以外にも、生き方を学ぶ、生き方を選択する、社会のしくみを知る、自らの意思を人に伝えるなど、子どもたちが自らの権利を知ることが含まれます。その上で目標4を達成することは、すべての人にとって生きる土台作りになるのです。

目標4を達成することは、保護者の方からすれば質の高い教育とは何かを知るきっかけとなりますね。

皆と同じでなければならない従来教育の価値観から、現在は個の多様性に対して支援方法を用意するという形も大切にされ、質の高い教育の方向性も変わりつつあります。

では、目標4を掘り下げてみましょう。

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」ってどんな目標?

質の高い教育とはどのような教育なのでしょうか。

教育を受けられない、教育を受けたとしても質が低い、教育を受ける必要性がわからない、世界にはあらゆる理由によって教育を受けられない子どもがいます。

SDGsでは目標4の達成のために1〜7の達成目標とa〜cの実現方法をターゲットとして定義しています。

すべての子どもたちが男女の区別なく、適切で効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育・中等教育を修了できるようにする

”男女の差で、小学校・中学校にいけない子がいるんだって”

すべての子どもたちが男女の区別なく、初等教育を受ける準備が整うように、質の高い乳幼児の発達支援・ケアおよび就学前教育を受けられるようにする

”すべての子どもたちが幼稚園や保育園にいける環境が整ってないんだって”

すべての人々が男女の区別なく、手ごろな価格で質の高い技術教育と職業教育、そして大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする

”男女の差で、学ぶ機会に差があるみたいみんなの手が届く価格で大学までいけるチャンスを作れるようにしたいって”

雇用・就職や働きがいのある人間らしい仕事・起業のために必要な技術的・職業的スキルなどを備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる

”働きがいのある仕事に出会うため、技術や職業的スキルを持った若者を増やすんだって”

教育におけるジェンダー格差をなくし、障がい者、先住民および脆弱な立場にある子どもなど、社会的弱者があらゆるレベルの教育や職業訓練を平等にアクセスできるようにする

”性別・障がい・立場の弱い子どもたちなど、社会的弱者が教育を受けられない人たちがいるんだって”

すべての若者・男女区別なく大多数の成人が、読み書き能力と基本的計算能力を身につけられるようにする

”世界には大人でも読み書きと計算が出来ない人がたくさんいるんだよ”

子どもや障がいのある人、ジェンダーへの配慮が行き届いた教育資質を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする

”みんなが安心して教育を受けられる環境があるって大事だよね”

2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象に、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国およびその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる

”発展途上国の子どもたちが高校に行けるように奨学金を増やすんだって”

2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員を大幅に増員させる

”世界で協力し合い、開発途上国に先生を増やすんだって”

では、目標4のポイントをおさえていきましょう。

世界には教育を受けられない人がたくさんいる

教育の不平等はどういった理由から起こるのでしょうか。

理由をみていきましょう。

教育を受けられない理由

冒頭、開発途上国で学校に行けない子どもの多くは差別によるものが多いと伝えましたが、その他にも、

  • 栄養不足で健康状態が悪い
  • 兄弟が多く年上の子が年下の子守りを任されている
  • 障がいがあるから
  • 少数民族の家庭だから
  • 教科書がないから
  • 災害や紛争が絶えないから
  • 所得が低いから
  • 先生がいない
  • そもそも学校がない

など、さまざまな理由から学校に行くことを許されない子どもがいます。

目標4では、貧困やインフラ、ジェンダー、自然災害の影響や気候変動、飢餓など他の目標達成と深く関わっています。

世界的な感染症で教育危機!

COVID-19によるパンデミックで世界の14カ国で1億6,800万人以上の子どもたちが長いところでは1年間休校状態が続きました。休校が続いた国の3分の2はラテンアメリカ・カリブ海諸国で、特にパナマ、エルサルバドル、バングラデシュ、ボリビアが長期休校措置がとられました。(※1)

ユニセフ事務局長ヘンリッタ・フォアは休校状態が続くことで次のことを懸念しています。

  • 読み書きのスキルの低下
  • 健康や成長、安全、福祉が危険に晒される
  • 外で体を動かす機会が減りストレスがたまる
  • 学校給食が食べられないことで栄養状態が悪化
  • 人とのコミュニケーションが減る

上記のことからヘンリッタ氏は休校は最終手段であるべきだと説いています。

日本でも緊急事態宣言発令後、全都道府県の臨時休校が行われましたね。

一斉休校後、子どもたちは疲労を感じたり、勉強に集中できない座っていられなくなったなどストレス行動が見られ、子どもたちも保護者も不安を感じているとの報告も寄せられました。

急すぎた休校措置に学びの保証は追いついていませんでした。予期せぬ出来事だったため、教員は臨時で家庭用プリント配布を行い、授業のDVDを作成したりと応急手当てを行なっていましたが、それも学校や地域によって統一はされていません。

こうした状況から、教育環境の大切さを改めて学んだ人も多いでしょう。

そもそも学校ってなに?

では学校の役割はそもそもなんなのでしょう。

一般的に学校は国の法律によって設置されます。日本でいうと学校教育法があり、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、大学、高専などのような仕組みとなっています。

一方、開発途上国では仕組みがなくNPOなどのコミュニティが運営する施設があります。生きていくために必要な読み書きを学んだり、教育の機会を受けられなかった人たちに社会教育を教える場所を学校と呼ぶ場合もあります。

また、何らかの事情で学校に通えない不登校児が安心して過ごせるオルタナティブスクールも学校に含まれます。

オルタナティブスクールってなに?

オルタナティブスクール(Alternative school)とは、ヨーロッパやアメリカの哲学的思想をもとに発展していったオルタナティブ教育を取り入れた学校のこと。

画一的な教育ではなく、個人を尊重し子どもが本来持っている探求心に基づいて、自律的・主体的に学習や行事が展開されるようにカリキュラムが組まれていることが多いのが特徴

All about 子どもの教育関連情報

フリースクールは不登校や引きこもりの子どもが過ごす場所と捉えられがちがったのに対し、オルタナティブスクールは従来とは異なった運営制度のもとで新しい教育のあり方を目指す場所と意味付けされます。

このように、学校の仕組みはさまざまな形があり、設置される背景も異なります。

すべての人が教育を受ける必要性

わたしたちは、学校教育によって集団行動を学び、基本的な読み書き知識や技術を身につけていきます。

学校は、人間ひとりひとりに備わっている能力に気づき発揮する場でもあります。

こうした経験を積み重ねることで将来の目標ができ、働きがいのある職業に就いて生活を豊かにすることができます。教育の循環が貧困や飢餓を減らし健康を維持し経済発展へつなげるのです。

よって、すべての人が平等に教育の機会を得る必要性があります。

しかしながら実際は異なります。次に世界と日本の教育の現状を見ていきましょう。

キーワードと世界・日本の現状を知ろう

【教育の機会に関するデータ2016】

引用元:ユネスコ

教育の機会に関する現状を2016年のデータで見てると、(※2)

  • 初等教育の年齢(6歳から11歳)の9%、約6,300万人が学校に通っていない
  • 上記のうち女の子は54%と半数以上
  • 中学校に行く年齢(12歳から14歳)の16%、約6,100万人が中学校の教育を受けたことがない
  • 高校に行く年齢(15歳から17歳)の36%、1億3,900万人が高校の教育を受けたことがない
  • 学校に行くことができても基本的な読み書き、簡単な計算能力を習得できていない子どもが全体の38%

学校へ通えない、通えたとしても学習が身についていないという実態が見られます。

もう少し踏み込んで世界の教育の現状を見ていきましょう。

世界の教育の現状

世界には教育があまり進んでいない国や地域が多くあります。

SDGsが発足される以前のMDGsにより貧困撲滅運動が成果を上げ、開発途上国全体の15歳から24歳の識字率は2000年の83%から2015年には91%になりました。(※3)

識字とは?

「日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解し て読み書きができること」であり、文字の読み書きと計算 ができる能力を指すことが多い。国、あるいはまとまった地 域の中で、15歳以上のうち、日常生活の簡単な内容につ いて、読み書きができる人口の割合を識字率という。

JICA

しかし一方で西アジアやアフリカでは学校に通えない子どもたちが増えています。

何が原因となっているのか詳しく見ていきましょう。

紛争と内戦により教育の機会を奪われる子どもたち

小学校の年齢で学校に行けない子どもは世界で約5,900万人います。そのおよそ半分が、紛争地域に住んでいます。特に多いのが西アジアとアフリカ地域です。

西アジアやアフリカでは武力紛争が長引いています。日本では紛争という言葉に馴染みのない方が多いでしょう。しかしアフリカでは今も多くの紛争が勃発しており、被害は拡大しています。

例えばリビアでは2011年から内戦が続いており、同年アラブの春という新政府が発足されましたが東西に分裂。その後も東西を統一する政府が設立されますが推進派と反発派に分かれ反対運動による内戦が勃発しています。

マリではイスラム過激派による武力勢力が活発で、2013年には紛争に巻き込まれた人は約47万人です。親と離れ離れになった子どもは1,572人、地雷や不発弾の犠牲者も出ています。

フランスが2021年に軍事介入をした直後、爆発による死亡事故が起きています。(※4)

アフリカの紛争や内戦が長引く原因は主に下記3つです。

  • 民族や宗教
  • 資源争い
  • 代理戦争

紛争や内戦から避難し難民となった子どもたちは貧困や飢餓にみまわれます。生きる最低限の食糧すら得られない状況になると感染症にかかったり最悪の場合、命を落としたりします。

子どもたちは大人たちの争いによって難民となり、教育の機会のみならず生きる権利すら奪われているのです。

(※5)

ジェンダー格差が生み出す教育の不平等

教育があまり進んでいない国や地域では性別による役割意識が根強く残っています。

「女の子だから学校に通えない」

日本では性別が理由で教育を受ける権利がないということはまず考えられません。

しかし世界には約1億3,200万人が「女の子だから」という理由で学校に通えていないのです。(※6)

ここまで取り上げたのが世界の教育の現状です。

紛争や内戦、ジェンダー格差によって質の高い教育を受けられる権利が奪われており、識字率の低下だけでなく幼いころから命の危険と隣り合わせでいるのです。

では、こうした問題に直面していない日本では教育に関してそこまで深刻ではないように見えますが、実際のところ日本なりの問題を抱えています。

ここからお話する内容は、「すでに経験している!」「我が家がちょうど直面している」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

【日本の教育の現状】家庭環境による教育格差

平成25年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」によると、家庭環境が教育格差を生み出していると報告されています。

家庭環境の多様化から、日本の教育施策でも「家庭教育」および「家庭教育支援」 が重要視されている。子どもの教育においては、保護者の収入や学歴などのような構造的 な要因だけではなく、保護者がどのように、どの程度、子どもと関わるかといったプロセスも強い影響力を及ぼすことが明らかにされている。

平成25年度「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究

塾や習い事、家庭内にある辞書や本、子どもが家庭内でどれほど学びのきっかけに触れられるかで教育レベルに差が生じているということがわかります。

美術館や博物館に行くなど文化的活動の重要性にも触れられています。

教育に積極的な家庭であるほど学びの機会を得られることがわかります。

ここまでくると、学力アップには学びの機会を増やせば解決するだろうとなりますが、事はそこまで簡単にはいかないのが現状です。

家庭の経済状況によって学ぶ機会に恵まれない子どもたちがいます。

一般的に子どもが大学卒業までに負担する教育費は公立で約1,000万円、私立だと約2,300万円と言われています。

子どもが2人いて私立大学に通う場合は、所得の半分が教育費にまわる計算です。

これは所得によって学習環境にも大きな差が生まれることを意味しています。

実際に家庭の経済格差が子どもの学力格差を生み出していると全国学力テストの結果で明らかになっています。

【世帯収入と子どもの学力(対象/小学校6年生)】

グラフを見ると、世帯収入によって正答率が最大20%開いていることがわかります。

学校外で子どもにかけられる教育費用の少ない家庭であるほど、学力低下傾向にあると示しています。

では、こうした教育の不平等によってどんな問題が起こり得るのでしょうか。

教育の不平等が与える影響

教育の不平等は子どもたちの将来に影響をおよぼします。

文字が読めないとどうなる?

文字を読めないことで、

・薬品などの成分表が読めずに毒とも知らずに飲んでしまう。

→命を落としてしまう可能性が高くなる

・読み書きを必要とする仕事に就くことができない

→貧困から抜け出せない

などの影響が懸念されます。

学校という場所でしか学べないものがある

教育と聞くと、社会性を身につける場所とイメージされる場合が多いのですが、社会性すべてを学校に押し付けることではありません。大切なのはその先にあります。

学校という枠の中で社会を経験し、その上で人と関わることへの喜び、貢献することの喜びの感情を得られる場所でなくてはなりません。

実際、子どもの感情ややりたいことは常に変化しています。

組織論では2:6:2の法則が存在します。

みな異なる価値観を持っていることが自然な状態であり、黒か白、マルがバツで物事を決めうるのではなく、他者の価値観と自分の価値観は必ずしも一致はしないことを学ぶのが社会性を育むきっかけとなります。

子どもたちの中では、学校という組織が多様性を学ぶ場所であり、知ることへの感動を得られる場所なのです。

社会が不安定となる

教育は社会の土台を作ると言われています。

実際に、ユニセフ支援を受けて教育を受けられるようになったソマリアのフィルサンさん(当時14歳)は奨学金制度により小学校6年生から学ぶ機会を得られました。(※7)

その結果、将来医師になって人々を救いたいという目標ができ、意欲的に勉学に励んでいるとのことです。

フィルサンさんのように学ぶきっかけを持つことで人生の目標ができ、社会に貢献する喜びを得ることは、将来的に経済の改善へ向かうことになるのです。

逆を言えば教育の機会が得られないとで、社会や経済発展の妨げになるとともに、なにより子どもたちの可能性を潰してしまうのです。

仕事や収入が不安定

教育を受けずに貧困で育った子どもたちがやがて大人になり、教育を受けていないことを理由に安定した仕事に就くことができません。そのような状況で子どもが産まれても、学校に通うお金がなく同じ道をたどるという悪循環が生まれます。

居場所のない子どもたち

日本では教育の不平等により、子どもたちの居場所がなくなることも指摘されています。

全国で不登校の人数は令和元年度で

  • 小学校 53,350人
  • 中学校 127,922人
  • 高校 50,100人

です。

学校へ行けなくなる理由は、

  • 人間関係
  • 先生との関係
  • 給食が合わない

などさまざまです。

NHK未来スイッチ(※8)によると、ある男性は給食がきっかけで学校へ行けなくなり自宅にこもるようになってしまったといいます。

きっかけは味覚過敏という体質。

どうしても食べられないものがあっても、完食が規則の学校から責められるようになり居場所を失ってしまいました。

行きたくても行けない、居場所がない、家にいても罪悪感を感じる。

こうした子どもたちのSOSを決して逃してはなりません。

安心して過ごす場所がない子どもたちは心身ともに疲れてしまいます。

ここまで教育を受けられないことによる影響を見ると、あらゆる形態で終止符を打つ必要性があります。

では解決に向けてどのような取り組みがなされているのか次の章でご紹介します。

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の解決に向けた取り組みを紹介

すべての人が質の高い教育を受けられるようにするための取り組みを6つピックアップしました。

すべての子どもたちに平和教育を「UNESCO MGIEP」

他者と言い争いしたり、親と喧嘩したり、友だちと意見が違ったり、考え方や価値観、育った環境によって周囲と衝突することは誰しも経験したことがあるでしょう。

そうした際は話し合ったり、物理的に距離を置くことで問題から離れることはできます。しかし世界には戦争や暴力、銃社会の蔓延によって、他者とぶつかることで命の危険を感じたり、おびえたりする人々が多くいます。

平和を知らずに育った子どもたちが大人になって戦争を繰り返す、そんな世界はあってはなりません。

ユネスコは2012年、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という言葉を掲げてインド政府と協力して、マハトマ・ガンジー平和と持続可能な開発のための教育研究所を創りました。その名も「UNESCO MGIEP」。(※9)

UNESCO MGIEPは、

  • 若者プログラム
  • 教育カリキュラム改善プログラム
  • 若者のための平和ガイドブック

などを発信し平和実現のための教育理論を展開しています。

学校は遠い存在ではなかった。アフリカ「みんなの学校プロジェクト」

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「学校に通わせても学ぶことがない」

「学校の先生がしっかりとした授業を行なってくれない」

「学校へ行っても給食がない」

アフリカではこうした理由で学校に通わせない保護者が少なくありません。学校へのメリットを感じられない理由を分析すると、

  • 教育者の質の低さ
  • 教育者の技術不足
  • 設備の整っていない環境

などが挙げられます。

逆を言えば、上記の問題を解決すれば学校へ通うメリットが実感できるわけです。

みんなの学校プロジェクトはこうした背景を知った上で、2004年にアフリカ・ニジェールの小学校23校で始まった学校教員、保護者、地域住民が一体となって自発的に学校運営の質を改善する仕組みです。

プロジェクト内容は、

  • 学習環境の改善
  • 衛生設備改善
  • 栄養改善

子どもの学力改善として、具体的に下記のことが行われました。

  • 計算の自習ドリルを作り、家庭と地域で連携して補修を行う
  • 読み書きが不十分な場合、サポート体制の強化

これらの結果、テスト正答率がニジェールで約5割、セネガルで約4割改善されました。

学校運営に携わる「みんな」は自分たちの手で学習環境をよくしようと主体的に行動し、読み書き、計算の学びの方法を年に数回議論する集会を設け、改善していきました。

【住民集会の様子・ニジェール】

引用元:国際協力機構「みんなの学校プロジェクト

みんなの学校プロジェクトは2021年にはすでにアフリカ8カ国5万3,000校まで増え、地域住民の学校に対する考え方が変化し、栄養改善や衛生管理の改善も進められるようになりました。

女の子だから向いていないという固定観念を取っ払え!女性の職業選択を多様化「Roominate(ルーミネイト)」

2012年に誕生したルーミネイトは、女の子の職業選択を多様化するために幼少期から理系脳を育むきっかけを作る玩具が販売されています。

「ぬいぐるみじゃなくて本当は機械組み立てキットがほしい」

「女の子なんだから恐竜やミニカーよりもお人形が好きでしょ」

女の子だから、男の子だから、固定観念から与えられるおもちゃは、子どもたちが生まれて最初に受けるジェンダー差別と言えます。

おもちゃ売り場を見ても、男の子用と女の子用にエリアが分けられています。

【女性研究者数及び研究者に占める女性の割合の推移】

幼少期からの遊び方はおとなになってから影響するとルーミネイトでは考えます。

日本の場合女性研究者の割合はわずか13.8%で、主要先進国の中でもっとも低い数値です。

ルーミネイトでは、女性の職業に科学的思考を必要とする役割が少ないのは、幼少期に与えられるおもちゃが関係しているのではないかと考え、女の子がものを組み立てたりケーブルで電気回路を作ったりと男女関係なく遊びの中で機械工学を学べる玩具を用意しました。

学ぶ機会が奪われるのは、学校に通う通えないという問題だけでなくステレオタイプにもとづいたジェンダー差別からも生じます。

そうした事実に早くから大人が気が付き、子どもたちが何を望んでいるのか、何に興味があるのかを見つめることが質の高い教育への第一歩なのです。

貧困・飢餓・教育不平等を給食で改善!栄養のエキスパートが世界の子どもを救う「ベトナム味の素」

美味しい給食が食べられるから学校にいきたい。

子どもたちが学校を好きになるには何かきっかけが必要です。

ベトナム味の素では、栄養バランスの良い学校給食を普及するため、

  • 栄養バランスのとれた給食メニューブックの作成
  • 学校向けに食育の教科書を配布
  • メニュー作成のソフトを開発

を行なっています。現在はベトナムの小学校2,000校以上に導入しています。

子どもたちが学校で栄養バランスの良い美味しい給食を食べられるように、国が学校に栄養面を指導していく必要があります。

学校給食の質を上げることで教育の質向上し、さらには貧困や飢餓などほかの目標の解決にもつながります。

日本発の母子手帳が世界の子どもたちを救っていた

日本で生まれた人は馴染みのある母子手帳、この手帳からは母親と子どもの健康に関する知識や記録がつまっています。病院に受診する際も医師に母子手帳を見せることで状況をわかりやすく説明できる便利なものです。

母子手帳は第二次世界大戦後にはじめて日本で導入され、その後世界40カ国以上に広まりました。

当時の日本は終戦後ということで貧しく妊婦や乳児の死亡率が高い状況でした。母子の健康を守るために発行されたのが母子手帳なのです。

識字率の低い国や地域でも母子手帳は大活躍。

文字を少なくイラストや図を増やし、感染症を防ぐ方法や薬の種類を示しています。

識字率の低い国の問題点として、説明書が読めず誤って飲んではいけない薬を飲んでしまったという事故があります。

病院や医師を増やす以外にも、世界にはこうした方法で命を守る方法が考えられています。

すべての子どもたちに安心して学ぶ場を「オルタナティブスクール」

2021年4月、岐阜市に不登校の中学生が通える公立学校「草潤(そうじゅん)中学校」が開校されました。

公立の不登校特例校は草潤中学校が中部地方で初、開校を進めたのは岐阜市の前教育長・早川三根夫さんです。

文部科学省(※10)によると、2019年度の中学生の不登校人数は12万7,922人、高学年になるほど人数は増えているといいます。不登校になる主な要因は、

  • 無気力
  • 不安
  • いじめ
  • いじめを除く友人関係

人間関係のストレスから不登校につながるというケースが3分の1を占めています。

本当は勉強したい、自分のペースで学びたい、けれど学校に行けない、という葛藤が子どもたちを苦しめ、学ぶ意力を阻ませます。

草潤中学校が大切にしていることは、すべての生徒が標準に合わせるのではなく、学校が生徒に合わせるというコンセプト、学校らしくない学校を目指しています。

定期テストを受けるかどうかは生徒自らが選択でき、望めば高校受験も受けられる、決まった服装や給食もありません。

集団行動が苦手な生徒が学びやすいように定員は全校で40名と少人数制、オンライン学習も充実しています。

義務教育は学校に通わなければならない、ではありません。

学ぶ権利があるからどんな形でも学ぶことができるという考えが、すべての子どもたちに安心感を与え人生を豊かにさせます。

わたしたちにできること

最後に、目標4の達成に向けてわたしたちにできることを考えてみましょう。

現状を知る

  • 質の高い教育を受けられない
  • 学校がない
  • 学校に行かせてもらえない
  • 行きたくても行けない、

こうした現状を知ることから始めてみましょう。

教育の不平等の先に起こり得る問題点を調べ、教育の重要性を知りましょう。

募金

ユネスコ、NPO、NGOなど世界で教育支援を行なっている団体の活動に興味を持ってみましょう。

支援につながる商品を購入

売り上げの一部を海外の学校建設資金にする企業が増えています。

学校建設だけでなく、本や机、椅子をプレゼントする資金にもなっています。

私たちが現状や課題を知ることで、直接的でも間接的でも何かしらのアクションを起こせるきっかけとなります。

ぜひ、この機会にさらに詳しく世界や日本の教育について調べてみてはいかがでしょうか。

まとめ

世界の教育の課題として、

  • 7億5,000万人の子どもが基本的な読み書きができない
  • 5,900万人が初等教育の年齢で学校に行けない

などが挙げられます。開発途上国の識字率は63%と低く、文字が読めないと職に就くことが困難になったり、収入が低かったりと貧困の原因にもなります。

すべての子どもたちが質の高い教育を受けることは、ひとりの子どもの人生、周りの家族や友人、経済を大きく変える糸口なのです。

また学校教育において大切なのは、何をやったかではなく、どんな力が育ったかを主眼に置くことが重要です。

教える立場にある運営者や先生は子どもたちが教育を受ける目的を明確にし、子どもたちが何を吸収し生きる力に変えていけるかを常に見つめていく必要があります。

単純に学校に通えればいいのではなく、学校は子どもたちの能力を引き出し開花させる場でなくてはなりません。

すべての子どもたちに適正な教育を受けてもらうには、貧困地域のインフラ対策、飢餓ゼロ、保護者の学校に対するイメージ向上、子どもたち自身が学校へ通う楽しさを得るきっかけづくりが重要です。

だれひとりとして取り残さないというSDGs全体のゴールにおいて目標4でわたしたちにできることは、

  • 現状を知ること
  • 教育支援を行なっている団体(ユネスコ、NPO、NGO)の活動に興味を持ち寄付すること
  • 教育支援を行なっている企業を知り、
  • 保護者の立場にある場合、目の前の子どもをよく見て相談しやすい環境を整えること
  • 子どもの主体性を大切にすること

です。

教育を学ぶということは子どもの自信や主体性を伸ばすことにつながります。

実際にユニセフ支援によって建設されたエリトリアの小学校に通った女の子は、基本的な読み書き、算数、言語、科学を学び、将来の目標が定まったと夢を口にしています。

「学校の先生になりたい」

「お医者さんになりたい」

「学校で学んだことを家族に教えてあげたい」

適切な教育を得られたことで自ら考え判断するという主体性を持ち、他者の健康を守ることもできるようになりました。

小学校ができたことによってエリトリアの小さな村は生まれ変わったのです。

みな、人生を楽しむために生まれてきます。

人生を楽しむためには質の高い教育を受けて、自分の生き方を選ぶ裁量権を持つことが大切です。

わたしたちが年齢関係なく何かを学び続けるのも、人生を豊かにするためです。

だからこそ、目標4は達成すべきなのです。

参考文献
※1 日本ユニセフ協会
※2 ユネスコ 「Fact Sheet NO.48」
※3 日本ユニセフ協会
※4 AFP BB NEWS
※5 ユネスコ
※6 PLAN INTERNATIONAL
※7 日本ユニセフ協会
※8 NHK 未来スイッチ
※9 ユネスコ
※10 文部科学省「平成 30 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)